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弱含みか正常化か?大局的な視点で見る世界経済

弱含みか正常化か?大局的な視点で見る世界経済

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • 消費者をめぐる懸念:米国消費者をめぐる懸念はあるものの、原油価格の低下と実質賃金の改善により、消費者心理は改善に向かうと予想
  • 弱含みか正常化か?:経営者や消費者は自国経済の「弱含み」を嘆くかもしれないが、これは中央銀行の引き締めの結果、経済が正常化しつつあるだけだと考えられる
  • 中国の刺激策:中国の政策当局が、経済に大きな好影響を与える可能性のある、大規模な金融・財政刺激策を発表

米国経済は、計画的に正常化されつつある

消費者心理は欧州と英国で乖離

主要な欧米先進国で金融緩和が進む

中国の景気刺激策に高まる期待

今後の見通し

注目の日程

マーケット・ウォッチャーは、しばしば近視眼的になりがちですが、1つや2つのデータのみに焦点を当てすぎると、木を見て森を見ずになってしまいます。だからこそ私は、一歩引いて、いくつかの重要なテーマから世界経済を見ることに意義があると考えています。中でも重要なテーマは、米国経済の正常化、欧州・英国間の消費者心理の乖離、欧米主要国における金融緩和、中国の景気刺激策です。

米国経済は、計画的に正常化されつつある

米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ抑制のため経済の熱を冷まそうとし、特に、タイトな労働市場の緩和を望んできました。今、それが実現しつつあります。しかし先週、コンファレンス・ボードが、米消費者信頼感指数が8月の105.6から9月は98.7に低下した(2021年8月以来最大の下落幅)と発表し、市場はその影響を目の当たりにすることとなりました1 。このデータを受け、株式市場はネガティブな反応を示しました。

コンファレンス・ボードのチーフ・エコノミストは、「消費者信頼感は9月に低下し、過去2年間推移してきた狭いレンジの底に近づいた。現在の景況感に対する消費者の評価はマイナスに転じ、労働市場の現状に対する見方は更に軟化した。消費者はまた、将来の労働市場環境に対してより悲観的になり、将来の景況感や収入についても以前より前向きではなくなった」と説明しました1

私にはこれは、大げさな反応のように思われます。その理由は、以下のとおりです:

  • コンファレンス・ボードの期待サブ指数は8月より低下したものの、依然として80を上回っています(通常、80を下回ると景気後退への示唆とされます)。
  • 本調査で、消費者は経済について懸念していると回答しましたが、それが消費を―より選択的に行われるようになってはいても―抑制しているようには思われません。
  • 本調査結果からわずか3日後に発表されたミシガン大学消費者調査では、これとは異なる消費者心理のストーリーが示されました。消費者心理の指標は9月に上昇し、過去5ヵ月間で最高水準となりました2 。期待サブ指数も上昇しました。労働市場への懸念がわずかに高まったものの、パーソナル・ファイナンスと経済全体に対する期待の改善がこれを相殺しました。

公平に見て、消費者心理には一定の弱含みが見られます―直近の決算説明会でいくつもの企業がこの点について語るのを耳にしました。特に、低所得者層は痛みを感じています。しかし、米国経済は依然として底堅く、原油価格の低下と実質賃金の改善に助けられ、今後様々な主要調査において、消費者心理の改善が見られるのではないかと私は期待しています。

消費者心理は欧州と英国で乖離

ユーロ圏の経済指標は、米国ほど前向きな内容とはなっていません―9月のユーロ圏サービス業購買担当者景気指数(PMI)の速報値は7ヵ月ぶりの低水準となり、ユーロ圏製造業PMIの速報値は9ヵ月ぶりの低水準となりました3 。しかし興味深いことに、政治的不確実性があるにもかかわらず、欧州の複数の国々において、消費者心理の改善が見られています。ユーロ圏と欧州連合(EU)の消費者信頼感の速報値は、ともに前月から0.5ポイント上昇し、ほぼ長期の平均値と同等となりました。9月調査では、消費者は家計の経済状況の見通しについてはるかに楽観的となったことが示されました4

英国の消費者は、ユーロ圏の消費者のような楽観的な見方を共有していません。実際GfK消費者信頼感調査では、それまで消費者信頼感の大幅な改善が示されていましたが、9月調査ではそれが大きく低下しました。労働党新政権が英国の財政状況に警告を発し、それにより今後発表される秋季予算案に不安が募ったことが、消費者心理を押し下げる一因となったと考えられます。しかし、9月の英国製造業・サービス業PMIの速報値が、ともに引き続き拡大領域に留まったことは、留意すべき重要なポイントです。

私が言いたいのは、現在起こっているのは、中央銀行の引き締めの結果としてもたらされた、欧米先進国の正常化だということです。またこの軟化は浅く、短いものとなり、金融緩和と実質賃金の上昇により、まず米国で、続いて他の先進国で景気が再加速する可能性が高いと考えられます。

主要な欧米先進国で金融緩和が進む

私は、これまで実施された金融緩和は、始まりに過ぎないと考えています。シカゴ連銀のオースタン・グールズビー総裁が先週述べたように、「ソフトランディングを望むのであれば、後手に回るわけにはいかない」のです。同じ講演で、同総裁は「向こう1年間で、更に多くの利下げが行われる」と予想しました5

中央銀行にとって、インフレ懸念はほとんど過去のものとなっていることに注意することが重要です。例えば先週発表された、FRBが選好するインフレ指標である米コア個人消費支出(PCE)価格指数にサプライズはなく、FRBの目標値の達成が視野に入りつつあります。また、ユーロ圏の消費者の1年先のインフレ期待は9月に2.7%となり、前月の2.8%から低下しました6 。また3年先のインフレ期待も2.3%と、前月の2.4%から低下しました6 。他の欧米先進国でも同様のシナリオが見られており、インフレ期待はよくアンカー(安定的に維持)されています。

従って現在、中央銀行は弱含みの兆しに対し、追加緩和の対応を行う余地があります。例えば先週、経済成長がカナダ銀行の見通しを下回っているとの懸念から、ここ3回の会合で連続で利下げを実施しているカナダ銀行に対し、更なる利下げを求める声が上がりました。言い換えれば現在中央銀行は、金融政策を正常化し、経済成長に集中することができるようになったということです。

日本も金融政策を―諸外国とは逆の方向で―正常化しつつあります。ただし金融市場を混乱させないため、ゆっくりと行うよう慎重を期しており、これは経済成長にもプラスに働くでしょう。

中国の景気刺激策に高まる期待

中国の政策当局は、経済に大きな好影響を与える可能性のある大幅な金融・財政刺激策を発表しました。中国人民銀行の利下げ幅は大きく、中国経済にプラスの影響を与えるはずです。更に重要なのは、非常に大規模な財政刺激策が、金融刺激策に付随するということです。財政刺激策の詳細は不明なものの、その規模だけでも心強いものとなっています。先週の中国株の上昇は力強く、これが投資家の期待していたものだったということを示唆しました7 。また私は、中国株は魅力的なバリュエーションにあると見ており、今後詳細が発表されるにつれて、前向きな影響が継続しても当然の成り行きだと考えています。

今後の見通し

今週発表される主な経済指標は、英国の国内総生産(GDP)、米国の雇用動態調査(JOLTS)、各種のPMI調査、そして金曜日に発表される雇用統計です。そしてもちろん、米国の新規失業保険申請件数は、市場の関心がインフレから労働市場の健全性に移った今、はるかに重要な意味合いを持つこととなります。

注目の日程

公表日 指標等 内容
9月30日 英国国内総生産 地域の経済活動を測定
9月30日 英国住宅価格指数 住宅市場の健全性を示す
9月30日 ドイツCPI インフレの動向を示す
9月30日 オーストラリア小売売上高 小売セクターの健全性を示す
10月1日 ユーロ圏CPI インフレの動向を示す
10月1日 米国ISM製造業PMI 製造業の経済の健全性を示す
10月1日 米国雇用動態調査(JOLTS) 米国内の求人に関するデータを
収集
10月1日 日銀短観 日本企業の経済・業況に関する
見方を追跡
10月2日 米国ADP雇用統計 米国労働市場の健全性を示す
10月3日 ユーロ圏PMI 製造業とサービス業の経済の
健全性を示す
10月3日 米国新規失業保険申請件数 労働市場の健全性を示す
10月3日 欧州中央銀行金融政策決定会合
議事要旨
中央銀行の意思決定プロセス
について更なる洞察を与える
10月3日 米国ISMサービス業PMI サービス業の経済の健全性を示す
10月4日 米国雇用統計 労働市場の健全性を示す
  • 1.出所:コンファレンス・ボード、2024年9月24日
  • 2.出所:ミシガン大学消費者調査、2024年9月27日
  • 3.出所:S&Pグローバル/HCOB、2024年9月25日
  • 4.出所:欧州委員会、2024年9月27日
  • 5.出所:ロイター、“Fed’s Goolsbee sees ‘many more’ rate cuts ahead”、2024年9月23日
  • 6.出所:欧州中央銀行、2024年9月24日
  • 7.出所:ブルームバーグL.P.、MSCI中国指数は2024年9月27日を最終日とする週に17.2%上昇。MSCI中国指数は、中国のH株、B株、レッドチップ、Pチップ、及び外国上場株(ADRなど)の大型株と中型株を対象とする。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。インデックスに直接投資することはできません。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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