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11月FOMC=「ハト派的な」利上げ休止

11月FOMC=「ハト派的な」利上げ休止

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要旨

「ハト派的な」利上げの休止

10月31~11月1日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、事前の市場予想通り、9月会合に続いて、FFレートが5.25~5.50%で据え置かれました。パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は、会合後の記者会見において、労働参加率の上昇と移民による労働供給の増加が足元の消費につながったものの、今後はその動きは鈍化するとの見方を示しました。私は利上げしないというFRBの今回の決定は、ハト派的な利上げの休止であったと判断しています。

FOMC直後の金融市場では株高、債券安、ドル安の動き

金融市場でも、パウエル議長の発言がハト派的と受け止められたようです。FOMC直後の金融市場では株高、債券安、ドル安の動きが進行しました。

金融市場では高金利政策への懸念が短期的に続く見通し

もっとも、足元の金融市場では、2024年にFRBが高金利政策を長く継続することについての懸念が強く残っています。金融市場が落ち着きを取り戻すのは、米国景気の悪化とインフレの低下がより明確になるのを待つ必要がありそうです。

「ハト派的な」利上げの休止

10月31~11月1日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、事前の市場予想通り、9月会合に続いて、FFレートが5.25~5.50%で据え置かれました。私が注目したのは、パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が足元の米国景気の強さについて、9月会合後の記者会見では「脅威である」としたのに対して、今回の会合後の記者会見では、米国景気の強さのメカニズムについての分析を明らかにした点です。パウエル議長は、米国景気の強さをもたらしている足元での民間消費の強さについて、「労働参加率の上昇と移民の増加が予想外の労働供給の増加をもたらし、それによるマクロ所得の上昇が消費支出の増加につながっている」との見方を明らかにしました。当レポートの読者の皆さんはご記憶かもしれませんが、この見方は当レポートの10月5日号(「米国景気の強さの背景を考える(2)」)での分析と同じ結果です。結論についても私の分析と同じであり、労働参加率の上昇と移民の増加による労働供給増加の影響は出尽くしつつある、という見解でした。金融政策との関連でこの点を捉えると、労働供給が予想外に増加してきたことで、これまでは、FRBによる金融引き締め政策にもかかわらず高い成長率が達成できたものの、今後については、労働供給の増加が鈍化することで家計所得の増加がスローダウンし、金融引き締め政策がより強い効果を発揮する形で、需要(成長率)が鈍化していく、という姿になります。パウエル議長はこの金融政策への意味合いについては間接的に表現するにとどめましたが、これは、この点をあまり強調しすぎると今後も追加利上げの可能性があるというメッセージが薄れてしまうリスクを考慮してのことであったと思われます。以上の見方に基づくと、私は利上げしないというFRBの今回の決定は、ハト派的な利上げの休止であったと判断しています。なお、パウエル議長は移民を、労働供給の増加要因として挙げましたが、永住権の取得者の増加は限定的であることから、正確には、(労働ビザの受給によって勤労する)非移民の外国人労働者の増加と言うべきでしょう。ただ政治的な配慮から、移民という表現を選んだのかもしれません。

FOMC直後の金融市場では株高、債券安、ドル安の動き

金融市場でも、パウエル議長の発言がハト派的と受け止められたようです。今回の記者会見の冒頭のステートメントでは、「このところ、長期金利の上昇を主因として金融環境が大きく引き締まった」という、前回(9月会合)ではなかった表現が加えられました。長期金利の上昇が利上げに匹敵するほどの引き締め効果をもたしている、と発言するFRB高官が出てきていますが、長期金利についてのこの見方が示されたことも、今回のFOMCがハト派的との受け止めにつながったとみられます。また、今回の記者会見でパウエル氏が、「9月のFOMCで示された参加者のFFレート見通しは、あくまで9月時点でのものであること」にわざわざ言及したことに対しも、金融市場はややハト派的に受け止めたとみられます。

米国10年国債金利は前日の4.93%から4.73%に低下するとともに、米国株式市場では、S&P500種指数が前日比で1.05%上昇しました。長期金利の低下を受けて、ドルは主要通貨に対して減価し、11月1日にいったんは1ドル=151.7円の安値をつけた円相場は、本日午前9時現在で1ドル=150.57円に上昇しました。

金融市場では高金利政策への懸念が短期的に続く見通し

もっとも、FRBは12月の会合で再度利上げを実施する可能性を放棄したわけではありません。また、9月のFOMCで示された2024年末のFFレートについての参加者の想定が5.1%とかなりの高水準であったこともあり、足元の金融市場では、2024年にFRBが高金利政策を長く継続することについての懸念が強く残っています。今後のグローバル金融市場では、こうした懸念が強く意識され、強めの米国経済指標が公表される際には、長期金利の上昇や株価の下落につながりやすい相場環境が続くとみられます。金融市場が落ち着きを取り戻すのは、米国景気がはっきりと減速し、インフレ圧力が低下するとの確信が強まるまで待つ必要があると思われます

木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト

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