この2020年4月から小学校では、新しい学習指導要領が全面的に実施されました。新型コロナウイルス流行の影響で授業開始が遅れている地域もありますが、中学でも2021年度から、高等学校でも2022年度から新学習指導要領への取り組みがスタートします。
つまり、学校教育に大きな変化が訪れているわけですが、その中でも特に取り沙汰されているのは、小学校における英語教育とプログラミング教育の必修化です。具体的にどのような授業が進められる方針なのか、また、塾に通わせるならその塾代は家計にどのようなインパクトをもたらす可能性があるのか、考えてみます。
まず、英語教育については小学3・4年生が年間35単位 (週1コマ程度)の時間を費やし、外国語に慣れ親しませて学習への動機づけを高めることを目的に、「聞くこと」と「話すこと(やり取り・発表)」を中心に指導することになりました。そして、小学5・6年生は 年間70単位(週2コマ程度)の授業を通じて、音声に慣れ親しんだうえで、段階的に「読むこと」と「書くこと」を加味していき、中学校入学時の学習意欲を向上させるように導く方針となっています。
続いてプログラミング教育については、情報活用能力を育成する一環として、「児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」を行うように規定しています。こちらはプログラミングという新たな教科が設けられるわけではなく、算数や理科、総合学習などの既存教科の中に反映されていくものですし、4月から全国でいっせいにスタートするわけでもありません。
ただ、単にコーディング(プログラミング言語を用いた記述手法)を習得させることではなく、「プログラミング的な思考」を育成することを目的としているものなので、文部科学省は腰を据えて本格的に取り組んでいこうと考えているようです。グローバル化が進み、ボーダレスにビジネスが進められていくことがすでに常識となっていますし、IoT(モノのインターネット)の本格普及が必至の情勢であるだけに、次代を担う子どもたちに英語とプログラミングの能力は不可欠と捉えるのは当然のことでしょう。
身につけるのが常識となると、いままで以上に英語やプログラミングの塾通いも活発化しそうな気配です。玩具メーカーのバンダイが未就学児(3歳~6歳)と小学1〜6年生の児童のいる家庭からヒアリングした「お子さまの英語学習に関する意識調査」によれば、リサーチを実施した2017年2月3日~2月5日の時点で約5人に1人の子どもが幼稚園・保育園・小学校以外で英語を学んでいたそうです。
そして、英語を学び始める時期は「小学1年生」が最多で、「小学5年生」がそれに続き、「3歳(幼稚園入園時)」が3位となっていました。気になる英語学習の月額費用は平均6,242 円でしたが、必修化に伴って英語を学ばせようと考える保護者は増え、スタートの時期も前倒しになることが予想されます。そうなるとトータルの費用負担もアップしそうです。
これに対し、GMOメディアが運営するプログラミング教育ポータルサービス「コエテコ」が小学生の子どもを持つ保護者を対象に実施した調査(2019年2月実施)によると、プログラミングを習っているとの回答はまだ2.4%にすぎませんでした。ただ、プログラミング教育の必修化の認識度は前回調査よりも約10ポイントも上昇して6割を超える結果となっており、次回以降は習っている子どもが急激に増えていくかもしれません。
プログラミング教室の費用については各々で設定が異なっており、授業の頻度にも違いがありますが、安いケースで月々6,000円程度、高いケースで2万円弱といったところがよく見受けられるようです(別途、入会費や教材費がかかるケースもあります)。プログラミングに関する専門知識を身につけている教師が限られていることから、「学校以外でもきちんと学ばせておきたい」と考える保護者が増えても不思議はありません。
このように英語やプログラミングが授業に加わることで、保護者の負担が増していくことも考えられるでしょう。とはいえ、どちらもこれからの時代には必須のスキルともなりうるので、出費(支出)という感覚ではなく、わが子への投資と思って資金作りに励みたいところです。