新型コロナウイルス感染症は、まだ収束していないものの、海外には感染拡大前のような生活が戻ってきている国もあります。その状況から、今後の投資では「消費関連株」が注目される可能性があります。そこで、本記事では、消費関連株の魅力やメリット、注意すべき点を紹介します。
目次
1. 消費関連株とは ―― 消費トレンドの変化が投資機会に
消費関連株とは、主に小売業や流通業をはじめとした、一般消費者に向けた商品・サービスを展開する企業の株式のこと。具体的なものとしては、家電や食品関連の銘柄などが挙げられます。
消費関連株は個人消費の影響を受けやすく、ブームや流行に左右されやすい銘柄も存在します。そのため、消費トレンドの変化を先読みし、これから消費が拡大・成長するような銘柄に投資をすることにより、利益を得られる可能性があります。ただし、消費トレンドの先読みは簡単ではなく、世界中から様々な情報を収集、分析することが重要です。
2. 消費関連株の魅力やメリット
消費関連株の魅力やメリットとしては、主に以下の2つが挙げられます。
2.1. 経済が回復に向かうと、消費関連株は上昇する可能性が高い
現代において、消費は世界経済を支える根幹であり、経済の原動力となっています。世界のGDPの約6割を消費が占めている現状から考えると、消費なくして現在の世界経済は成り立ちません。したがって、一時的に景気が落ち込んでも、経済が回復に向かうとともに消費関連株も上昇する可能性が高いといえます。
2.2. 景気が落ち込んでいる状態でも利益を狙え、リスク分散も可能
ひと口に消費関連株といっても、そのジャンルは様々です。家電や食品関連株のほか、アパレルやスーパー、コンビニ、百貨店などが投資対象に含まれます。サブスクリプションや5G通信関連などの最先端サービスにも注目です。
また、消費のトレンドには長期的な消費の構造変化(長期トレンド)と、短期的な消費需要の変化(短期トレンド)があり、それぞれの方向性を見極めながら、その両面から注目し、投資を行うことが重要です。
様々なトレンドに対応できるため、景気が落ち込んでいるような状態でも、投資の機会を見出すことが可能となるでしょう。幅広いジャンルに投資をすれば、リスクを分散させる効果も期待できます。
3. 長期的な消費トレンドの変化を知ろう ―― 所有から利用へ、アナログからデジタルへ
では、近年の消費トレンドにはどのような傾向が見られるのでしょうか。ここからは近年の消費傾向として、特に押さえておきたい2つのポイントを紹介します。
3.1.モノは、所有する時代から、利用する時代へ移り変わっている
モノは、所有する時代から、利用する時代に移り変わっています。
例えば、日本は自動車大国と言われていますが、東京23区内に住むファミリー層(30代~40代)の半数以上は自家用車を持っていません。その代わりに、カーシェアリングの会員数は2010年から伸び続けており、2021年には200万人を突破しています。
ほかにも、自転車や駐車場をはじめとしたシェアビジネス、動画配信サービスやレンタルファッションなどのサブスクリプションは、世界中でユーザーが増えています。モノを所有しなくても多様なサービスを利用できる環境が整ってきたため、今後も所有から利用への移り変わりは進んでいくでしょう。
3.2.アナログからデジタルへ
様々な商品やサービスがアナログからデジタルへ移り変わっている点も、現代の傾向として押さえておきたい変化です。
スマートフォンやEコマースなどが発展した影響で、最近では生鮮食品や飲料などをオンラインで購入する人が増えてきました。ほかにも、Web会議ツールや電子契約、資料を保管するクラウドサービスなど、デジタル化の波はビジネスシーンにも広がっています。
特に近年はAIや5G通信など、デジタル化を後押しする技術が発展し続けているため、今後もデジタル関連の商品やサービスは充実していくと考えられます。
4.短期的な消費のトレンドで注目されるリベンジ消費
2019年末から蔓延した新型コロナウイルス感染症によって、特に娯楽や観光、レジャーなどに関する消費行動は世界的に減少しました。しかし、ワクチンの接種が順調に進めば、コロナ収束とともに経済正常化への期待が高まるため、短期的な消費トレンドとして、いわゆるリベンジ消費が増えるだろうといわれています。
ステイホームや自粛からの解放により、今後、世界的に個人の消費行動が一気に爆発する可能性が考えられます。娯楽や観光に限らず、様々な消費関連株が注目されるかもしれません。
4.1.世界の旅行需要はコロナ以前の水準に戻る
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、2020年は世界の旅行分野の収入が約4.5兆ドル(約585兆円)でしたが、2022年は8.6兆ドル(約1118兆円)まで増加すると予想されています。2019年の9.2兆ドル(約1196兆円)には届かないものの、コロナ以前の状況に戻りつつある状況です。
今後、世界の旅行制限や外出制限が緩和されれば、旅行需要が増えるでしょう。その動きが、ホテルやレストランなどの雇用を創出し、新たな消費の喚起につながるでしょう。
*:ドル円換算は1ドル/130円で算出
5.世界経済の動向から見える4つの注意点
上記のようにリベンジ消費は消費関連株の後押しになる可能性があり、新型コロナウイルス感染症収束後の動向はこまめに確認しながら、投資を行うのがよいでしょう。ただし、今後の投資のリスクとして、世界経済の動向から見えてくる注意点を4つ紹介します。
5.1.世界的なインフレ
2022年の経済で注視すべきポイントの1つは、米国を中心に進んでいる世界的なインフレです。
新型コロナウイルス感染症の再拡大による、サプライチェーンの混乱や原油供給を巡る不確実性、ロシア・ウクライナ戦争などを背景に、燃料や食料品の価格が高騰しています。特に、インフレが急速に進んでいる国においては、個人消費が圧迫されることが予想されるでしょう。
例えば、2022年4月にインフレ率が8.5%と過去1年間で2倍以上上昇した米国においては、外食や宿泊などのサービスに対する支出が増加する一方で、自動車や部品などの物品への支出の減少が報告されています。
現時点においてインフレの収束の兆しが見えず、広範囲に物価圧力が広がっていることから、IMF(国際通貨基金)は世界経済成長が2021年の推計6.1%から減速し、2022~2023年は3.6%で推移すると見込んでいます。
5.2. 新興国と途上国でGDP成長率が低迷
世界経済のGDP成長率は回復傾向にあります。特に先進国の成長率は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以前の水準に戻っています。しかし、新興国および途上国は依然として感染症拡大前の水準を下回っています。ここで新たなパンデミックが発生すれば、サプライチェーン問題の長期化、インフレ圧力などが世界の広い範囲に悪影響を及ぼし、世界全体の景気回復が失速する恐れがあります。
5.3. 米国の利上げによる影響
もう1つの注目ポイントは、米国の利上げです。
通常、政策金利が下がると景気が上向き、上がると景気は抑制されます。前述の通り、米国では物価が急上昇しており、インフレ加速を鎮静する目的で利上げペースを加速させるのではないかとの見方が強まっています。
世界最大の経済大国である米国の政策金利は、世界の経済・金融市場にも影響を与えます。すでに市場には利上げや景気低迷を警戒する動きが見られます。
米国が利上げペースを加速させた場合、2つのシナリオが想定されます。
1:利上げが景気を冷やし、消費や設備投資などが一時的に冷え込み関連銘柄が下落する
2:狙い通りにインフレが抑制され、景気に影響することなく株高となる
新興経済への影響も懸念されます。利上げは各国経済のバロメーターであり、景気の強い回復局面で実施されます。米国が利上げペースを加速させるとドルの価値が上がり、金融商品などの金利も上昇するため、ドル建て資産の需要が高まります。
その結果、特に経済基盤の弱い新興国からは資金が流出し、ドルに対するその国の通貨の価値が下がることがあります。
国際金融市場においては、ドル高他国通貨安の対応策として、自国の景気動向に関係なく利上げを迫られる動きがみられることがあります。この場合、通貨安への耐性が低い新興国の経済に、圧力がかかるといったシナリオが想定されるでしょう。新興国の消費関連銘柄を組み入れたファンドなどに投資している場合は注意が必要です。
5.4. 中国のゼロコロナ政策
中国の「ゼロコロナ政策」による都市封鎖の影響も、世界経済や消費動向に大きな影響を与える不安材料になっています。
世界中の多くの企業が工場を構える中国。都市封鎖は、それら工場の生産や流通を滞らせることになり、サプライチェーンを通じて、海外の経済に大きなマイナス影響を与えます。
6. 投資先を絞れない人は投資信託の活用も
長期的な視点で構造変化が起きている消費トレンドに加え、リベンジ消費も見込める今、消費関連株が注目されるかもしれません。
ただし、世界経済をみると、様々な不確実性も横たわっており、具体的な銘柄を絞れない人も少なくないでしょう。そのような人は、ファンドマネージャーといった運用のプロが投資先を判断する「投資信託」を活用するのも良いでしょう。
様々な投資信託があるので、目論見書や販売員からの説明を確認しながら、自分の投資に対する考えにあったものを選ぶのがよいでしょう。