資産形成については、増やす事に関する記事は数多く書かれています。増やすことは一見難しく、特に投資を始める前の心理的なハードルから、需要が絶えませんね。一方で、資産の使い方や減らし方については言及されることが多くありません。
そもそも、お金は幸福の引換券です。使ってこそ、その真価を発揮しますね。そこで今回は、資産運用の後半戦である、取り崩しを踏まえたお金の使い方についてまとめました。
目次
なぜ取り崩しは難しく感じるのか
そもそも、資産を取り崩すことが難しいのはなぜでしょう。理由は複数考えられます。
・お金を使うことそのものへの負担
・お金が減るフェーズ未経験
・不確実性と将来への不安感
などです。
お金を使う、お金を減らすというのは、そもそも心理的に負荷がかかります。後悔をしたくないという気持ちもあり、お金を使うときは慎重になる方が多いと思います。
また、所有している資産には、実際の資産額以上の価値を感じやすい傾向があります。そのため、お金を使うことそのものに心理的抵抗が生じますね。
取り崩し期に入ると、資産の減少が長期的にだらだら続くというフェーズに入ります。お金を使う瞬間だけでなく、長期的な時間軸で見てもお金が減っていくわけですね。
資産形成期の時期は、長期的には資産が増えてきたはずです。瞬間的にはお金が減っても、長期では増えていたという安心感や達成感が心を支えてきました。
取り崩すフェーズに入ると、これまでの心理的な安心材料が失われます。そして、資産が減っていくという未経験のことに、戸惑いや不安を感じるわけですね。
かつ、取り崩しフェーズはいつ終わりが来るか分かりません。将来的にいくら使うべきかが不確かなので、漠然とした不安に包まれることになります。
このような要因があって、取り崩しを負担に感じる方が多いのでしょうね。
取り崩しルールは資産運用初期に目途をつけるべし
取り崩しに対する漠然とした負担を解消するためには、上記の点を解消してあげればよいですね。そもそも資産形成は、「不透明な未来に備えての金銭的な守り刀」として運用するものです。
そのため、資産形成のプランを練る段階で、どのぐらいあれば逃げ切れるかをつかんでおくのが良いですね。今はシミュレーションも多様に用意されています。このようなツールも使いつつ、万全に備えたいですね。
資産を増やすだけでなく、お金の出入りも視野にプランを立てるとなお良いでしょう。
・株式の配当などでフローを増やす
・家を購入し、将来的な住居費用負担を減らす
・場合によっては年金制度や保険を活用し、毎月受け取れるお金を増やす
といったことが考えられますね。
有効な取り崩しルール制定
資産が減ることの負担を軽減させるための手段としては、取り崩しのルールを設けると良いでしょう。主だった例を2つ紹介します。
4%ルール
代表的なものは4%ルールです。これは、過去の歴史をもとに、年金を受け取りながら退職後30年間資産運用をしたときに、破綻せずに済む見込みが高い引き出し率として導き出されました。つまり、資産の4%を毎年取り崩しながら生活できれば、長期的に破綻せずに生活できる数字というわけですね。
なお、4%はあくまでも目安です。実際には、年金の受取額、支出の多少、寿命、税金や市場環境など、多くの要因が絡み合います。適用する際は、もう少し余裕を見て設計するとよいでしょう。
配当金で強制利確
近年は高配当株や分配金の出るファンドが人気ですね。ただし、ファンドからの分配金の受け取りは、本来なら再投資に回せる資金を利確する行為です。運用効率だけ見ると、長期的な資産形成には足かせとなる可能性があります。また、収益から出てきた普通分配金なのか、元本を取り崩す元本払戻金にあたる特別分配金なのかも留意する必要があります。
一方で、すでに取り崩しを意識される方にとっては、配当金や分配金は比較的読みやすいキャッシュフローが定期的にできるので好まれますね。株や投資信託ではなくETFを使って分配金を得るというやり方もあります。FIRE後のようにインカムが限られる中では特に配当金・分配金は魅力に映ることでしょう。
いずれにせよ、配当金や分配金で生計を立てる場合には、減配や特別配当に配慮する必要があります。連続増配株など、配当が減らない銘柄などへの投資を心がけるとよいでしょう。
いっそ、一生減らさない運用も
取り崩しに対する不安を一切なくす方法として、「いつまでも増やし続けることを目指して投資を継続する」という手もあります。出口戦略と言いながら、そもそもの出口をなくすというトリッキーな発想です。
ですが、投資家の方は意外とこのような方も多いように見受けられます。
私も恐らく一生涯投資を続けるでしょう。お金は増やせば増やすほど、さらに増やしやすくなります。あえてそのスケールを萎ませる必要はないというわけですね。資産運用の効率を覚えると、あえてどこかで終えようとは思わなくなりました。
柔軟な出口設計
予想しない支出にも対応したいけど、後悔なくお金を使い切りたい気持ちもある
といった具合に、お金を使い過ぎてしまう不安だけでなく、使い切れなかったという場合を危惧する声もありますね。
大事なことは、無理に使い切ろうとしないことです。資産運用を続けながら少しずつ利用していくうちに、いずれ元本分を超えるタイミングがくるでしょう。
例えば投資元本が1億円できたとして、運用しながら、かつ一部は使いながらも2億3億と増やせたとします。取り崩した分を見ると元本分のお金を使っていたとしましょう。その場合には、元手の1億円を使ったことで、その分の満足感は得られているはずです。にもかかわらず、手元には使った以上のお金が残っているわけですね。
つまり、評価額にとらわれず、元本分を使えれば及第点という発想です。そうすることで、万が一の支出にも対応でき、全く使わないという後悔もしないで済むわけですね。
もう一つの発想の転換は、個人を超えた資産運用です。良くあるのは相続ですね。自分一代で使い切ろうとするのではなく、増やした資産を家族や親戚、事業規模であれば信頼できるパートナーなど、次の人に繋ぐわけです。
この点、不動産は、しっかり出口戦略を練っておいた方が良いアセットです。固定費がかかることや、流動性の低さなど、扱うのが難しい面があるからです。一方で、相続時には、相続税評価額で有利に次の世代へバトンを引き継ぐことができます。
税制なども踏まえつつ、上手に資産をつないでいけると良いですね。
まとめ
資産の取り崩しは計画があるかないかで不安の大きさが変わります。そのため、資産形成の段階から、自分に合った引き出しルールを決め、定期的な現金フローを確保し、元本基準や相続を含めた柔軟な出口案を用意する、この3本柱をつくることが大事ですね。
相続したい配偶者やお子さんの有無でも発想は大きく変わるでしょう。
できるだけ使い込まないようにするという発想だけではなく、何にお金を使ったら幸福度が上がるかという視点に切り替えて、満足のいくお金の使い方を模索していきたいところです。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※本稿は著者の見解に基づくものであり、Wealth Roadの運営会社の見解を示すものではありません。

著者:たぱぞう(資産管理会社経営/投資顧問会社アドバイザー)
2000年より投資を始める。2010年以降、米国株投資を中心に行う。2016年自らの投資観をブログにて書き始める。投資に特化したブログとしては出色のPVを誇る。2017年から2025年春まで、某投資顧問業にてアドバイザーを務める。この間、日経マネー、日経ヴェリタス、ダイヤモンドZAI、ITmediaなどのメディアに複数回取り上げられる。「誰でもできる投資術」「誰でもわかる海外投資」をモットーに執筆中。「米国株を語る会」を開き、投資について語り合う場づくりをしている。