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中央銀行は引き続き金利が「より長期に、より高くなる」ことを示唆

中央銀行は引き続き金利が「より長期に、より高くなる」ことを示唆

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〔要旨〕

  • より長期に、より高くなる?:直近のFF金利の「ドットプロット」とFRBによる発言は、米国の金利がより長期に、より高くなると市場に確信させた
  • ストライキがセンチメントに影響:現在進行中の全米自動車労組のストライキと、医療従事者によるストライキの可能性は、賃金の上昇が粘着的なインフレを悪化させる懸念を高めている
  • 中国の底堅さ:中国は引き続き、特に不動産セクターで逆風に直面している。しかし私は、中国経済の底堅さには依然として感心している

ディスインフレに向かっている証拠が増えてきている

債券市場は「より長期に、より高くなる」とのシグナルに反応

政策の不確実性は継続

逆風に対して底堅さを示す中国経済

待ちのゲームは続く

注目の日程

ほとんどの先進国でディスインフレになってきていることを示す、説得力ある証拠が立て続けに出てきています。同時にほとんどの先進国の中央銀行は、金利が「より長期に、より高くなる」とのスタンスを維持しており、債券市場にもそれが反映されています。しかし、数カ月先の見通しを立てることさえままならないことから、私は、利下げという嬉しいサプライズがそう遠くないうちにあるかもしれない、との期待を捨てずにいます。

ディスインフレに向かっている証拠が増えてきている

先週のデータで、ディスインフレが強力なトレンドとなってきていることの証拠が更に増えました:

  • ユーロ圏の前年同月比インフレ率の速報値は予想を下回りました。9月のコアインフレ率は4.5%で、8月の5.3%から低下し、予想を大きく下回りました。ヘッドラインインフレ率はエネルギーコストの低下に牽引され、サービスも大幅に鈍化したことから、8月の5.2%から9月はほぼ2年ぶりの低水準となる4.3%へと低下し、同じく予想を下回りました1
  • 8月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、予想を下回る上昇率となりました。特にコアPCE価格指数の伸びは、大きく鈍化しました。過去3カ月のコアPCE価格指数の上昇率は、年率換算で2.2%となりました2
  • ミシガン大学が発表した9月の消費者インフレ期待の確報値は、8月より改善しました3。5年先のインフレ期待は2.8%と、過去2年以上でもっとも低い値となりました。1年先のインフレ期待は、ガソリン価格の上昇にもかかわらず3.2%に低下しました。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ停止が可能である根拠の一つとなります。(エネルギー価格の上昇が、短期的な消費者インフレ期待に影響を及ぼすであろうとの正当な懸念があることを付け加える必要がありますが、今のところそれは起きていません。)

債券市場は「より長期に、より高くなる」とのシグナルに反応

私は、一連のデータが一定のマクロ的な見方を強固にし、それが「既成事実」に近いと思わせる週があることを発見しました。先週のデータにより、懐疑的だった多くの者も、FRBは更なる利上げを行わないと確信しただろうと思います。しかし、最近のFF金利の「ドットプロット」は(最近の「Fedspeak(FRB関係者の発言)」と同様に)、米金利がより長期に、より高くなるだろうと市場に確信させました。

例えば先週金曜日、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、「私の現在の評価では、FF金利は目標レンジのピークか、それに近い水準にある。…需給バランスを完全に回復させ、インフレ率を望ましい水準に戻すためには、しばらくの間、金融政策の抑制的なスタンスを維持する必要があると予想している」と述べました4

FRBだけではありません。多くの先進国の中央銀行が、「より長期に、より高くなる」との同様のメッセージ(おそらく、皆メッセージの発信に際して同じコミュニケーションのコンサルタントを使っているのでしょうか?)を送っているようです。イングランド銀行のベイリー総裁は、「我々が確実に仕事を成し遂げるためには、十分な期間、十分高い金利を維持する必要がある」と説明しました5

これは債券市場の動きにも現れています。先週、米6カ月物T-Billのような、イールドカーブのショートエンド(短期金利側)の国債利回りは、FRBが再び利上げをする必要はないだろうとの想定のもと、比較的フラットでした。しかし金利がより長期に、より高くなるとの見方から、イールドカーブのロングエンド(長期金利側)の国債利回りは大きく上昇しました。米3年、5年、10年物の国債利回りは、先週、2007年以来の高水準まで上昇しました。米30年物の国債利回りは、2011年以来の高水準となりました6

ただ私は依然、懐疑的です。「抑制的」とはどういうことでしょうか?「より長期に」とはどの程度の期間でしょうか?これらはすべて曖昧な言葉でありながら、歴史的に見ても、わずか1年先について時として極めて不正確な予測を行った経済予測サマリー(SEPまたは「ドットプロット」)とともに、非常に重要視されています。上述したように、数カ月先の見通しを立てるのでさえ困難です。以前にも申し上げたように、中央銀行は、インフレを持続的にコントロールする上で、市場に対して厳しい話し方をし、前向きな熱を抑え込まねばなりません。しかし、それは言葉や点(ドット)にすぎず、石や棒きれ(のように実体を伴うもの)ではありません。結局先進国の中央銀行は、金利をそれほど長期にも高くもしなかった、という前向きなサプライズが待ち受けている可能性もあります。

政策の不確実性は継続

欧米諸国、特に米国では政策は引き続き不透明です。週末に、45日間の予算執行を可能にする「つなぎ予算」法案が可決されたおかげで、米政府機関の閉鎖は少なくとも一時的には回避されたものの、来年の金融政策の行方にはまだ大きな疑問符が残っています。

加えて先週から拡大した全米自動車労組のストライキや、カイザー・パーマネンテ(アメリカ合衆国の三大健康保険システムのひとつ)の医療従事者による差し迫ったストライキもあります。これは、賃金の上昇が粘着的なインフレを悪化させる懸念から、センチメントに悪影響を及ぼしています。しかし私は、こうしたストライキの影響は、実質的なものというよりも心理的なものだと考えています。

逆風に対して底堅さを示す中国経済

中国は、特に不動産セクターで逆風に直面し続けています。中国の不動産オーナー、恒大集団(エバーグランデ)の一部門が一部の債務不履行に陥りました。同社は200億ドルのドル建て債務を再編しようとしていますが、その努力は、先週のCEO逮捕によって複雑化しています。しかしこうした状況にもかかわらず、中国経済は比較的底堅さを維持しています:

  • 9月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2となり、5カ月ぶりに拡大領域に入りました7
  • 財新/S&Pグローバル製造業PMIは51から50.6へとわずかに低下しましたが、依然として拡大領域にあります8

世界銀行が2024年の成長率見通しを発表し、中国の2024年の成長率見通しを4.8%から4.4%に引き下げたことは注目に値します。しかし、私は中国経済の底堅さには依然として感心しており、今後数カ月の間にどのような景気刺激策が発表されるかもわからないまま、来年の予測を立てるのは難しいと考えています。

待ちのゲームは続く

そして私達は、更なる情報とデータを待っています。先進国におけるディスインフレのシナリオを裏付けるデータが増えるのを待っていますが、特に、来年の利下げ開始の時期や利下げ幅を決める要因となることから、米国の景気減速の兆候を更に見極めたいところです。世界経済の減速がどの程度の大きさとなるか、特にそれが新興国にどのような影響を与えるかについての兆候を待ち、中国経済を下支えする、より的を絞った政策の展開を待っています。また、日本銀行が金融政策の「正常化」を開始する時期についての決定も待っています。

しかし、短期的にボラティリティが高まる可能性はあるにせよ、待つこととただ傍観することとはイコールではないはずです。私は、世界的に株式、債券、オルタナティブに十分なエクスポージャーを持つことが重要だと考えています。繰り返しになってしまうかもしれませんが、私は、世界金融危機の際に投資家が犯した最大の過ちは、損失を確定して傍観したことだったと思います。市場のタイミングをはかるのは難しいため、賢明なアプローチは、ポートフォリオの一部を戦術的に配分する余地を残しつつ、幅広く分散されたコアな戦略的配分で保有することだと考えています。

注目の日程

来週は、ストライキや賃金要求に関するニュースから、米国の賃金の伸びに最も注目しています。また、カナダと米国の求人数がさらに減少するだろうと期待しています。英国、米国、カナダ、ユーロ圏のPMIは、欧米主要国の経済活動の状況を知る手がかりとなるでしょう。また、新興国(インド準備銀行)と先進国(オーストラリア準備銀行)の2つの主要中央銀行による決定も予定されています。

公表日 指標または金融政策決定会合 内容
10月2日 米国、英国、カナダ、ユーロ圏の製造業PMI 製造業経済の健全性を示す
10月3日 米雇用動態調査(JOLTS) 求人、雇用、離職に関するデータを収集
10月3日 オーストラリア準備銀行会合 政策金利の決定を発表
10月4日 米国、英国、ユーロ圏のサービス業PMI サービス業経済の健全性を示す
10月6日 米雇用統計、カナダ労働力調査 月次の労働市場データをモニター
10月6日 インド準備銀行会合 政策金利の決定を発表
  • 1.出所:ユーロスタット、2023年9月27日
  • 2.出所:米国経済分析局、2023年9月29日
  • 3.出所:ミシガン大学消費者調査、2023年9月
  • 4.出所:Fed’s Williams says central bank may be done with rate rises、ロイター、2023年9月29日
  • 5.出所:Global central banks unite in ‘higher for longer’ credo、ロイター、2023年9月22日
  • 6.出所:ブルームバーグ、2023年9月29日
  • 7.出所:中国国家統計局、2023年10月2日
  • 8.出所:財新/S&P グローバル、2023年10月2日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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