ホーム > 投資の未来 > コロナ禍3年目、消費者心理の変化に見るサブスク産業の「勝ち組」「負け組」
(画像=MichaelJBerlin/stock.adobe.com)

コロナ禍3年目、消費者心理の変化に見るサブスク産業の「勝ち組」「負け組」

一定の料金を払って、商品・サービスを一定期間利用する「サブスクリプション・サービス(通称サブスク)」。コロナ禍で需要が急拡大したものの、インフレが加速する欧米においては、解約が相次ぐサービスと順調に契約件数を伸ばしているサービスの二極化が進んでいます。明暗の決め手は、消費者心理の変化にあるようです。

サブスク市場、2026年には130兆円規模に成長?

サブスクは、必要に応じて商品やサービスを少額で利用できる点が魅力です。現在は動画・音楽・書籍・ゲームといったデジタルコンテンツのストリーミングから、ITソフト、食材・飲料食品・日用品の配達、医療・ヘルス、旅行まで、その領域は多様化しています。

シェアリングエコノミー(共有経済)の台頭やコロナ禍の行動制限、それに伴う消費者意識の変化を受け、世界中で需要が一気に拡大しました。

世界のサブスクの市場規模は今後も拡大を続け、2021年の729億1,000万ドル(約10兆4,990億円)から2022年には1,200億4,000万ドル(約17兆 2,858億円)、2026年には9,042億ドル(約130兆2,048億円)に達すると、国際市場調査企業ビジネス・リサーチ・カンパニーは予想しています。

サブスクの「勝ち組」は?

市場の急成長とともに、顧客獲得競争も激化しています。

米決済情報企業PYMNTSとサブスク・コマースプラットフォームsticky.ioが、2022年3月と5月の米サブスクサービスのアクティブユーザー数を比較した「サブスクリプション・コマース・コンバージョン指数(Subscription Commerce Conversion Index)」では、対象となった31のサービス中、16はユーザーが増加したのに対し、12は減少しました。

ユーザーの増加が見られたのは、「Amazon定期おトク便」のように豊富な品揃えと利便性の高さ、値引きや送料無料といった特典を提供しているサービス、肌質・好みに合わせた化粧品サンプルを定期的に発送する「Ipsy(イプシー)」、洋服のスタイリングサービス「Stitch Fix(スティッチ・フィックス)」など、顧客のニーズに合わせて最適な商品を提案するパーソナライズ・サービスです。

男性用グルーミング用品の定期便「Dollar Shave Club(ドラー・シェーヴ・クラブ)」、美容・フィットネス関連の商品・情報のサブクリサービス「FabFitFun(ファブフィットファン)」なども需要が拡大しました。

ストリーミングサービスは二極化

動画ストリーミング市場の勢力図に変化が見られます。

飛ぶ鳥を落とす勢いだった動画ストリーミングのNetflix(ネットフリックス)は、2022年第1四半期(1月~3月)で10年ぶりに有料ユーザーが減少しました。同年第2四半期(4月~6月)も失速は続き、上半期の解約数は合計117万件に達しました。

同社はロシアによるウクライナ侵攻やインフレ、ユーザー間におけるパスワードの使い回しを主な原因として挙げていますが、ストリーミング市場に広がる飽和感が顧客離れに拍車をかけてもいるでしょう。

対照的に、パンデミック直前にサービスを開始した「Disney+(ディズニー・プラス)」は第2四半期、1440万件の加入増加を記録しました。「Hulu(フールー)」、ウォルトディズニー・カンパニーの傘下でスポーツ専門ビデオ・オン・デマンド・サービス「ESPN+」の3つのサービスのユーザー数は合計2億2,100万人と、Netflixを3万人上回りました。

また、スウェーデン発の定額制音楽配信サービス「Spotify(スポティファイ)」はほとんど影響を受けず、第2四半期の月間アクティブユーザー数は前年同期比20%増の4億5,000万人を記録しました。

消費者がサブスクに求める3つの要素

市場淘汰が進む現在、消費者は「本当にお金を払う価値のある商品やサービス」を吟味しています。前述の調査で消費者がサブスクで最も重視する要素として挙げたのは、「エンターテイメント性(35%)」「利便性(32%)」「コスト(20%)」の3つです。

この結果は商品やサービスの内容のみならず、生活の質の向上や時間の節約につながる良質さを、消費者が求めている現状を反映しています。インフレ下で家計が圧迫する中、それを補うプラスアルファを提供できるサービスに、消費者の関心は向けられているのです。

例えば、「Disney+」はウォルトディズニーやピクサー・アニメーション・スタジオ を含む膨大なコンテンツ量に加え、コスト意識の高い消費者にもアピールする戦略を次々と繰り出しています。最近では、ストリーミング各社がインフレの影響で値上げに踏み切る中、より安価で利用できる広告付きのサブスクプランの開始をいち早く発表しました。

一方で、パーソナライズサービスの人気が高まっている背景には、「自分に合う商品・サービスをあれこれ探し回る時間が節約できる」という利便性の高さがあるものと推測されます。

世界規模のロックダウン(都市封鎖)中のような急成長は、期待できないかも知れません。しかし、消費者の意識が「所有」から「利用」に移行した現在、消費者の需要をいち早く察知し、それを満たすサービスがサブスク市場の成長を後押ししていくでしょう。Wealth Roadでは、今後もサブスク市場の動向をレポートします。

※為替レート:1ドル=144円
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。

本サイトの記事は(株)ZUUが情報収集し作成したものです。記事の内容・情報に関しては作成時点のもので、変更の可能性があります。また、一部、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供している記事を掲載している場合があります。 本サイトは特定の商品、株式、投資信託、そのほかの金融商品やサービスなどの勧誘や売買の推奨等を目的としたものではありません。本サイトに掲載されている情報のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当サイトご利用にあたっては、下記サイトポリシーをご確認いただけますようお願いいたします。