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(画像=JulienEichinger/stock.adobe.com)

2023年は「分散型ストレージ時代」の幕開けとなるのか?

ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやメタバース市場が急成長を遂げ、分散型ウェブ「Web3」の開発が加速する中、「分散型ストレージ(保存場所)」の需要が高まっています。

なぜ、次世代オンラインストレージが必要なのか?

分散型データストレージが「オンラインストレージ市場の未来を担う」と期待されている背景は2つあります。

背景1.既存のオンラインストレージに対する不満

1つ目は、世界のデジタルデータ量が急増増加している現在、クラウドに代表される既存のオンラインストレージのデメリットを克服するソリューションが求められていることです。

従来のクラウドストレージは、特定の管理者(企業や組織)が顧客のデータファイルをインターネット経由で受信し、データセンターで管理する仕組みです。

クラウドストレージには「インターネット経由で遠隔地から手軽にファイルの保存や共有、バックアップができる」「ハードディスクのように機器の破損や災害でデータが消える可能性が低い」「サーバーの管理・運用が不要で低コスト」といったメリットがあります。

一方で、「データ漏洩・消滅などのセキュリティリスクがある」「オフライン環境で利用できない」「データセンターやサーバーで何らかの問題が発生した場合、アクセスできない」などのデメリットが指摘されています。

背景2.ブロックチェーン対応ストレージサービスの需要

2つ目は、NFTやメタバースの普及が拡大し、「Web3」の開発が加速している現在、ブロックチェーンと相互運用性の高いストレージサービスの需要が高まっていることです。

例えば、NFTではデジタルアートや画像、音楽、プロフィールなどのデータをメタデータ(※1)やハイパーメディア(※2)と呼ばれる手法で管理しています。ブロックチェーンはこれらの大容量のデータファイルを保存するように設計されていないため、オフチェーンでブロックチェーンに対応可能なストレージが必須です。

(※1)「データのデータ」のことで、あるデータの属性や特徴を表す情報のこと。
(※2)ハイパーテキストに動画や音声などを加えたもののこと。

Web3時代をリードする「分散型ストレージ」とは?

このような問題のソリューションとして注目されているのが、ブロックチェーン技術や暗号化技術などを活用した「分散型ストレージ」です。

分散型ストレージは複数のノード(ネットワークの接点)をP2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークで接続し、保存場所を提供してくれるマイナー(ネットワークの参加者)のパソコンやスマートフォンの空き容量に暗号化したデータファイルを分散させて保存するという仕組みです。マイナーは空き容量を提供することにより、「報酬」を得ることも可能です。

分散型ストレージの普及が進むことで、以下のようなメリットが期待されています。

メリット1.信頼性が高い

分散型ストレージに保存されたファイルは、P2Pネットワーク上で分散化して管理されます。そのため、システム障害やサイバー攻撃といった問題が発生した場合でも、他のノードは影響を受けず、ユーザーは引き続きデータを利用できます。

メリット2.セキュリティが強化される

分散型ストレージの暗号鍵はデータの所有者のみが保持しているため、ストレージのプロバイダーはアクセスできません。暗号化されたデータを分散化させて保存することにより、ハッキングや改ざんのリスクも軽減されます。

メリット3.導入・管理コストを削減できる

クラウドストレージのように大規模なデータセンターを必要としないため、コストやエネルギーの削減につながります。

以上のようなメリットが期待されている一方で、今後の課題も指摘されています。

例えば、ファイルが不特定多数のユーザーのストレージに保存されていることにより、データの安全性の確保が困難になるという懸念があります。また、分散型ストレージにおいては空き容量の提供者であるマイナーの存在が重要であるため、十分なマイナーを確保できないサービスは機能不全に陥るリスクがあります。

注目の分散型ストレージ

近年は需要の高まりに伴い、以下のような分散型ストレージのプロジェクトが進められています

プロジェクト1.Filecoin(ファイルコイン)

シリコンバレーのスタートアップ、Protocol Labs(プロトコルラボ)が手がける分散型ストレージの先駆け的プロジェクトです。2017年にICO(イニシャル・コイン・オファリング)史上最高額の 2億5,700万ドル(約341億8,100万円)を調達し、注目を浴びました。

Filecoinの分散型ストレージは「InterPlanetary File System(IPFS)」と呼ばれるコンテンツアドレスを識別するためのプロトコルを採用しており、ファイルの保存料金やマイナーへの支払いは、独自の暗号通貨「FIL」で行われます。

同社によると、マイナー数は2022年の年初から7倍に増え、現在は約2万人のユーザーが5万件を超えるデータを保存しているとのことです。

プロジェクト2.Arweave(アーウィーブ)

2017年にロンドンで設立されたスタートアップ、Arweaveが手がけるプロジェクトです。

独自のブロックチェーン「Blockweave(ブロックウィーブ)」でデータを管理し、レイヤー「Permaweb(パーマウェブ)」が分散型インターネットのような役割を果たしています。

もう一つの特徴は、データの永続性を考慮して設計されていることです。Filecoinを含む他の分散型ストレージでは利用のたびに料金が発生するのに対し、Arweaveは初期費用のみで永遠にデータを保存できます。

プロジェクト3.Cubbit(キュビット)

イタリアのスタートアップであるCubbitは、永久に無料で利用できる非ブロックチェーン型ストレージを提供しています。

他のユーザーの空き容量にデータを保存するという点はブロックチェーンベースのストレージと同じですが、Cubbitの分散型ストレージは機械学習技術と暗号化アルゴリズム「AES(Advanced Encryption Standard )256」を基盤に、データを暗号化・分散させている点が大きく異なります。

また、ユーザーは自分の空き容量を提供する代わりに、他のユーザーの空き容量を無料で利用できる仕組みになっています。

オンラインストレージ市場の主流となるか?

ブロックチェーン対応の分散型ストレージは発展段階にあるものの、NFTやメタバースの普及が進んだ2021年以降、その需要は拡大していく可能性があります。

今後、急激な需要拡大に対応できるスケーラブルで信頼性が高いネットワークやシステムが確立されるか否かが、普及のカギを握っていると考えられます。Wealth Roadでは投資の視点からも、分散型ストレージがオンラインストレージ市場の主流となる可能性に注目していきます。

※為替レート:1ドル=133円

※上記は参考情報であり、特定企業の株式や暗号資産などの売買及び投資を推奨するものではありません。

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