新NISAで360万円を一括購入できる? やり方やリスクについて

新NISAでは運用益が非課税になる条件として、年間360万円までの投資枠が設けられています。この範囲内であれば、投資で得たリターンは非課税になりますが、年間の360万円分を一括購入することはできるのでしょうか。

新NISAで一括購入できるのは240万円まで

結論から言うと、新NISAで一括購入ができるのは、原則として年間240万円までです。ただし、口座開設先でつみたて投資枠のボーナス払いを設定できる場合は、その金額分だけ上乗せできるため、360万円に近い金額を一括投資できる可能性があります。

以下の表は、新NISAにおける各投資枠の概要や特徴をまとめたものです。

投資枠の種類 成長投資枠 つみたて投資枠
対象商品 上場株式や投資信託など 投資信託やETF
非課税投資枠 年間240万円まで 年間120万円まで
購入方法 スポット購入、積立購入 積立購入のみ
一括購入 不可

つみたて投資枠では、「毎月〇円ずつ」といった積立購入のみが認められます。スポット購入(※)ができるのは成長投資枠のみなので、一括購入の上限は原則として年間240万円(成長投資枠)となります。
(※)投資家自身が金額やタイミングを自由に選ぶ購入方法のこと。

つみたて投資枠で一括投資に近い効果を得る方法

証券会社などのボーナス払いを活用すると、つみたて投資枠でも一括投資に近い効果を得られる可能性があります。

たとえば、ボーナス払いの上限がないケースについて考えます。毎月の積立金額を100円にすると、11ヵ月では1,100円の非課税投資枠を消費するため、ボーナス払いの月には119万8,900円分の金融商品を購入できます。成長投資枠と購入時期を合わせれば、最大で359万8,900円分の一括購入ができる計算です。

ただし、ボーナス払いの仕組みは口座開設先によって変わる可能性があるので、各社のサービス詳細は事前に確認してください。

新NISAで一括投資をする効果

新NISAで一括投資をすると、具体的にどのような効果を期待できるのでしょうか。以下では、一括投資をする3つの効果について解説します。

時期や銘柄によっては大きなリターンを期待できる

時期や銘柄によっては、積立投資より一括投資のほうが大きなリターンを期待できます。

以下の表は、ニッセイ基礎研究所が公表しているデータを参考に、代表的な指数と連動する金融商品に投資をした場合の最終時価残高をまとめたものです。積立投資では毎月2万円分の購入(総額で240万円)、一括投資では開始時に240万円分を購入するケースが想定されています。

連動する指数 積立投資の平均残高 一括投資の平均残高
ナスダック100 477万円 805万円
S&P500 425万円 670万円
MSCIコクサイ 393万円 588万円
MSCI ACWI 369万円 519万円
FTSE世界国債インデックス 313万円 403万円
日経平均株価 307万円 357万円
NOMURA-BPI総合 268万円 312万円

(※運用期間は、1989年10月末からの10年を想定。投資コストや税金などは考慮しない。)
(参考:ニッセイ基礎研究所「新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか-なぜ米国株式型が強かったのか」)

最終時価残高は全体的に一括投資のほうが多く、運用年数20年のデータでも同じような傾向が見られました。ただし、どちらが有利になるのかは相場状況によって変わるため、あくまで参考程度に留めてください。

短期間でリターンを期待できる場合がある

積立投資に比べると、一括投資は相場の上昇局面に強い特徴があります。

仮に60万円で購入した金融商品が3ヵ月で10%値上がりした場合、一括投資では6万円(60万円×10%)のリターンが生じます。一方で、毎月20万円ずつ購入する積立投資では、1ヵ月目と2ヵ月目の投資総額が60万円以下となるため、一括投資ほどのリターンは受けとれません。

また、上昇局面で生じたリターンを再投資に回すと、一括投資では大きな複利効果も期待できます。ただし、上昇局面が常に続くとは限らないため、実際の投資判断は慎重に行ってください。

価格が安いときを狙って注文できる

毎月決まった時期に購入する積立投資とは違い、一括投資では購入の細かいタイミングを調整できます。1日単位はもちろん、金融商品によっては分単位や秒単位でも注文をだせるため、価格が安いタイミングを狙うことも可能です。

価格が下がりきったタイミングで購入できれば、相場状況によっては大きな値上がり益を期待できるでしょう。ただし、相場の動きはだれにもわからないので、確実に安いときを狙えるわけではありません。

新NISAで年初に240万円分を一括購入するリスク

新NISAでは毎年1月になると、新しい非課税投資枠が設定されます。成長投資枠はその直後に使い切れますが、年初の一括購入には以下のリスクがあります。

下落局面が続くと損失が膨らむ

投資のリターンや損失の幅は、金融商品の購入金額によって変わります。一括購入をすると、上昇局面では大きなリターンを期待できますが、もし下落局面が続くと損失が大きく膨らんでしまいます。

下落局面を避けようとしても、下落が始まる時期やピークを正確に予測することは難しいです。相場状況によっては、損失が回復するまでに時間がかかったり、多くの資産を失ったりする可能性も考えられます。

ドル・コスト平均法を活用できない

ドル・コスト平均法とは、金融商品の購入間隔や購入金額を一定に保って投資を行う手法です。価格が下がった時には多くの数量を購入し、価格が上がった時には少ない数量を購入するため、結果として平均購入単価が平準化されます。

つまり、損失のリスクを抑える効果が期待できる手法ですが、一括購入では定期的かつ定額での投資は続けられません。ドル・コスト平均法を実践したい場合は、積立投資を選ぶ必要があります。

魅力的な商品が見つかっても投資ができない

新NISAの非課税投資枠は、金融商品を売却しても同一年内の再利用ができません。そのため、年初に非課税投資枠を使い切ると、魅力的な商品が見つかっても新NISAを使った投資ができなくなります。

たとえば、2024年1月1日に成長投資枠を使って、200万円分の金融商品を購入したとします。この場合、年内に使える成長投資枠は40万円(240万円-200万円)であり、2025年になるまではそれ以上の投資はできません。

つみたて投資枠を使う方法はありますが、株式のように成長投資枠でしか購入できない商品もあるので対象商品を確認する必要があります。

場合によっては日常生活にも影響する

新NISAに限らず、一括購入では日常生活への影響も考える必要があります。

もし余剰資金を超えて投資を行い、購入した金融商品が下落した場合、生活費が不足するかもしれません。ライフプランの変更を余儀なくされる可能性もあるので、投資に回す金額は慎重に考えましょう。

新NISAで一括購入をしたときのシミュレーション

新NISAで240万円分の一括購入をすると、大まかにはどれくらいのリターンを期待できるのでしょうか。以下では、1年間の利回り(投資総額に対するリターンの割合)を1.0%~5.0%として、運用年数別のリターンを計算しました。

運用年数 利回り1.0% 利回り3.0% 利回り5.0%
5年 12万円 36万円 60万円
10年 24万円 72万円 120万円
15年 36万円 108万円 180万円
20年 48万円 144万円 240万円
25年 60万円 180万円 300万円
30年 72万円 216万円 360万円

(※再投資は行わず、投資コストや税金などは考慮しない。)

上記のシミュレーションは、新NISAを始めた年のみ一括投資をした場合のリターンです。期待できるリターンは投資金額に比例するため、2年目以降も同じように一括投資をすると、資産形成の効率を高められる可能性があります。

ただし、金融商品の保有中に下落局面になると、資産を大きく減らしてしまうことも考えられます。金融商品自体の価格はもちろん、配当金や分配金の利回りも時期によって変わるため、一括投資の前には情報収集や分析をすることが重要です。

新NISAの一括購入はNG?

新NISAの一括購入には利点もあり、購入した金融所品が値上がりすると、リターンを最大化できる可能性があります。状況によっては有効な選択肢ですが、前述のリスクには注意が必要です。年初での一括購入を考えている人は、以下のような対策を考えましょう。

<一括購入のリスクを抑える対策例>
・一括購入の金額を減らす
・成長投資枠とつみたて投資枠を併用する
・状況に合わせて保有商品を売却し、資金に余裕を持たせる
・様々な金融商品に投資して、損失のリスクを分散させる

小分けにしてスポット購入をしたり積立投資をしたりなど、新NISAには様々な活用方法があります。投資の選択肢を増やすためにも、一括購入以外の投資方法も検討してみてください。

新NISAでの一括購入は慎重に検討しよう

新NISAの成長投資枠では、原則として同一年内に240万円までの一括購入ができます。また、つみたて投資枠のボーナス払いを利用できる人は、追加で最大119万8,900円分を一括購入できる可能性があります。

ただし、年初での一括購入のように極端な方法を選ぶと、損失が膨らんだり投資の選択肢が減ったりなどの弊害が生じるかもしれません。どのような状況にも対応できるように、非課税投資枠や投資資金にはある程度の余裕を持たせておきましょう。

※本記事は新NISAに関わる基礎知識を解説することを目的としており、新NISAの利用を推奨するものではありません。
※過去の実績は将来の運用成果等を保証するものではありません。
※本記事は、2024年8月20日現在のものです。今後制度が変更になる場合もあります。

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