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市場のボラティリティが大きい状況がしばらくは継続する公算
6月11日の米国市場では、S&P500株価指数が前日比で5.9%下落し、3月16日以来の大幅な下落率を記録しました。同指数は3月23日にボトムをつけて以降、6月8日までの2カ月半程度の間に44.5%も上昇しました。景気が本格的に回復せず、先行きについても強い不透明感が残る中で株価が大幅に上昇する姿に対し、市場参加者の間では警鐘を鳴らす声が強まっていました。「株価の上昇に乗り遅れるのでは」という投資家心理も株価上昇の背景と考えられます。こうした中で、6月10日、今後の米国の景気回復がかなり緩慢なものになるとの見通しをFRB(米連邦準備理事会)が示したことが金融市場に不安感をもたらし、株価調整につながったと考えられます。
6月11日の金融市場では、株価の下落とともに、投資家がリスクに対して慎重になる動きが広くみられました。米10年国債利回りは0.67%と、6月9日の0.83%、6月10日の0.73%からさらに下落しました。新興国市場でも通貨や株式が売られる動きが顕在化しました。これまでは米国株式市場の好調さが世界の投資家に安心感をもたらし、投資家はよりリスクの大きい資産に対する選好を強めてきましたが、今回の米国株調整によってその動きはいったんストップした形となります。為替市場でも円高ドル安が進行しており、これは日本株にとって短期的な下落材料になるとみられます。
今後については、景気の先行きに対する不透明感が強い中、金融市場のボラティリティが大きい状況がしばらくは継続する公算が大きいと考えられます。株価が短期間に大きく上昇した後だけに、調整が比較的大幅なものになる可能性もあると言えるでしょう。各国でロックダウンや外出自粛が実施された4~5月における経済指標が非常に悪いのは当然と言えますが、現在の市場の目線はその先にあります。これまでの金融市場では、ロックダウン解除後に景気や企業収益がしっかりしたペースで改善を続けるという見方が一般的であったとみられます。しかし、FRBが景気についての悲観的な見通しを公表したことで、金融市場は、景気回復がどの程度のペースで進むかという点について警戒感を強めており、今後の相場の行方もこの点に左右される展開になるとみられます。フロリダ州やカリフォルニア州などでのコロナウイルスの新規感染者数が足元で増加傾向にあるのは懸念材料であり、金融市場が感染の第2波に対して警戒感を強めてきた点は今回の調整の一因になったと考えられます。
一方、新たな政策パッケージで景気を支える動きが出てくれば、株価調整の歯止めになる可能性が高いと考えれます。FRBは現在、かつてない積極的な対応によって金融市場の安定化に努めており、金融市場でも、「パウエル・プット」への強い期待感(株価が下落してもパウエル議長を擁するFRBが金融緩和など株安の歯止めになる政策を実施してくれるとの期待感)が存在しています。財政政策面でも、国民に対して2回目の給付金を供与する対策が検討されるとみられ、米議会での今後の審議状況が注目されます。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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MC2020-086