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(画像=Kolpakova Svetlana/Shutterstock.com)

「未来の食」のキーワード? プラントベースド・オルタナティブ・フードは地球規模への成長の可能性も

大豆やオート麦、米など栄養が豊富な植物から、肉や乳製品の代替食品を製造する「プラントベースド・オルタナティブ・フード(植物由来の代替食品)」。健康志向が高まっていることに加え、環境問題や人口増加による食糧難の解決策としてのニーズもあり、市場が急速に拡大しています。

「ベジタリアン、ヴィーガン向けの食品」の枠組みを超えて市場は拡大

プラントベースド・オルタナティブ・フードは、本来ベジタリアン(肉を食べない菜食主義者)やヴィーガン(動物性食品を一切食べない菜食主義者)向けの食品として開発されました。

しかし、近年はフレキシタリアン(たまに動物性食品を食べる柔軟な菜食主義者)や、健康・環境問題のために動物性食品の摂取量を減らしている人々の間でも、関心が高まっています。それは、プラントベースド・オルタナティブ・フードが進化し多様化していることに加えて、フードのカテゴリから拡大し、プラスチック製品への応用にまで広がっていることもあります。

プラントベースド・オルタナティブ・フードでは、肉の代替として豆腐や大豆プロテイン、小麦プロテイン、オート麦が、牛乳の代替としてアーモンドミルクやココナッツミルク、ヘーゼルナッツミルクが、卵の代替としてはタピオカやでん粉などを使ったパウダー、アクアファバ(ひよこ豆の煮汁)などが使われています。

対して、プラントベースド・プラスチック製品には、主にさとうきびやココナッツ、マッシュルームなどが使われます。

「自分と地球のウェルネスを配慮する」消費者の意識変化

この需要拡大の要因は、やはり消費意識の変化が背景にあるでしょう。地球と生き物に優しい食品を選び、心と体をケアすることで「自分のウェルネスだけではなく、環境や他の生き物のウェルネスも配慮する」というプラントベースド・オルタナティブのコンセプトに共感する消費者の増加が挙げられます。

加工肉や赤身肉の過剰摂取による潜在的な健康へのリスク、肉・乳製品の生産・運搬による地球温暖化や資源消費、温室効果ガスの排出、人口増加による食糧不足の懸念、動物への虐待的行為の問題化など、現代社会は様々な課題に直面しています。

国際連合食糧農業機関(FAO)の調査によると、世界の畜産農業から排出される温室効果ガス(GHG)は、人為的なGHG排出量の14.5%を占めています。

また、世界資源研究所(WRI)は、2050年には人口が2010年と比べ30億人増えていると予想しています。食料難を回避するために持続可能な食料生産方法を提案しており、改善例のひとつにプラントベースド・オルタナティブ・フードの1つであるプラントベースド・バーガーのような代替食品の可能性を挙げています。

プラントベースド・オルタナティブは、環境問題や人口問題といった地球的な課題に対するひとつの解となる、と期待されているのです。

大手メーカーが市場参入。2023年には約7,059億円規模に成長の予想も

消費者の意識変化を受け、タイソン・フーズやスミス・フィールド、ホーメルなど、既存の大手飲食メーカーもプラントベースド・オルタナティブ商品の開発・販売を強化しています。

米国の市場調査企業ニールセンとプラントベースド食品協会調査で、2018年6月までの52週間でプラントベース食品の売上が20%増加し、33億ドル(約3,623億円)に達したことが明らかになりました。

また、マーケッツ・アンド・マーケッツは、2023年までに市場が64億3,000万ドル(約7,059億円)に成長すると予測しています。

スタートアップへの投資が加速

プラントベースド・オルタナティブ市場において、特に投資が加速しているのは、スタートアップです。

RISE Brewingの財務・特別プロジェクト部門シニアマネージャー、ライアン・ウィリアムズ氏の報告書によると、2018年の飲食関連スタートアップへの投資の3分の1は、プラントベースド・オルタナティブに対するものでした。

2018年最大の資金調達ラウンドとなったのは、1,140万ドル(約13億円)を調達したカリフォルニアの代替肉メーカー、Impossible Foodsでした。2011年の設立から2019年9月までに、総額6億9,000万ドル(約757億円)を調達しています。

タイソン・フーズ が株の5%を保有するBeyond Meatは、2019年に上場。現在は、ビル・ゲイツ氏やレオナルド・ディカプリオ氏といった著名人が、株主として名を連ねています。

また、ケロッグは100万ドル(約1.1 億円)の投資基金を設け、スムージーメーカーのブライトグリーンズによる資金調達ラウンドを主導したり、植物プロテイン製品メーカーのKuli Kuliに投資しています。

今後の課題は、消費者の意識をどのように高めていくのか

需要が着実に伸びている一方で、代替食品というイメージだけでプラントベースド・オルタナティブ・フードを敬遠する人も少なくありません。「本物の肉や乳製品と比較すると、味や風味が落ちる」「味気ない」といった声も聞かれます。

また、プラントベースド・オルタナティブ・フードのデメリットを指摘する声もあります。ナチュラル・メディスン国立大学は、総コレステロールとLDLレベルの低下など、体にポジティブな効果が報告されている一方で、タンパク質や鉄分、カルシウム、ビタミンB・Dといった必要栄養素不足に陥るリスクに懸念を示しています。

これらの課題をクリアし、「未来の食」として定着させるためには、企業はプラントベースド・オルタナティブ・フードの栄養価や味、風味を向上させるだけでは不十分です。

消費者の健康と環境を配慮する意識を高め、フードに限らず、プラントベースド・オルタナティブ製品を取り入れたバランスの取れた生活スタイルを心がけるよう、消費者に働きかける必要があるでしょう。

環境問題、食糧問題はいずれ大きく顕在化する大きな地球規模の課題です。これに対し解決の可能性を持つプラントベースド・オルタナティブは、市場としての大きな可能性を持っています。今後の関係する業界動向に注目しておきましょう。

※上記文中の個別企業はあくまで事例であり、当該銘柄の売買を推奨するものではありません。

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