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7月FOMC―今後の関心は利下げと景気動向に

7月FOMC―今後の関心は利下げと景気動向に

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要旨

7月FOMCはサプライズなし―金融市場での反応は限定的

7月25-26日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、大方の予想通り、政策金利が25bp(=0.25%)引き上げられ、大きなサプライズはありませんでした。記者会見でのパウエル議長が、足元でのインフレの下振れや景気の底堅さを好意的に受け止めている様子であった点が印象的でした。今回の利上げが現行の引き締め局面における最後の利上げとなる可能性が高いと考えられます。

今後は利下げの時期とペース、景気動向がより重要に

FRBによる利上げ局面が最終段階に入ったことで、今後の金融市場では、2024年における利下げの時期とペースや景気動向により強い関心が向かっていくと考えられます。今後、2024年末のFFレートについての想定がさらに大きく上昇するようなら、2024年後半についての景気見通しが下方修正されることで、景気回復期待を背景とした株価の本格的な上昇局面入りのタイミングが後ずれするリスクがあることに注意が必要です。

7月FOMCはサプライズなし―金融市場での反応は限定的

7月25-26日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は、ほとんどの市場参加者が想定した通り、FFレートの誘導目標を25bp(=0.25%)引き上げ、5.25-5.50%に設定すると決定しました。会合後のパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の記者会見を含めて、大きなサプライズはありませんでした。6月のCPI統計が市場想定よりも落ち着いた結果になった点は、パウエル議長によると「単月のデータに過ぎない」ということであり、今回の利上げを思いとどまらせるほどの強い材料とはなりませんでしたが、これも市場の想定通りです

パウエル議長は、9月19-20日に予定される次回の会合やそれに続く会合では、その時々で入手できるデータを基に、その都度判断していくという姿勢を明確にしています。今回のFOMC後の段階で、金融先物市場では、9月FOMCにおける追加利上げの可能性が21.5%あるとみられています。しかし、次回会合までに公表される7、8月分のインフレ統計が物価のある程度の落ち着きを示すものになる公算が大きいことを踏まえると、今回の7月FOMCでの利上げが現行の金融引き締め局面における最後の利上げとなる可能性が高いと私は考えています

記者会見は、パウエル議長が足元でのインフレの下振れや景気の底堅さを好意的に受け止めていることを滲(にじ)ませる内容となりました。特に印象的だったのは、パウエル議長が、①これまでの金融引き締め措置は労働市場に対して、求人数の減少などにつながっているだけであり、失業者の増加という形でのコストをもたらしていない、➁一連の金融機関の破綻をきっかけとして生じた金融不安については、状況が落ち着いてきた―と発言した点です。パウエル議長は、FRBのスタッフが今後の米国経済について、もはや景気後退に陥るとの見方をしていない点にも言及しました。私は、今回の記者会見の様子をみて、パウエル議長の表情が過去数回の会見では見られなかったほどリラックスしているとの印象を受けました。大きなサプライズがなかったことで、7月FOMCに対する金融市場の反応は極めて限定的でした。

今後は利下げの時期とペース、景気動向がより重要に

FRBによる利上げ局面が最終段階に入ったことで、今後の金融市場では、2024年における利下げの時期とペースや景気動向により強い関心が向かっていくと考えられます。ヘッドラインよりも基調的なインフレ率を示すと考えられるコアインフレ率(エネルギー・食品を除くインフレ率)は、6月分のコアCPI上昇率(前年同月比ベース、以下同様)で4.8%、5月分のコアPCEデフレーター上昇率で4.6%と、FRBが目標とする2%のインフレよりもかなり高水準のままです。利下げの実施には、インフレ率がさらに落ち着きをみせ、「2%に向かって持続的に低下を続ける」との確信をFRBに抱かせるような状況になることが必要条件になるとみられます。私は初回の利下げの時期については、2024年の年央あたりになるとみています

一方、利下げの判断においては、FFレートがどれだけ景気抑制的かという点も、重要です。この点で、パウエル議長が今回の記者会見で、実質FFレート(名目のFFレートから、短期の期待インフレ率を差し引いて計算)が長期の中立的水準をどの程度上回っているかを考慮していると述べた点は注目に値します。パウエル議長は、金融政策の効果が出ているという点を示すために、実質FFレートが既に景気抑制的になっている点を指摘しましたが、この考え方は、当レポートの6月29日号(『実質ベースでFFレートを展望』)と同様のアプローチです。このアプローチを用いて、今後のFRBの政策による景気抑制度を試算してみると、6月FOMCで示された経路に沿ってFFレートが推移する場合、2024年を通して景気には大きなマイナスのインパクトが及ぶ一方、金融市場のコンセンサス予想通りにFFレートが推移する場合には、2024年後半中には金融政策は景気抑制的ではなくなるとの試算結果となりました(図表1) 。FFレートがこのどちらの経路で動くかについての期待が景気の先行きに対する期待を左右し、今後の株価に影響していくとみられます。

(図表1)実質FFレートの景気抑制度(中立金利を上回る程度)についての試算

現在、金融先物市場で織り込まれる2024年末のFF金利水準は4.1%であり、6月分のCPI統計の公表を受けて直近のボトムを付けた3.7%から徐々に上昇してきました(図表2)。今後、この2024年末のFFレートについての想定がさらに上昇するようなら、2024年後半についての景気見通しが下方修正されることで、景気回復期待を背景とした株価の本格的な上昇局面入りのタイミングが後ずれするリスクがでてきます。逆に、今後公表されるCPIなどのインフレ統計が想定以上に落ち着く展開となれば、FRB政策の早期のハト派化期待が高まることで、2024年末のFFレートについての市場の想定が低下し、株価にはプラスに作用する可能性が出てきます。この意味で、インフレ指標をはじめ、雇用統計などの景気指標が引き続き注目されます

(図表2)米国金利先物市場によって織り込まれた2024年末のFFレート

木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト

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