優れた投資信託を選ぶ条件として「運用期間の長さ」が注目されることがあります。本記事では、投資信託の運用期間に焦点を当て、運用期間とパフォーマンスの関係や運用期間の長さを投資判断にどう活かせばよいかを説明します。
日本における投資信託のルーツは1940年頃に遡りますが、現在と同様のスタイルで投資信託が販売されるようになったのは法整備された1950年代以降です。投資信託の運用期間は「信託期間」と呼ばれ、あらかじめ信託期間が定められているファンドと、信託期間は定めず「無期限」とされているファンドに分けられます。
2024年3月末時点で運用されている投資信託は約5900本あり、最も古いのは1961年に設定されたファンドで、実に60年以上運用されている計算になります。
ただし、信託期間が無期限となっていても、運用成績が悪化して解約が増加し、運用総額が一定水準を下回ると「繰上償還」という措置が取られ運用中止となることもある点には注意が必要です。
代表的な指数(ベンチマーク)と連動したパフォーマンスを目指すインデックス・ファンドは、ベンチマークとほぼ同様のパフォーマンスとなることが一般的です。運用の良し悪しは、「トラッキングエラー」と呼ばれるベンチマークとの乖離の大きさで評価されるため、運用期間の長短に関わらず評価が定まりやすいと言えます。
一方で、指数を上回るパフォーマンスを目指すアクティブ・ファンドは、ある程度の運用期間がないと、その実力を見極められません。なぜなら、相場全体が上昇しているような市場環境が良好な時期には、運用者の優劣や銘柄選定の巧拙に関係なく実力以上のパフォーマンスとなっている場合があるので、短期間の結果だけで真の運用力を見極めるのは簡単ではありません。アクティブ・ファンドの場合は、市場のよい時期も悪い時期も含んだ一定期間の運用実績を確認すると、より実態が見えやすくなるでしょう。
「運用期間が長ければ長いほど運用力が高い」「運用期間の長さが投資信託の優劣を直接的に決める」という単純な話ではないので、ファンドを選ぶにあたり運用期間だけで判断することは避けなければなりません。
もちろん、長期間にわたり運用が続けられているファンドは、一定水準のパフォーマンスを継続的に残しているということであり、結果的に繰上償還などにより運用中止となっていないと考えられます。その意味では運用期間の長さと運用の実績は表裏一体の関係にあるという側面もありそうです。
運用実績が20年のファンドが5年のファンドよりも優れているとは限りませんが、長期間運用されているファンドは、アジア通貨危機、ITバブル崩壊、サブプライムショック、リーマンショック、コロナショックなど数多くのショックを経験し、乗り越えてきています。運用期間が長いファンドは、そうした急速な環境変化に順応できる耐性のようなものを兼ね備えているファンドだと言えるでしょう。
ファンドを選ぶポイントとして「過去の運用実績に問題がないファンドを選ぶ」という考え方があります。新規設定のファンドに投資してはいけないということではありませんが、過去の運用実績に関する情報が少ないと、投資判断が難しくなる可能性があるということです。
過去のパフォーマンスの推移だけではなく、相場全体が急落したような難局を迎えた際に、運用会社や運用担当者がどう判断して、どのように対処したのか、ということを運用会社が公表している過去の「ファンドレポート(運用報告書)」等で確認するとよいかもしれません。そういった情報は、ファンドの実力を評価する有益な情報となるだけではなく、今後同様の局面が訪れた場合の展開を予想する材料となり得ます。
情報が豊富にあるという理由から、運用期間が長い投資信託の方が投資対象として検討しやすいということを意識しておきましょう。
ファンドを選ぶ際の着眼点として、パフォーマンスだけに目が向きがちですが、併せてファンドの運用期間を確認することも有効です。運用期間が長いほど高いパフォーマンスと短絡的に考えてはいけませんが、運用期間が長いということは環境変化に柔軟に順応し、一定のパフォーマンスを残し続けているということであり、投資家の「信任」を得ているファンドだと考えることができるでしょう。
※本記事は投資信託に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資信託の購入を推奨するものではありません。