メタバースとは? 注目された背景やメリット・デメリット、今後の見通しまで具体例つきで解説

ゲームやビジネス、観光など、最近さまざまな分野のサービスに導入されている「メタバース」。2010年代後半からは第二次ブーム が訪れており、世界中で多くの関連サービスが登場しています。

本記事では、そんなメタバースの概要やメリット・デメリット、注目された背景などを初心者の方に向けてまとめました。今後の見通しや投資対象としての特徴も分かりやすく解説しているので、基礎知識を身につけたい方はぜひ参考にしてみてください。

そもそもメタバースとは?既存技術とはどう違う?

メタバースとは、インターネット上につくられた仮想空間のことです。「meta(高次の、超越した)」と「universe(宇宙)」を合わせた造語であり、仮想空間を提供するサービス全般を指すこともあります。

分かりやすい例としては、キャラクター(※)を使って自由に空間内を歩き回るゲームが挙げられるでしょう。最近ではバーチャルオフィスやイベントにも活用されており、ビジネスの場でもメタバースが多く見られるようになりました。

※メタバースの中では「アバター」と呼ばれるケースが多い。

VRとの違いと共通点

メタバースとVR(Virtual Reality)はいずれも仮想空間に関連していますが、両者には以下のような違いがあります。

主な違い メタバース VR
概要 ネット上の仮想空間のこと。 仮想空間を体験するために使うデバイスのこと。
利用する目的 仮想空間内でコミュニケーションを取ること。 仮想空間自体を体験すること。
体験する人数 同時に多数のユーザーが接続。 基本的には1人。

VRは仮想空間を少人数で楽しむためのデバイスであり、必ずしもネット環境を必要とするわけではありません。一方で、メタバースは他のユーザーとのコミュニケーションが目的となるため、基本的にはネット環境下で利用されます。

なぜメタバースは注目される?過去のサービスから現在までの歴史

メタバースは近年新たに開発されたものではなく、その概念自体は1980年代から存在しています。1990年以降も何度か注目されてきましたが、なぜ今になって再びブームが訪れているのでしょうか。

ここからはメタバースが注目される主な理由を、過去の歴史とともに紹介していきます。

メタバースの概念は1981年に誕生

最初にメタバースの概念が登場したのは、アメリカの数学者であるヴァーナー・ヴィンジ氏による書籍「マイクロチップの魔術師」といわれています。この書籍は1981年に出版されたものですが、コンピュータによって仮想空間が作られる、ユーザーが自由な外見を装えるなど、すでにメタバースのひな形ともいえる内容が綴られていました。

1992年になると、アメリカのSF作家であるニール・スティーヴンスン氏によって、「メタバース」や「アバター」といった言葉が誕生します。また、同氏が著した「スノウ・クラッシュ」は仮想空間のバイブルといわれており、現代の経営者にも大きな影響を与えています。

2000年代からメタバースの波が到来

世界に本格的なメタバースの波が到来したのは、2000年代に入ってからのことです。中でも2003年からリリースされた「セカンドライフ」は、仮想空間内でコミュニケーションを図ったり、ゲーム内の通貨で品物を売買したりなど、現代のメタバースに近い革新的なサービスでした。

日本にもその波は訪れており、2009年にはアバターを使って自由に街を歩き回れる「アメーバピグ(サイバーエージェント社)」のサービスが開始しています。当時としては斬新なサービスであったことから、アメーバピグの登録者はわずか1ヵ月で10万人にまで達しました。

いずれのサービスも形こそ変わっていますが(※)、2022年2月現在でもサービス提供が続けられています。

※セカンドライフは免許制、アメーバピグはアプリ版へと変更。

約10年の時を経て、メタバースブームの第二波が到来

2000年代から始まったメタバースの波は、技術インフラの未成熟などが要因となり、2009年頃からは徐々に沈静化していきました。その後、しばらくは小さなブームを繰り返していましたが、2010年代後半から大きな第二波が到来し、その波は2022年現在でも続いています。

メタバースブームの第二波が到来した理由としては、コンピュータや家庭用ゲーム機などの進化が挙げられます。技術の進化によって、今では現実世界に近いクオリティの仮想空間がいくつも登場しており、サービスを手軽に利用できるデバイスも充実してきました。

また、インターネット空間のリッチ化に貢献した、スマートフォンやSNSの普及もブームの火付け役といわれています。

メタバースのメリット・デメリットとは?

メタバースはすでに欠かせない技術ですが、利用にあたっては注意しておきたいデメリットもあります。メタバース自体の将来性にも関わるポイントなので、ここからは主なメリット・デメリットをひとつずつ確認していきましょう。

メタバースのメリット

メタバースのメリットとしては、まず非日常感を味わえる点が挙げられます。サービスによっては家やオブジェを構築できるなど、仮想空間ならではの機能が備わっているため、現実世界では体験できないさまざまなことを楽しめるでしょう。

また、メタバースによって作り出された空間は、新たなビジネス圏になる可能性があります。例えば、魅力的なキャラクターや貴重なアイテムを取引すれば、個人ユーザーでも大きなビジネスチャンスをつかめるかもしれません。2021年秋には、仮想空間上に建てられたデジタル住宅が、5,000万円以上の価格で取引 されたケースも存在しています。

さらに世の中の企業にとっては、店舗やイベントのバーチャル化によってコストカットを図れる点も大きな魅力です。

メタバースのデメリット

メタバース関連のサービスは、全体的に敷居がやや高い傾向にあります。

仮想空間のクオリティが上がった点は魅力ですが、美しい空間を体験するにはハイスペックな機器(パソコンやゲーム機など)が必要です。サービスによってはVRなどの周辺機器も必要になるため、利用の下準備だけで数万円の費用がかかることも珍しくありません。

これらの機器をすべて接続・装着するとなれば、準備を手間に感じる方もいらっしゃるでしょう。手軽に利用できるサービスもありますが、準備が不要なサービスほど仮想空間自体のクオリティは下がってしまいます。

また、メタバースの最大の注意点ともいえるデメリットが、依存性の高さです。メタバース内でのコミュニケーションのみを重視すると、いつの間にか現実世界との関わりが少なくなり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。

メリット デメリット
・非日常感を味わえる
・新たなビジネス圏になる
・コストカットにつながる
・利用までの敷居が高い
・クオリティを求めるほど準備に手間がかかる
・依存性が高い

メタバースを上手く使いこなすには、適度な距離を保つことが大切です。特にVRを使用すると没入感が強くなるため、一度に利用する時間はしっかりと調整する必要があるでしょう。

メタバースのブームはいつまで続く?将来の見通し

第二次メタバースブームは数年続いていますが、いつまで注目される状態が続くのでしょうか。ここからは近年の社会動向や活用事例などを参考に、メタバースブームの将来について考えていきましょう。

2035年には約1兆ドルの市場規模になる見込み

調査会社の「RNPL」によると、2022年のメタバース市場は約520億ドル(6兆7,600億円)に達しました。仮にこのまま45%の成長率を維持した場合、2035年までに約1兆ドル(130兆円)の市場規模になると予想されています。 メタバース市場の成長要因としては、多分野への導入が挙げられるでしょう。VR(仮想現実)とAR(拡張現実)ならではの特徴を活かすことで、現在では医療、教育、eコマースなどへの活用が見込まれています。 ただし、サイバー攻撃や地域格差など、市場の成長を阻害するリスクも少なくありません。メタバースには特有の没入感があり、仮想空間内で新たな消費機会を生み出すため、犯罪の温床になってしまう恐れがあります。

技術革新などによって、メタバースがさらに多分野へと浸透する可能性はありますが、現状では消費者の不安につながる課題が残されています。

ユニークな関連サービスも数多く登場

市場規模が拡大するにつれて、メタバース関連のサービスも着実に進化しています。以下では、2022年にリリースされたサービスを紹介します。

<メタバース住宅展示場>
大和ハウス工業が開発した、ユーザーが住宅展示場を自由に見学するためのサービスです。住宅の間取りはもちろん、構造躯体などの細かい部分まで再現されており、ユーザーは担当者とコミュニケーションを図りながら見学できます。設備などのシミュレーション機能も実装されているため、実際に住むことをイメージしながら仮想空間を楽しめます。

<Anifie>
米国のベンチャー企業が開発した、バーチャルコンサートを体感できるアプリです。これまでの音楽ビデオとは違い、Anifieでは仮想空間でライブが開催されるため、リアル感や没入感に浸りやすい魅力があります。将来的には、音楽系のアーティストとファンを結ぶ新たな場になるかもしれません。

<DIJI SHURI XR>
GREEの子会社にあたるREALITY社が開発した、首里城復興のためのメタバース空間です。すでに運営されている「REALITYワールド」内の新エリアであり、8万枚以上の写真から首里城を再現しています。メタバース空間は建築物などの再現に適しているため、再建や復興支援のプロジェクトにも向いている側面があります。

コロナ禍がブームを後押ししたものの、市場縮小の可能性もある

2019年末からのコロナ禍も、メタバースブームを後押しした出来事です。特に2020年以降は巣ごもり需要が増えたことで、非対面式のサービスが注目されました。前述の「メタバース住宅展示場」や「Anifie」も、ウィズコロナ時代に対応しているサービスでしょう。

しかし、メタバースに慎重な姿勢を見せている企業があるのも事実です。投資家からメタバース部門の従業員のリストラを求められる 、市場が大きい中国でメタバースが規制されるなど、 市場縮小につながる動きもあります。

投資対象としてのメタバースの特徴

投資対象として見たときに、果たしてメタバースは魅力的な投資先といえるのでしょうか。

本記事で紹介してきたように、メタバースは短期的なブームによって支えられてきた技術です。一時的にブームが衰退したこともあるため、投資対象としてはハイリスク・ハイリターンな部類に含まれます。

また、一口にメタバース投資とは言っても、実際の投資方法にはさまざまなものがあります。

メタバース投資の種類 概要
・関連銘柄への投資 株式取引を通して、メタバース関連銘柄に投資をする方法。
・サービス内でのアイテム売買 希少なアイテムやキャラクターを高値で売却し、利益を狙う方法。
・デジタル資産への投資 一般的な絵画などと同じように、デジタル資産に投資をして高値で売却する方法。
・仮想通貨の取引 メタバース内で取引される仮想通貨を投資対象にする方法。

2021年6月には世界初となる「メタバース上場投資信託(ETF)」が登場するなど、投資のバリエーションは確実に増えてきています。どの方法を選ぶかによって期待できるリターンやリスクは変わってくるので、メタバース投資を始める前には十分な情報収集と分析が必要になります。

また、サービス内でのアイテム売買や仮想通貨取引を選ぶ場合は、「サービスごとの違い」にも目を向けなければなりません。業界全体としてはブームが訪れているものの、サービスによってユーザー数や注目度、ファンの熱狂度などは変わってきます。

つまり、利用するサービスによって投資の特性が変わってくるので、各サービスの詳細や現状はしっかりと確認しましょう。

メタバースの動向を注視しよう

新型コロナウイルスなどの影響によってメタバースは2020年頃から再びブームを迎えましたが、2000年代のブームが沈静化したように想定よりも市場規模が伸び悩むかもしれません。ただし、イノベーションによってメタバースが想定よりも普及するスピードが早くなる可能性もあるため、新サービスの発表や企業の動向を注視しておきましょう。

※為替レート:1ドル=130円
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。

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