投資信託で利益を最大化するためには、単利と複利の違いを知ることが大切です。複利効果と長期運用の組み合わせで、より大きな利益を獲得できる可能性があります。
分配金の受け取り方をどうすればよいか悩んでいる場合も、複利効果を理解できれば自分なりに分配金の扱いを選択できるようになるでしょう。運用益の再投資で効率よく利益を獲得する考え方を解説します。
目次
単利と複利の違い
単利
元本に対してのみ利息を算出する方法です。運用で得た利息や配当を元本に組み込まず、金利の対象が最初の元本に固定されます。
例えば、30万円の投資を年利1%の利回りで続けた場合、受け取る利息は毎年一定して3,000円です。元本と利回りに変化がなければ、毎年3,000円ずつ増えていくことになります。
将来的な利益の計算は簡単に行えますが、利益を雪だるま式に増やすことはできません。国債や社債などの金融商品では、再投資がないため、金利が単利で表示されます。
複利
運用益や分配益を元本に組み入れて利息を算出するのが「複利」です。年利1%で30万円を投資するケースでは、最初の利息3,000円を30万円に上乗せするため、翌年の元本は30万3,000円になります。
翌年の利息は3,030円となり、前年に比べ利息が30円増加しています。毎年利息の上乗せを続けていき、受け取る利息を指数関数的に増やせるのが複利の仕組みです。
投資信託は、全ての運用益を元本に積み立てられる金融商品です。運用期間が長いほど、より大きな複利効果を期待できます。
単利と複利のシミュレーション
投資元本100万円・年利3%で、単利と複利のそれぞれで5年間運用した場合の投資成果は、以下のようになります。
累計利息 | 利益差 | ||
---|---|---|---|
複利 | 単利 | ||
1年後 | 30,000円 | 30,000円 | 0円 |
2年後 | 60,900円 | 60,000円 | 900円 |
3年後 | 92,727円 | 90,000円 | 2,727円 |
4年後 | 125,509円 | 120,000円 | 5,509円 |
5年後 | 159,274円 | 150,000円 | 9,274円 |
毎年一定の利息を受け取る単利に対し、複利は毎年受け取る利息額が増えているため、累計利息の差も年々広がっていきます。ちなみに、20年後の累計利息の差は20万6,111円です。
数値はあくまでもシミュレーションで実際とは異なります。また、手数料、税金等は考慮していません。
「72の法則」と「100の法則」
資産を複利で運用し、元本が2倍になる年数を計算する方式が「72の法則」です。「72÷金利(%)」の計算式で導き出せます。
例えば、年利3%で運用する場合、元本が2倍になるのは24年後です。72の法則を使えば、特定期間で元本を2倍にするための年利も計算できます。投資信託の金額や期間を決める際に活用できる計算式です。
単利で元本が2倍になる年数は、「100の法則」で算出できます。計算式は「100÷金利(%)」です。なお、複利で3倍になる年数は、「115の法則」で導き出せます。こちらの計算式は「115÷金利(%)」になります。
「分配金受取型」と「分配金再投資型」の違い
投資信託での分配金の取り扱い方法には「受取型」と「再投資型」の2つのコースがあり、ファンドを購入する際は、どちらにするか選択することになります。
ファンドによっては、「受取型」か「再投資型」のどちらかを選べるものや、いずれかしか選べないものもあります。また、保有中にコース変更が可能なものもあります。
では、それぞれのコースについて、詳しく見ていきましょう。
「受取型」とは、決算ごとに分配金を現金として受け取るコースのことです(あらかじめ届け出た指定口座に入金されます。)。年に1回、半年に1回、あるいは毎月など、分配金が支払われるタイミングは、ファンドによって異なりますが、どのファンドも年に1回以上の決算が義務付けられており、少なくとも、1年に1回は定期的に分配金を受け取れる可能性があります。
「受取型」の場合、定期的に現金を受け取ることができ、自由に使えるメリットがありますが、分配金の分、運用資産が減少するため、「再投資型」よりも運用効率が下がる可能性があります。
一方、「再投資型」とは決算の都度、分配金を現金で受け取らず、同じ投資信託を自動的に追加購入して、再投資するコースのことです。再投資することで、より複利効果が生じるため、長期運用で資産を増やしたい方には適しているといえるでしょう。
なお、「受取型」でも「再投資型」でも、普通分配金(投資信託の元本運用で生じた利益から支払われる分配金のこと)であれば同様に税金がかかります。
分配金について考える上で、「分配金は必ずしも利益ではない」ことにも留意が必要です。
分配金は、金融機関の預貯金の利子とは異なり、ファンドの純資産総額を切り崩して支払われるものです。そのため、分配金が支払われると、その分、基準価額が下がります。
また、分配金額は投資環境による影響を受けやすく、増額もあれば、減額もあり、支払いがない場合もあります。購入価額によっては、分配金は利益ではなく、実質、「自らが投資した元本の一部払い戻し(元本払戻金)」に相当する場合があることも、知っておきたい点です。元本払戻金は非課税ですが、個別元本はその分減少することになります。
運用による利益からどの程度を分配金に充てるかは、投資信託によって異なります。
投資資金を増やすポイント
「再投資型」を選択して、より複利効果を高めるためには、長期運用を意識することが重要です。数年レベルでは実感がわきにくいため、10年単位での運用を視野に入れる必要があります。価格変動リスクを抑えられることも、長期運用のメリットです。
一括投資と毎月の積み立てを組み合わせるのもポイントです。毎月無理のない範囲で一定額を積み立てつつ、ボーナス時などにまとまったお金を投入すれば、複利効果をより実感しやすくなります。
長期投資と複利効果で利益を最大化しよう
投資信託でより大きい利益を狙いたいなら、複利効果と長期投資を意識した運用を心掛けることが重要です。分配金の扱い方もしっかりと理解し、コツコツと利益を高めていきましょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。