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グローバル市場のもろもろ:製造業、決算シーズン、インフレその他

グローバル市場のもろもろ:製造業、決算シーズン、インフレその他

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • 製造業の悪化:PMIは、日本、ユーロ圏、英国の製造業で悪化した
  • 国債利回り:米10年物国債利回りは、幅広い要因により大きく変動し、ジェットコースターのような乱高下を続けた
  • 決算シーズン:これまでのところ、2023年7-9月期の業績予想を上回った企業は全体的に特に市場から恩恵を受けず、下回った企業は罰せられている

日本、ユーロ圏、英国で製造業の悪化が見られる

米10年物国債利回りはジェットコースターのような乱高下が続いている

市場は予想を上回る好業績については無視しているかのようだ

中国は財政支出目標の引き上げを計画

米国のインフレは安定、経済は堅調さを示し、インフレ期待は大幅に上昇

カナダと欧州の中央銀行は金利を据え置き

人生の大切な教訓

注目の日程

先週は、様々なデータが矢継ぎ早に発表されました。はっきりしたインプリケーションを示したデータもありましたが、より複雑なシグナルを示したものもありました。前者では、 日本、ユーロ圏、英国の購買担当者景気指数(PMI)が、製造業の弱含みを示唆しました。後者では、米10年物国債利回りが幅広い要因により大きく変動し、ジェットコースターのような乱高下を続けました。本レポートにおいては、決算シーズン、中国の財政政策、米国のインフレ、そしてもちろん中央銀行についても論じます。

日本、ユーロ圏、英国で製造業の悪化が見られる

先週は、様々な国でPMIが発表されました。私は、経済の現状を教えてくれるという意味でPMI調査には常に関心を持っています。

  • 日本。日本の10月のPMI速報値は、サービス業が製造業より強い、二分化された経済状況を示しました1。製造業PMIは47.6で、縮小領域に入りました。サービス業PMIは51.1と先月の53.8からは低下しましたが、確実に財政刺激策と緩和的な金融政策環境の助けにより、依然として拡大領域にあります。
  • ユーロ圏。ユーロ圏経済は大きなプレッシャーを受けており、総合PMIの速報値は35カ月ぶりの低水準となりました2。製造業PMIは43.1とより大きく低迷しました。サービス業PMIは47.8とそれよりはましですが、依然として縮小領域にあります。特に注目すべきは、ドイツの製造業PMIが41.4と極端に弱含んでいることです。PMI調査を実施しているハンブルグ商業銀行のチーフエコノミスト、デラルビア氏は次のように説明しました: 「ユーロ圏では、事態は悪い方向に向かっている。製造業は16カ月間、サービス業は3カ月間低迷を続けており、ともに直近のPMIのヘッドライン指数は更に低下した。加えてあらゆるサブ指数も、わずかな例外を除いて非常に一貫して低下している。」同氏は、今年後半にユーロ圏で「緩やかな景気後退」が起きても不思議はないと述べました。
  • 英国。製造業の悪化は英国でも見られ、製造業PMIは45.3、サービス業PMIは49.2となりました3。いずれも縮小領域にありますが、製造業の方がはるかに悪い状況となっており、英国の消費者にとってはますます厳しい環境となりつつあるようです。

米10年物国債利回りはジェットコースターのような乱高下が続いている

米10年物国債利回りは10月23日の早い時間に5.02%まで上昇しましたが、同日大幅に下落して終えました4。10月26日、利回りは再び上昇に転じましたが、イスラエルとハマスの衝突が激化し、「セーフヘイブン」資産としての国債需要が高まったことによると思われますが、4.83%で週を終えました。米10年債利回りは、様々な要因による影響や、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の不透明性から、今後も幅広いレンジで動き続ける可能性が高いと考えられます。

市場は予想を上回る好業績については無視しているかのようだ

2023年7-9月期の決算シーズンが本格化しています5。米国では、S&P500種構成企業の78%が一株当たり利益についての前向きなサプライズを、62%が売上高についての前向きなサプライズを発表しました(S&P500種構成企業の49%がこれまでに決算報告を終えています)。

欧州では、STOXX欧州600構成企業の57%が、日本ではTOPIX構成企業の58%が業績予想を上回りました。決算発表がまだ行われていない企業も多くありますが、これまでのところ分かった重要なことは、全体的に、業績予想を上回った企業は特に市場から恩恵を受けず、下回った企業は罰せられているということです。

中国は財政支出目標の引き上げを計画

中国の政策当局は、目標とする財政支出を賄うため、国債の大幅な追加発行を発表しました6。具体的な内容の多くは判明していませんが、既に中国は、政府の国内総生産(GDP)成長率目標の5%に達する軌道に乗っているように見えるものの、政府がこうした措置を取ることで、経済成長の加速に焦点をあてているとのシグナルを送っているとみることができます。これまでの的を絞った財政支出が消費者センチメントや消費支出にプラスの影響を与えたように、私は、今回の措置もまたプラスの、しかもより大幅な影響を与えると期待しています。

米国のインフレは安定、経済は堅調さを示し、インフレ期待は大幅に上昇

FRBが最も注目しているインフレ指標であるコア個人消費支出にサプライズはありませんでした。9月のコア個人消費支出は前月比0.3%増と予想と整合的で、前年同月比では3.7%増となりました7。これらの数値が、ディスインフレのプロセスが進行中であるとの論調と矛盾しなかったため、市場は安堵のため息をつくことができました。

しかし、先週はいくつか不穏な兆しもありました。2023年7-9月期のGDPは、米国の消費者の力により堅調な経済状況を示しましたが、これは学生ローンの返済免除措置が終了する前の個人消費を反映しています。例えば自動車ローンの滞納残高が増加しつつあるなど、消費余力の弱含みの兆しが見え始めており、これにより今後は需要がいくらか軟化するはずです。

10月のミシガン大学消費者インフレ期待調査によると、1年先のインフレ期待が大幅に上昇し、5年先のインフレ期待は小幅に上昇しました8。短期のインフレ期待は一般的に変動が大きく、しばしばエネルギー価格に左右されます。原油価格が大幅に上昇した2023年3月から4月も、似たような1年先のインフレ期待の急上昇が見られました。

FRBは、(1年先のような短期のインフレ期待ではなく)長期のインフレ期待が「十分にアンカーされている(安定的に維持されている)」のを確実にすることに重点を置いていますが、FRBがインフレ期待を注視していることを意識するのは重要です。FRBはより長期のデータに重点を置いており、インフレ期待の数値が上昇したと言っても、11月会合で利上げを行うことはないだろうと私は予想しています。

カナダと欧州の中央銀行は金利を据え置き

先週、カナダ銀行と欧州中央銀行(ECB)は政策金利の据え置きを決定しました。欧州では、それまで10回連続で利上げが実施されていました。ECBのラガルド総裁は、経済成長へのリスクについて、下振れに傾いているとの認識を示しました(ただし、利下げに関する議論は非常に尚早であるとも素早く指摘しました)。

ここ数年、カナダ銀行は金融政策の先陣を切ってきました。従って、10回の利上げ後に2会合連続で金利を据え置くという先週のカナダ銀行の決定が、ECBによる同様の決定に先行したのは、さもありなんと思われます。そしてそれはまた、今週のFRBによる同じような決定を予感させるものだと私は信じています。今週は、イングランド銀行と日本銀行の会合も予定されています。

アップデート:当レポートを掲載した直後、日本銀行(BOJ)は10月の金融政策決定会合においてYCC(イールドカーブ・コントロール政策)の再柔軟化を決定しました。具体的には10年国債金利について、これまでの、「±0.5%程度を目途として1%を厳格に上限とする政策」から、「1%を上限の目途とする政策」への変更が決定されました。日銀版コアコアCPI(生鮮食品とエネルギーを除くCPI)の2023年度の見通しが前回(7月)の3.2%から3.8%へと大幅に引き上げことや、最近の米国債10年物利回りの急上昇を考慮すると、この新しい政策に対して金融市場は意外感をもって受け止めたと考えられます。

日銀の植田総裁は、日本が持続可能な2%水準のインフレを達成できるかどうかを判断する上で、来年の「春闘」(企業と労働組合の間で毎年行われる団体賃金交渉)の重要性を強調しました。春闘で大幅な賃上げが実現すれば、目標とする10年物国債利回りの引き上げやマイナス金利政策の廃止といった形で、日銀の引き締めの動きを誘発する可能性があるとの見方が大勢です。日銀がインフレ見通しを上方修正したことで、2024年に日銀が引き締めを行う可能性が高まったのは確かだと我々は見ています。

日本が2%のインフレを持続的に達成する可能性が高まれば、日本国内がより強い成長を遂げる可能性が高まり、それが日本株に恩恵をもたらす可能性が高くなります。景気循環の観点からは、日本経済は現在のところ力強さを維持しており、日本の長期債利回りの上昇や円高が経済成長を損なう可能性は低いと思われます。

人生の大切な教訓

先週、経験豊富なストラテジスト、バイロン・ウィーン氏が亡くなられたことに触れないわけにはいきません。私は幸運にも過去30年の間に、何度か氏とご一緒させて頂く機会があり、彼の知恵、ユーモア、そしてメンタリングへの献身に心を打たれたものでした。私は特に、彼の記した「20の人生訓」の中で、次の名言に感銘を受けました: 「子供が大きくなっても、あるいは子供がいなくても、常に自分より若い人を見つけてメンタリングしなさい。人生の困難を乗り越える手助けをするのはとてもやりがいのあることだし、その過程で自分が学ぶことの多さに驚くでしょう。」

注目の日程

データの公表はまだまだ続きます。私が注目しているものは、以下の通りです。11月1日にX(Twitter)で、米連邦公開市場委員会(FOMC)による政策金利の決定と、パウエルFRB議長の記者会見における重要なポイントについて、私の見解をリアルタイムでお伝えしますので、ぜひご覧になってください。

(執筆協力:木下智夫)

公表日 指標等 内容
10月31日 ユーロ圏消費者物価指数 インフレの動向を示す
10月31日 ユーロ圏国内総生産 地域の経済活動を測定
10月31日 米国雇用コスト指数 従業員総報酬の四半期ごとの変化を測定
10月31日 カナダ国内総生産 地域の経済活動を測定
10月31日 米国S&Pコアロジック・
ケースシラー住宅価格指数
米国の住宅価格の指標
10月31日 日銀金融政策決定会合 金利の道筋に関する最新の決定を発表
11月1日 米国購買担当者景気指数(米供給管理協会(ISM)) 製造業とサービス業の経済の健全性を示す
11月1日 米国雇用動態調査(JOLTS) 求人、雇用、離職に関するデータを収集
11月1日 米連邦公開市場委員会 金利の道筋に関する最新の決定を発表
11月2日 イングランド銀行決定会合 金利の道筋に関する最新の決定を発表
11月3日 米国雇用統計 労働市場の健全性を示す
11月3日 カナダ雇用統計 労働市場の健全性を示す
11月3日 米国購買担当者景気指数(S&Pグローバル) 製造業とサービス業の経済の健全性を示す
決算シーズンは続く…
  • 1.日本のPMIデータ関連の出所:S&Pグローバル/AuJibun
  • 2.ユーロ圏及びドイツのPMIデータの引用出所:S&Pグローバル/HCOB
  • 3.出所:S&Pグローバル
  • 4.米国債利回りデータの出所:ブルームバーグL.P.、2023年10月26日
  • 5.決算シーズンの情報出所:Factset Earnings Insight、JP Morgan Earnings Season Tracker
  • 6.出所:ロイター
  • 7.出所:米国経済分析局
  • 8.出所:ミシガン大学消費者調査、2023年10月

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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