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目次
驚き、恐怖、失望に満ちた年初に株価が上昇した理由
〔要旨〕
米国株式は好調なスタート:米国の民主主義を揺るがす動揺にもかかわらず、2021年初の株式市場は上昇
先々の見通しは明るい?:株式市場は、新型コロナウイルスのワクチン、財政刺激策、そして力強い景気回復を見据えている
リフレ・トレード(景気回復や物価上昇を織り込む動き):市場は、逆風後の力強い景気回復を予想しており、リフレ・トレードが継続する見込み
ジョージア州上院議員選挙について
民主党が議会の主導権を握ったものの、新政権が法制化する内容は米国の「中道」となる見込み
米国連邦議会への乱入と米雇用統計の悪化について
これらの下落要因にもかかわらず、株式市場は底堅く推移
まとめ
追加の景気刺激策はシクリカル株と中小型株にプラス。循環的な景気回復の下、金利上昇の継続を見込む
激動の1週間にも関わらず、米国株式市場は続伸
米国の年初は、驚き、恐怖、そして失望に満ちた一週間でした。この間、投資家の皆さまからは、「なぜ、株式市場が上昇したのか?」という質問をたくさん受けました。本稿では、質問への私の見解をお伝えします。
年初の株式市場はポジティブなレンズを通して環境を観察していた
まず理解しておくべきことは、米連邦準備理事会(FRB)による強力な金融緩和政策により、11月の大統領選挙以前から、株式市場は上昇基調にあったことです。そして、10-12月に新型コロナウイルスに有効な複数のワクチンが開発されたことで、2021年の景気回復への確信はさらに高まっていました。そのため、2021年第1週の株式市場は、ポジティブなバイアスのレンズを通して、さまざまなイベントや経済指標を観察していたと思います。
予期せぬ出来事
ジョージア州上院議員選挙で民主党が予想外の勝利
そのような中で、年初の初めの驚きは、1月5日のジョージア州上院議員選挙でした。民主党の勝利は多くの人にとって予想外の結果でした。私たちも昨年11月時点では、そのような予測はしておらず、投資家はねじれ政府に何を期待するか、についての分析に焦点を当てていました。現在は、議会の主導権を握った民主党政権下でどのような政策が可能になるのか、に注目しています。
危機時には確固たる代表の下で法制化を進める力が重要
投資家の皆さまからは、「株式市場は通常、ねじれ政府を好感するため、議会の主導権を握った民主党政権下で株式市場がどう推移するのか?」について、特に尋ねられました。確かに、市場はねじれ政府を好みますが、危機時にはねじれていない政府のほうが良いでしょうし、市場もそう認識していると思います。現在の米国は健康と経済の重大な危機に直面しているため、確固たる代表の下で法制化を進める力が重要になります。ただし、両党の議席差はほとんどないため、法制化される内容は米国の「中道」となるであろうことは、記憶にとどめておくべきでしょう。
バイデン政権が「現在、実現が可能であること」「難しいこと」
私の同僚のUS Government Affairsの責任者であるAndy Blockerは、上院選挙の結果を受けて、バイデン政権において「現在、実現が可能であること」「難しいこと」の、以下のようなリストを作りました。
現在、実現が可能であること
1.就任後には、バイデン新大統領は政権の全閣僚を速やかに指名することができます。
2.新型ウイルスの救済策の第2弾は、より大規模で、州・地方政府への支援が含まれるでしょう。
3.大規模なインフラ投資の可能性が高まり、そこにはグリーン政策が含まれるでしょう。
4.インフラ投資のコストを賄うための増税は、法人税から始まり、それ以外に拡大すると考えられます。
難しいこと
1.上院での議事妨害(フィリバスター)は引き続き行われるでしょう。上院議員のジョー・マンチンは、既に、立法府の議事妨害の撤廃に反対すると表明しています。
2.フィリバスターが継続されれば、最高裁判事の数を増やす(バイデン氏を支持する判事を加える)、コロンビア特別区またはプエルトリコに新たに一州としての地位を与える(同地域は民主党の支持者が多い)といった、民主党に有利な政策の実現は難しいでしょう。
3.さまざまな法案に環境政策を追加する試みが検討されていますが、グリーンニューディール自体は難しいと考えます。
4.メディケア・フォー・オール法案の成立は難しいでしょう。バイデン氏は同法案を支持しておらず、たとえ彼が支持したとしても、上院の民主党員は賛成しないと考えられます。
恐怖
米国連邦議会への乱入事件が発生
次期大統領の認定手続きの最中に、米国連邦議会への凶悪で暴力的な襲撃が発生しました。しかし、米国の民主主義を揺るがすような事件にもかかわらず、株式市場は持ちこたえました。
市場は体制の維持、民主主義の勝利、持続的な追い風を重視した
私は、その理由は、株式市場が先々の明るい未来を見つめていたからだと思います。例えば、ワクチンの広範な供給による堅調な景気回復や、ジョージア州上院議員選挙結果からのより多くの刺激策への期待などです。この事件と市場の反応を受けて、同僚のブライアン・レヴィットは「体制の維持、民主主義の勝利、そして持続的な追い風を重視した市場の反応に安堵を感じている。」と述べていますが、私は彼の意見に強く同意します。
失望
12月の米雇用者数は8カ月ぶりに減少
そして金曜日には、12月の米国の雇用統計が公表され、2020年4月以降、8カ月ぶりに雇用者数が減少しました。これは、新型コロナウイルスの感染者数の増加の厳しさと、初期段階の景気回復は容易に腰折れしてしまうことを想起させました。しかし、私にとっては、この雇用統計は驚くものではありませんでした。米国では、しばらく財政刺激策が抑制されており、経済はダメージを受けていました。足元はK字型回復の停滞時期にありますが、2021年後半には状況は好転すると考えます。
雇用統計の悪化にもかかわらず、株価は底堅く推移
また、株式市場は雇用統計の結果に動揺せず、より多くの刺激策への可能性から、前向きに反応しました。金曜日の午後には、ジョー・マンチン上院議員が国民への追加の2,000米ドルの給付金に反対姿勢を示したと報じられ、株価が一時下落しましたが、彼の側近がコメントを差し戻したことで、株式市場は上昇に転じました。以前から申し上げていますが、ワクチンが広く供給され、経済が完全に復活するまでの環境においては、継続的な財政刺激策が必要です。そして、私はそれらを期待しています。
まとめ
2021年はリフレ・トレードが続くと見込む
年初の市場の動きより、2021年の市場へのインプリケーションは以下のように考えます。それは、市場関係者は、いくつかの逆風を受けた後の力強い景気回復を予想しており、リフレ・トレード(景気回復や物価上昇を織り込む動き)が継続するというものです。ジョージア州上院議員選挙の結果を考えると、追加の刺激策が景気回復を支える可能性が高く、シクリカル株や中小型株がその恩恵を受けると考えます。また、循環的な経済の回復は米10年国債利回りを穏やかに上昇させるものの、穏やかなインフレ環境が継続すると予想します。
過去、何度も見てきたように、金融緩和が支えとなっている環境下では、「恐怖」や「失望」に市場が反応しないことがあります。2021年初の株価上昇は、まさにそのような状況にあったと言えるでしょう。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2021-005