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(画像=AntonyWeerut/stock.adobe.com)

再生・廃棄プラスチックが道路になる?欧米で実験開始

深刻な環境問題の一つにプラスチックごみがあります。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、世界のプラスチック廃棄物の発生量は2000~2019年で2倍以上増加し、3 億 5,300 万トンに達しました。

その中で、人口の増加や生活スタイルの変化に伴って増え続けるプラスチックごみを効果的に再利用し、環境負担を軽減する手段として、使用済みのプラスチックを道路整備に活用する「プラスチック道路」の研究・開発が進められています。

「プラスチック道路」で期待されている4つの利点

「プラスチック道路」は通常の舗装道路に使われているアスファルトと比較して、どのような特徴や利点があるのでしょうか。4つの利点を見てみましょう。

利点1.耐久性に優れている

原油から製造されるアスファルト舗装の道路は、天候や交通量、地盤の具合にといったさまざまな要素の影響を受けやすく、その寿命は約10年とされています。

これに対し、「プラスチック道路」は天候や化学物質への耐久性に優れており、アスファルトを補強する役割を果たし、雨水などの余分な水分を素早く排水する構造になっているため、メンテナンスの頻度が低くなりやすいという利点があります。

利点2.時間や労力、コストが削減できる

前述の通り、「プラスチック道路」は従来の道路よりメンテナンスの頻度が低く、アスファルトよりはるかに軽量な素材で運搬の負担も軽減されるため、設置やメンテナンス作業の時間や労力、コストが大幅に削減できることが期待されています。

また、以下の事例で紹介する商品のように、プラスチックから作られた部品をLEGOのように組み立てて舗装する技術も開発されています。あらかじめ設計された部品を組み立てるだけなので、短時間で作業が完了します。

利点3.CO2の排出量削減に貢献する

「プラスチック道路」は部品の輸送や設置・メインテナンス作業中に排出されるCO2(二酸化炭素)の量が、従来の道路より少ないという特徴があります。また、道路工事の時間短縮による間接的効果も期待されています。

例えば、オランダを拠点とする地図情報企業TomTom(トム・トム)の交通データ「TomTom Traffic Index (交通指数)」によると、ドイツの首都ベルリンで交通機関(車や飛行機など)が排出するCO2排出量は4メガトン、そのうち10.5%(40万トン)は渋滞によるものです。

「プラスチック道路」によって道路工事が減れば、車の迂回や混雑が軽減され、CO2の削減につながるとされています。

利点4.高機能道路が実現する

フレキシビリティー(変化に対応する柔軟性)の向上も期待されています。

近年、雨水排水を再利用するための特殊フィルターシステムや、IoT(モノのインターネット)用の高度なセンサー、発電パネルといったさまざまな機能を道路に埋め込むための技術開発が進んでいます。

「プラスチック道路」は必要に応じてこのような機能を容易に追加したり、地下にケーブルやパイプを設置するためのスペースを確保したりすることができる構造になっています。

「世界初のプラスチック道路」など、欧米のプロジェクト事例

さまざまな「プラスチック道路」プロジェクトが進行する中、以下のような取り組みが注目されています。

オランダ発「世界初!プラスチックでできたサイクルトラック」

オランダ は国土の約3分の1が海面下にあり、9%が泥炭地(泥炭が積み重なってできた湿地)という「水の国」です。このような特性に加え、近年は気候変動に起因する洪水や地下水位の低下が地盤沈下や泥炭土壌の乾燥を引き起こしており、それに起因するCO2排出量の増加が懸念されています。

オランダに本社を置く国際建設企業VolkerWessels(フォルカーウェッセルズ)の子会社KWSは、このような問題のソリューションとして2015年に「プラスチック道路」のコンセプトを発表しました。3年に及ぶ開発期間を経て、2018年にオランダの2つの都市で、長さ30mのプラスチック・サイクルトラック(自転車専用道路)のパイロット版を導入しました。

この道路には、21万8,000 個以上のプラスチックカップに相当する再生プラスチックが活用されています。同社の初期試算によると、設置先への輸送時に排出するCO2量を85%削減できると期待されています。

スコットランド発「廃棄プラスチックを利用したアスファルト道路」

「リサイクル不可能な廃棄プラスチックを道路舗装に利用する」という画期的な試みに取り組んでいるのは、スコットランドの大手アスファルト施工業者MacRebur(マックレブール)です。

同社は造粒化した廃棄プラスチックをアスファルト改質剤(※1)あるいはバインダー・エクステンダー(※2)として使用できる添加剤の開発を通じて、プラスチックごみ問題の減少に貢献しています。

(※1)プラスチックの性質を変えるために添加する薬剤のこと。
(※2)接着剤の役割を果たす化合物・複合物の増量剤のこと。

同社の製品を使用して敷設された道路は、 1km当たり74万枚以上の使い捨てビニール袋に相当する廃棄プラスチックを消費します。

同社の製品は、すでに世界中のさまざまな研究所でアスファルトの強度と変形抵抗(材料が塑性変形を起こす際の限界応力)を大幅に改善し、酸化による脆化を防ぐことが実証されています。最近では2022年11月にニューヨーク市運輸局と提携し、スタテンアイランド区の2 つの道路で同社の製品を使用した「プラスチック・アスファルト道路」の耐久性の測定実験を開始しました。

MacReburのコンセプトは「地元で廃棄されたプラスチックを地元で再利用する」で、サーキュラー・エコノミー(循環経済)にも貢献すると期待されています。

実用化に向けた課題への取り組みが必須

開発が加速する一方で、「使用されたプラスチック廃棄物に含まれる有害物質が、時間の経過とともに浸出し始め、清掃が困難になる」「道路敷設の際、アスファルトとプラスチックの混合物が周囲の塩素と混ざり、有害なHCL(塩化水素)ガスを放出する」といった懸念もあります。

今後はこのような懸念への対応策を模索すると同時に、実験を通して新たに特定された課題への取り組みが求められるでしょう。

いずれのプロジェクトも実験段階にあるため、本格的な導入に向けた道のりは長いと思われますが、Wealth Roadでは環境問題に大きく貢献する可能性を秘めた領域として、投資の視点からレポートを続けます。

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