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歴史から読み解く、株式市場の下落からの反発

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

目次

当社のグローバル・マーケット・ストラテジストが、投資家からの弱気相場に関する9つの質問に回答します

〔要旨〕

✔質問1:弱気相場はどのくらいの頻度で発生するのか?
✔質問2:過去の弱気相場での下落率はどの程度か?
✔質問3:現在の株価の下落は、過去と比べてどの程度か?
✔質問4:弱気相場からの株価の回復には、どのくらい時間がかかるか?
✔質問5:弱気相場の渦中で市場から離れるとどうなるのか?
✔質問6:弱気相場の中間点で株式市場に投資するとどうなるのか?
✔質問7:経済データの好転まで、投資を控えるとどうなるのか?
✔質問8:最近の株価の反発は、過去の弱気市場と比べてどの程度か?
✔質問9:損失を回避するために、弱気相場中に売り買いを繰り返す投資戦略は?

歴史とは、実例が教える哲学

ギリシャの歴史家かつ軍人のトゥキュディデスは、「歴史とは、実例が教える哲学である」という有名な言葉を残しています。足元の不安定な市場環境下において、歴史は私たちにさまざまなことを教え、また素晴らしい道しるべを与えてくれると考えています。

3月11日に株式市場が弱気相場に入り、私たちは弱気相場における長期投資家への情報発信を続けています。すべての弱気相場が同じような行程をたどるわけではありませんが、過去の弱気相場から学べる共通点がいくつかあります。ここに、皆さまからよく受ける質問に対して、20世紀から現在までの弱気相場の歴史を踏まえた、私たちの回答を述べたいと思います。

質問1:弱気相場はどのくらいの頻度で発生するのか?

過去90年で株価が20%以上下落し、景気後退を伴った弱気相場は12回発生

過去、弱気相場は比較的頻繁に発生しています。1926年以降の90年超の期間で、S&P500種指数のトータルリターンは年率換算で10.2%となっていますが、弱気相場の発生状況は、①市場が20%以上下落した弱気相場が24回(3.5年ごとに1回の頻度)、②うち、景気後退を伴った比較的長期の弱気相場が12回(平均して7.5年ごとに1回の頻度)―となっています。

過去100年間に起こった5つの大きな弱気相場(1930年代の世界恐慌、1987年のブラックマンデー、1991年の湾岸戦争、2000年のITバブルの崩壊、2008年の世界的な金融危機)と足元の株価の下落を調べると、現在は最高値から最安値の下落率(最高値は2020年2月19日、最安値は2020年3月23日として計算)が34%と、1987年や1991年のケースよりも大きくなっています。ただし、世界恐慌、ITバブルおよび世界金融危機では、その下落率がさらに大きくなっていました。

質問2:過去の弱気相場での下落率はどの程度か?

弱気相場で、株価は平均して36%下落

1926年以降の弱気相場で、株価は平均して36%下落しました。そして、景気後退が深刻なほど、株価の下落率も大きくなっています。例えば、2008年の金融危機におけるS&P500種指数のピークからボトムまでの下落率は約52%であったのに対し、1980年代初頭に起きた米国の2度の景気後退期では27%の下落率となっています。

質問3:現在の株価の下落は、過去と比べてどの程度か?

現在の株価の下落は30%以上で、過去の弱気相場で6番目の大きさ

S&P500種指数は、直近の高値である3,386(2020年2月19日)から、2020年3月23日の底値まで約34%下落しました。これは、1926年以降の主たる12の弱気相場のうち、6番目に大きい下落となっています。これは最悪ではないものの、私たちが経験した多くの弱気相場よりも株価の下落は大きいということです。

質問4:弱気相場からの株価の回復には、どのくらい時間がかかるか?

株価の回復期間は平均して4.4年

弱気相場からの株価の回復期間は、平均して4.4年、取引日ベースでは1,100日かかっています(回復期間は、株式市場が底入れして以前の高値に到達するまでの期間としています)。これは長いようにも見えますが、過去、株価は長期に上昇してきたことを忘れてはなりません(1901年以降の株式市場は、1年のうちで75%の日が上昇しています)。弱気相場は投資家に痛みを与えますが、下落が永遠に続くわけではありません。株式市場は、時折下落するものの、投資家が資産を増やす最良の場所の1つであり続けました。

質問5:弱気相場の渦中で株式市場から離れるとどうなるのか?

下落の途中で売却し1年市場から離れた投資家の元本回復は、長期保有の投資家よりも2年長くかかっている

弱気相場の渦中で株式を売却した投資家は、売却せず保有を継続した投資家よりも、自らの投資元本を回復するのに時間がかかっています。例えば、世界金融危機時では、株価は2007年10月9日にピークに達し、2009年3月9日に底打ちしました。ここでピーク時に投資を開始し、株式ファンドの解約がもっとも大きかった2008年10月に株式を全売却し市場から離れ、1年後に再び市場に参加したとします。このような投資家の元本の回復期間は、途中で売却をせずバイ&ホールドを続けた投資家よりも、追加で2年かかりました。世界金融危機以外の市場の下落局面でも、下落の中間点で市場から離れた投資家の元本の回復には、同じく追加で約2年がかかっています。

質問6:弱気相場の中間点で株式市場に投資するとどうなるのか?

弱気相場の中間点で株式を買い増す行動は、良い結果に通じる

過去、市場の下落を好機ととらえた投資家の行動の結果は、勇気づけられるものになっています。先に述べた5つの弱気相場では、投資家は下落の中間地点で投資をしてから市場が実際に底を打つまで、平均して38%の損失となりました。これは、大きな損失に見えますが、その投資家は5年後と10年後に、平均してそれぞれ26%と110%の累積リターンを得ています。株式の購入を市場の底で行えなかったとしても、投資家が弱気相場の中間点で株式を買い増す行動は、長期的に見て良い結果を残しているということです。

質問7:経済データの好転まで、投資を控えるとどうなるのか?

株価の下落局面での売却と経済データが好転してからの市場への復帰は、はるかに悪い結果をもたらす

景気後退の期間は通常、株式市場の底打ちの後も続きます。例えば、2008年の金融危機では、サブプライムローンのデフォルトは2010年3月にピークに達するまで続きました。ここで、2007年の株式市場の高値の10月9日に10万米ドルを投資し、下落相場の中間点である2008年10月10日に保有株式を全て売却したと仮定しましょう。その後、株式市場からは離れ、サブプライムローンのデフォルトが落ち着いた後に、減少した投資資金を市場に再び投資した場合、当初の10万ドルの投資資金に回復したのは2013年4月2日で、1,379日(取引日ベース)かかりました。一方で、長期保有のバイ&ホールドの投資家が10万ドルの投資資金を回復した期間は、これより約250日少ない1,125日となっています。これは、株価の下落局面での売却と経済データが好転してからの市場への復帰は、その期間に長期保有していた投資家よりも、はるかに悪い結果をもたらすことを示しています。

質問8:最近の株価の反発は、過去の弱気市場と比べてどの程度か?

過去の弱気相場と比較してかなり強い反発

本稿執筆時点(2020年4月8日)では、株式市場は2020年3月23日の直近の最安値から上昇に転じています。過去2週間の市場のパフォーマンスは、過去の弱気相場と比較してもかなり強い反発となっています(それ以外では世界金融危機下の2008年11月の約20%の反発がありました)。過去、弱気相場で15%以上株価が反発した場合、その後3カ月のパフォーマンスはマイナスとなっているものの、1年後には一貫してプラスとなっていました。なお、過去の弱気相場は、平均して約14カ月続いています。

質問9:損失を回避するために、弱気相場中に売り買いを繰り返す投資戦略は?

市場に参加し続けていないことがリスク

市場の動きを見定めて投資のタイミングを計ろうとする行動は正しくない、と私たちは考えています。素早く、そして思いがけないタイミングで訪れる最良の投資機会に、市場に参加していないことこそがリスクです。1930年から2019年までの各10年間において、S&P500種指数が最も良いリターンを記録した10日間に投資家が市場に参加していなかった場合、その90年間のトータルリターンは年率換算で4.7%でした。一方、一貫して投資を続けた投資家のトータルリターンは同9.8%です。

この年率5.1%の差は、市場が不安定な期間に我慢をした投資家が、最良の投資機会を逃した投資家よりも倍以上の成果を上げていることを意味しています。すなわち、投資家が各10年間で最高の10日間に投資していなかった場合、10万米ドルの元本は63.9万米ドルまでしか増えませんでした。しかし、長期保有していた場合、元本は4,400万米ドルにも膨れあがるのです。

注意:上記の翻訳文の一部は、著者であるブライアン・レヴィットへの確認の上、原文の内容より修正されています。

ブライアン レヴィット
マーケット・ストラテジスト

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