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高校無償化になる世帯年収はいくら?シミュレーション結果を紹介

高等学校等就学支援金制度は、高校生がいる世帯の生活をサポートする制度です。世帯によっては授業料が実質無償化なりますが、「仕組みが難しい」「いくら安くなるのか分からない」と悩んでいる方もいるでしょう。

そのような方に向けて、制度の所得制限に引っかからない世帯年収はいくらなのか、2022年時点でのシミュレーションを行なったので、ご自身が利用できるのかを確認しましょう。

高校の授業料が無償化される高等学校等就学支援金制度とは

高等学校等就学支援金制度では、高校生の授業料を就学支援金によってサポートしてくれます。教育の機会均等を目的にしており、全国の高校生のうち約8割がこの制度を利用しています。

家庭の負担削減に役立つ制度ですが、高等学校等就学支援金制度では対象となる学校や要件が細かく定められています。また、申請した月から就学支援金が支給されるため、学校から案内を受け取ったら早めの手続きを心がけましょう。

2020年からは私立高校の授業料も対象

高等学校等就学支援金制度の対象は、以下の学校に通う高校生です。2020年4月からは制度が改正され、私立高校に通う生徒も対象になりました。

<高等学校等就学支援金制度の対象校>
・国公私立の高等学校
・中等教育学校の後期課程
・特別支援学校の高等部
・高等専門学校(1~3学年)
・専修学校の高等課程
・上記に該当しない専修学校のうち、国家資格者養成課程の指定校
・一定の要件を満たす外国人学校

国公私立の高等学校については、全日制・定時制・通信制の全てが対象です。ただし、留年等によって原則の在学期間(全日制は3年、定時制や通信制は4年)を超えた場合は、年齢に関わらず就学支援金を受け取ることはできません。

対象外の世帯も?就学支援金を受け取る条件

上記の学校に通っていても、以下の条件を満たしていない生徒は就学支援金の対象外です。

<就学支援金を受け取る主な条件>
・日本国内に住所があること
・2014年度以降に入学していること
・対象校を卒業または修了していないこと
・申請や収入状況の届出をしていること
・保護者の収入が所得制限を超えていないこと

休学等の影響で2013年以前に入学している場合は、旧制度である「公立高等学校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度」が適用されます。現行の制度とは仕組みが異なるため、該当する方は旧制度の仕組みを確認しておきましょう。

高等学校等就学支援金制度の所得制限

上記で挙げた条件の中でも、「所得制限」は仕組みがやや複雑です。ここからは就学支援金の限度額も含めて、所得制限の概要を解説します。

学校別の就学支援金の上限額

以下の表は、主な学校の就学支援金の上限額をまとめたものです。

学校の種類 就学支援金の上限額(1ヵ月あたり)
全日制の国公立 国立:9,600円
公立(定額授業料):9,900円
公立(単位制授業料):4,812円
全日制の私立 定額授業料:33,000円
単位制授業料:16,100円
定時制の国公立 公立(定額授業料):2,700円
公立(単位制授業料): 1,740円
定時制の私立 定額授業料:33,000円
単位制授業料:16,100円
通信制の国公立 公立(定額授業料):520円
公立(単位制授業料):336円
通信制の私立 定額授業料:24,750円
単位制授業料:12,030円

(※単位制の学校は1単位あたりの上限額。)

もともと私立高校の上限額は1ヵ月あたり9,900円でしたが、2020年4月からは制度が変わり、一定の所得制限を満たす世帯は毎月33,000円の支援を受けられるようになりました(※定額授業料の場合)。

その影響で、2022年12月現在では私立高校の授業料が無償化される世帯も見られます。

所得制限の計算式や判定方法

高等学校等就学支援金制度の所得制限は、以下の基準額がベースになります。

<所得制限の計算方法>

基準額=市町県民税の課税標準額(※1)×6%-市町県民税の調整控除額(※2)

(※1)住民税の計算の基礎となる課税所得の合計。
(※2)所得税と住民税の控除額の差額から税負担が増えないように調整するための控除の合計。

基準額が154,500円未満:国公立は授業料が実質無償化、私立は毎月33,000円までの支援。
基準額が304,200円未満:国公立は授業料が実質無償化、私立は毎月9,900円までの支援。
基準額が304,200円以上:学校の種類に関係なく、就学支援金の支給はなし。
(※上記は全日制の定額授業料における金額。)

子どもが全日制の私立高校(定額授業料)に通っている場合は、基準額が154,500円未満であると授業料が実質無償化されます。以下では参考として、支援対象となる世帯の年収目安を紹介します。

<支援対象になる世帯の年収目安>

子どもの数 扶養控除対象者 月額9,900円の世帯年収目安 月額33,000円の世帯年収目安
1人 1人 a.約1,030万円
b.約910万円
a.約660万円
b.約590万円
2人 1人 a.約1,030万円
b.約910万円
a.約660万円
b.約590万円
2人 2人 a.約1,070万円
b.約950万円
a.約720万円
b.約640万円
2人 一般の扶養:1人
特定扶養:1人
a.約1,090万円
b.約960万円
a.約740万円
b.約650万円
3人 一般の扶養:1人
特定扶養:1人
a.約1,090万円
b.約960万円
a.約740万円
b.約650万円

(※上記は定額授業料の全日制私立高校に通っている場合。)
(※aは両親が共働き、bは一方が働いている場合の金額。)

前述の基準額からは扶養控除額が差し引かれるので、上記のように子どもの人数が多いほど所得制限は緩くなります。ただし、その他の控除制度(配偶者控除など)も影響するため、上記の金額はあくまで目安として考えましょう。

高等学校等就学支援金制度のシミュレーション(2022年時点)

ここからは2つのパターンに分けて、高等学校等就学支援金制度のシミュレーションを行いました。判定までの流れを理解し、実際に受け取れる支援金を計算してみました。

なお、高等学校等就学支援金制度は改正される可能性があるため、以下は2022年12月時点での判定方法となります。

まずは、以下のシミュレーションで使う計算式を確認してみましょう。

<計算式の順番>
1番目:1年間の所得金額-各所得控除額=課税標準額
2番目:{(課税標準額-200万円)-所得税と住民税の控除額の差}×5%=調整控除額
3番目:市町県民税の課税標準額×6%-市町県民税の調整控除額=基準額

上記の計算式に当てはめて、以下2つのケースでシミュレーションを行いました。

【ケース1】両親の年収が550万円、子どもが1人の世帯

夫婦が共働きの場合、高等学校等就学支援金制度の所得制限は両親2人の合計収入で判定されます。まずは適用される控除を「基礎控除」「配偶者控除(配偶者特別控除)」「扶養控除」と想定して、市町県民税の課税標準額を計算してみましょう。

<課税標準額の計算>
550万円(世帯年収)-43万円(基礎控除)-33万円(配偶者控除)-33万円(扶養控除)=441万円

次は、所得税と住民税の控除差額を調整するための、市町県民税の調整控除額を計算します。

<調整控除額の計算>
{(441万円-200万円)-15万円}×5%=11.3万円

上記の2つをもとに、高等学校等就学支援金制度の基準額を計算してみましょう。

<基準額の計算>
441万円×6%-11.3万円=151,600円

基準額が154,500円未満となったため、こちらの世帯では私立高校(全日制)の場合は毎月33,000円(年間396,000円)、国公立の高校(全日制)の場合は9,900円(118,800円)の就学支援金を受け取れます。

【ケース2】両親の年収が800万円、子どもが2人の世帯

年収や子どもの数が変わっても、所得制限を判定するまでの流れは同じです。適用される控除を「基礎控除」「配偶者控除(配偶者特別控除)」「扶養控除」として、まずは市町県民税の課税標準額と調整控除額を計算します。

<課税標準額の計算>
800万円(世帯年収)-43万円(基礎控除)-33万円(配偶者控除)-66万円(扶養控除)=658万円

<調整控除額の計算>
{(658万円-200万円)-20万円}×5%=21.9万円

したがって、所得制限の基準額は以下のように計算できます。

<基準額の計算>
658万円×6%-21.9万円=175,800円

こちらのケースでは基準額が154,500円~304,200円未満の範囲となるため、子ども1人あたりの就学支援金は毎月9,900円(年間118,800円)となりました。

所得制限に引っかかる場合はどうする?考えたい4つの対策

高等学校等就学支援金制度の基準額が304,200円以上になると、国公立学校であっても支援は受けられません。この所得制限に引っかかってしまった家庭は、以下のような対策を考えましょう。

アルバイトやパートの時間を減らす

所得制限をわずかに上回った場合は、世帯全体の収入を減らす方法が効果的です。例えば、夫婦いずれかのアルバイトやパートの時間を減らすと、基準額のベースとなる課税標準額を抑えられるので、就学支援金を受け取れる可能性があります。

ただし、減らした収入分よりも就学支援金のほうが少ない場合は、日常生活に悪影響が出るかもしれません。家計全体で見ると、就学支援金の受け取りが必ず得になるとは限らないので、収入を調整する場合は慎重にシミュレーションを行ってみましょう。

控除制度で所得を下げる

所得控除の適用によって課税標準額を下げる方法も、優先的に考えたい対策です。前述で紹介した制度以外にも、住民税にはさまざまな所得控除があります。

<住民税の所得控除>
・雑損控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・障害者控除
・寡婦控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・配偶者控除(配偶者特別控除)
・扶養控除
・基礎控除

所得控除の適用を受けるには、原則として税務申告(年末調整や確定申告)が必要です。条件を満たすだけでは適用されないため、年末調整などでの記入を忘れないようにしましょう。

確定拠出年金を活用する

確定拠出年金の「iDeCo」や「企業型DC」では、個人で負担した全ての掛金が所得控除の対象になります。サラリーマンの場合は1ヵ月あたり12,000円~23,000円の掛金を拠出できる上に、夫婦それぞれが加入することもできるので、年間で世帯所得を50万円ほど抑えることも可能です。

ただし、確定拠出年金には払い出し制限があり、原則60歳までは資産を引き出せないので、日常生活に支障が出ない範囲で活用しましょう。

学資保険を利用する

教育費の積立に活用される学資保険は、生命保険料控除の対象に含まれます。つまり、課税標準額を引き下げる効果があるので、加入すると教育資金を貯めながら就学支援金も受け取れる可能性があります。

・所得税の控除上限額:40,000円
・住民税の控除上限額:28,000円

生命保険料控除の対象になるのは、保険期間が5年以上の学資保険のみです。月々の保険料によって控除額が変わってくるため、加入前に就学支援金のシミュレーションをしておきましょう。

高校生活の支出は授業料だけではない

高等学校等就学支援金制度の対象は、学校生活で発生する授業料のみです。それ以外の支出は支援対象外となるため、就学支援金だけで高校に通えるわけではありません。

<授業料以外の主な支出>
・制服代
・通学のための交通費
・修学旅行や遠足の積立金
・実習材料費
・学用品や書籍の購入費
・部活動の遠征費や活動費
・授業料以外の学校納付金

これらを合計すると、年間10万円以上の支出になることもあります。特に子どもが電車通学をする場合や、学校納付金が高い私立高校に通う場合は、家計が大きく圧迫されてしまうでしょう。

どのような家庭でも教育費は必要になるため、家計の見直しや貯蓄は欠かせません。子どもの学校生活はもちろん、家族全体の生活に関わる問題なので、教育費が不足している場合は早めの準備を考えましょう。

就学支援金のシミュレーションを行ってから教育費の貯め方を考えよう

高等学校等就学支援金制度は家計を助けてくれますが、両親の年収や所得控除によって支援額が変わります。特に年収が900~1,000万円を超える世帯は、月額9,900円の基準額を超えてしまう恐れがあるため、授業料を無償化できなくなるかもしれません。

事前にシミュレーションを行っておくことで、授業料がいくらになるのかを正確に算出しておきましょう。

また、基準額は工夫によって多少調整できますが、高校生活には授業料以外の支出があることも忘れてはいけません。就学支援金だけではなく、学資保険や奨学金なども含めて教育費を用意する計画を立てておく必要があります。

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