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(画像=REDPIXEL.PL/Shutterstock.com)

3Dプリントが変えるデジタル時代の歯科矯正

製造業や医療など、様々な分野で導入が進む3Dプリント技術。これにより、お金と時間がかかって当たり前であった歯科矯正の世界は変わろうとしています。治療時間が大幅に短縮される上に、軽量で低価格な矯正器具の作成が実現しているのです。3Dプリントの画期的技術と活用方法をご紹介しましょう。

デンタル市場をリードする「3Dプリント歯科矯正」とは?

対象について立体表示できる3Dデジタル技術は、すでに破損した歯の治療や矯正を含むデンタル分野で広く導入が始まっています。デンタル分野のデジタル化を加速させるイノベーションとなっています。

積層造形法とも呼ばれる3Dプリントは、デジタルファイルから3次元の立体物を作成する技術です。作成に使われる素材を層にして重ねることで、立体物を作成します。従来の製造方法よりも少ない材料と手間で、複雑な形状を作ることができます。

3Dプリント歯科矯正は、この技術を歯科矯正の分野に採用したものです。患者の口内をスキャンし、デンタルマップ(歯の地図)を作成。これをもとに最適にカスタマイズした矯正器具を3Dプリントで作成するという流れです。

3Dプリントにおいて実際の立体物の成型を行う3Dプリンターにはいくつか種類がありますが、精密さが求められる歯科治療用には、レーザーベースの滑らかな仕上がりを特徴とする光造形方式(SLA)や、デジタル光処理(DLP)の方式が用いられます。

3Dプリント歯科矯正の主なメリット

3Dプリントが歯科矯正にもたらすメリットを見てみましょう。

大幅な治療コストの削減

歯列の状態によって変わりますが、歯科矯正の治療期間の目安は2年、費用は成人で平均80万~100万円が相場です。

アメリカ歯科医師会の調査によると、米国では矯正器具(マウスピースやワイヤーなど)の費用だけで約7,000ドル(約77万円)がかかりますが、3Dプリント歯科矯正では50~1,700ドルに抑えることができます。

治療時間を最大2分の1に短縮

米国の歯列矯正ソフト企業ArchFormなどのサービスを利用すれば、スキャンからデザイン、発注までの作業を歯科オフィスにて簡単に行えます。

従来の矯正では、口腔内写真やレントゲン写真を撮影した後、歯科医が患者に合った矯正器具を設計します。治療プランを患者と相談してから工場に器具を発注、仕上がりを待ってからようやく本格的な矯正が開始するという流れでした。患者の歯型作成から発注、製品発送までに通常10~12日を要しますが、3Dプリントを使えばこのような準備期間を大幅に短縮できます。

たとえば、EnvisionTEのサービスでは、患者の口腔内のスキャンから作成したデジタルファイルを工場に送信するだけで、3~6日後には製品が発送されるというスピードです。

装着具合の改善

従来の歯科矯正の難点の1つに、装着具合の悪さが挙げられます。3Dプリントは複雑な形状のマウスピースやインプラントを製造できるだけでなく、用途に応じて異なる素材を使用することで軽量化もできるので、装着具合を劇的に改善することができます。

大量生産ができる

米国のデンタルテック、Smile Direct ClubはHP(ヒューレット・パッカード)の3Dプリンター「HP Jet Fusion 3D」を49台導入。24時間365日稼働させ、毎日5万個以上の歯型を生産できる体制を整えました。年間では2,000万個の生産を目指しています。同社はこの3Dプリンターを使った歯科矯正のオンラインサービスを展開しており、定期的な通院不要のメニューにより顧客を獲得、拡大しています。

入れ歯や差し歯、クラウン、インプラント手術にも有用。世界的な需要の拡大に対応する技術

3Dプリント技術は歯科矯正にとどまらず、入れ歯や差し歯、クラウン(かぶせもの)、インプラント手術のためのサージカルガイドなどにも活用されています。

たとえばクラウンなら、破損した歯をスキャンし、ソフトウェアを使って30分以内に作成できます。また、サージカルガイドなら、患者の口に完全にフィットするものを設計、生成できるため、より正確で安全なインプラント手術を行うことができます。

インドの市場調査企業Market Research Futureは、2018年から2023年まで3Dデンタル市場がCAGR(年平均成長率)24.5 %で成長すると予想しています。

世界的な社会構成の高齢化にともない、入れ歯や差し歯の需要が拡大している中、スピーディかつ低コストで大量生産できる3Dプリント技術は、これからのデンタルケア分野に欠かせない存在となるでしょう。市場拡大が大いに期待できそうで、技術革新やプレーヤーの動向に注目していきましょう。

※上記文中の個別企業はあくまで事例であり、当該銘柄の売買を推奨するものではありません。

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