アクティブファンドは指数以上の運用成果を目指す投資信託ですが、長期保有は有利と言えるのでしょうか。本記事では金融庁のレポートを参考にしながら、アクティブファンドを長期保有するメリット・デメリットをまとめました。
目次
アクティブファンドは市場平均以上のリターンを期待できる一方で、インデックスファンドと比べると保有コストが大きい傾向のある金融商品です。中でも大型株式に投資をするファンドについては、長期保有を続けるほど勝率が下がるデータもあるので、常にファンドの運用状況やベンチマークとの差などは確認するようにしましょう。
金融庁が2023年4月に公表したレポート(※)によると、大型株式に投資するアクティブファンドの超過リターン勝率は、保有期間が長引くほど下がる傾向にあります。超過リターン勝率とは、株式指数などのベンチマークを上回った割合を表したものです。
<超過リターン勝率>
地域 | 保有期間3年 | 保有期間5年 | 保有期間10年 |
---|---|---|---|
日本 | 48.5% | 35.8% | 33.3% |
米国 | 26.6% | 15.1% | 13.4% |
欧州 | 27.5% | 20.8% | 21.3% |
(※)参考:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート 2023」
日本のファンドは米欧に比べると勝率が高く、保有期間10年では33.3%の超過リターン勝率を記録しています。その一方で、保有期間が長くなるほど勝率は下がる傾向が見られます。
アクティブファンドの長期保有にはメリットもあるため、長期保有が不利になるとは一概に言えません。ファンドの選び方によっては、保有期間が長引くほど大きなリターンを期待できる可能性もあります。実際にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
アクティブファンドでは、株価指数などのベンチマークを上回る運用成果が目指されています。専門的な調査や企業訪問を通して、運用担当者が相場状況に合わせた銘柄の入れ替えなどを行うため、ファンドによっては市場平均以上のリターンを期待できます。
また、ファンドごとに目的が設定されており、多種多様な投資方針から選べる点もアクティブファンドのメリットです。
ベンチマークと連動するように設計されたパッシブファンドに比べると、アクティブファンドは保有コスト(信託報酬)が少し高い傾向にあります。
信託報酬の内訳 | パッシブ運用の平均 | アクティブ運用の平均 |
---|---|---|
運用会社報酬 | 0.22% | 0.60% |
代行手数料 | 0.24% | 0.68% |
受託報酬 | 0.04% | 0.05% |
合計 | 0.50% | 1.33% |
(参考:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート 2023 ―「信頼」と「透明性」の向上に向けて ―」)
上記の通り、アクティブファンドの平均信託報酬率は2倍以上高いため、保有期間が長くなるほど保有コストが気になるかもしれません。保有コストが相対的に高いのは、インデックファンドに比べて銘柄分析などの手間暇がかけられているためなので、それだけの恩恵を得られるファンドなのか分析する必要があるでしょう。
上記のメリット・デメリットを踏まえると、アクティブファンドはどのように選べば良いのでしょうか。以下では、長期保有を想定したときの選び方を紹介します。
長期保有を想定すると、しばらくの間はこまめな情報収集が必要です。興味・関心がないと情報収集を続けられなくなる可能性があるため、基本的にはご自身の投資方針や目的に合ったものを選びましょう。アクティブファンドは投資する分野を絞りやすいので、注目しているセクターや投資したいテーマなどから考えると、ご自身に合ったファンドを見つけやすくなる可能性があります。
アクティブファンドではある程度の基準価額の上昇が期待できても、保有コストによって赤字になる可能性があります。そのため、事前に大まかな保有期間を設定し、基準価額の上昇とコストを分析・計算することが重要です。コストに対するリターンが少ない場合は、購入をいったん見送ることも考えましょう。
ファンドのパフォーマンスを決めるのは最終的に保有している銘柄1つ1つの値動きになります。運用者がどこに着目し、その企業が本当に伸びそうだと理解できるような銘柄に投資しているかどうか確認することも重要です。運用者の説明などに納得がいかない、あるいはもっと違う会社やテーマに投資してほしいと思う場合は、投資するファンドを変えても良いかもしれません。
アクティブファンドは市場平均以上のリターンを期待できる一方で、保有コスト(信託報酬など)が相対的に高い金融商品です。また、大型株式アクティブファンドのデータを見ると、保有期間が長引くほど勝率は下がる傾向にあります。そのため、常にファンドの運用状況やベンチマークとの差などは確認するようにしましょう。常に勝ち続けるのは難しいかもしれませんが、良い成績を出しているファンドであれば投資に値するかもしれません。
※本記事は投資信託に関わる基礎知識を解説することを目的としており、特定ファンドの売買や投資を推奨するものではありません。
※過去の実績は将来の運用成果等を保証するものではありません。