インフレ時の資産運用では、インフレに強い資産を持つことが大切です。インフレと連動して価格が上昇しやすい資産はいくつかありますが、社会の基盤として欠かせない「インフラ(※)」も資産運用の選択肢のひとつになることをご存じでしょうか。
(※)インフラストラクチャーの略。
そこで本記事では、インフラ投資の特徴と投資方法について詳しく解説します。
目次
インフラ投資とは、地域や社会に欠かせない設備や施設などに対して投資することです。投資先は企業の生産活動に関わる「経済的インフラ」と、国や自治体が運用する「社会的インフラ」に分けられます。
経済的インフラの例 | 社会的インフラの例 |
---|---|
・道路 ・空港 ・発電所 | ・学校 ・病院 ・刑務所 |
インフラ投資の方法としては、上記に関わるインフラ関連銘柄(上場株式)への投資が挙げられます。個人投資家の場合は、インフラに対して直接投資できる対象が多くないため、インフレ関連企業やファンドを通じて間接的に投資するのが大半になるでしょう。
多くのインフラ施設は、営業コストの増加分を利用料金に上乗せしやすいという特徴があります。一部例外もありますが、料金がたびたび見直される有料道路や公共料金をイメージすると分かりやすいでしょう。
インフラ施設は日常生活に欠かせないものなので、料金が多少上がっても利用者が一気に減ることはありません。特に利用者数がほぼ変わらないインフラ事業では、値上げした分が利益の増加に連動しやすいので、インフレ率と収益が連動する傾向があります。そのため、インフラ事業の収益は安定しやすくなっています。
株式投資とインフラ投資は、投資対象の資産や関連事業が異なります。
一般的な株式投資では、基本的に銘柄の業種や事業が限定されることはありません。飲食業や製造業をはじめ、多くの業種と事業が投資対象であり、銘柄によっては短期間で株価が大きく動くものもあります。
一方で、基本的なインフラ投資の対象資産はインフラに関わるもののみです。投資対象が「インフラ関連資産」に限定されるため、流動性や値動きが少ない、中長期的に安定的な利回りを期待できるなど、株式とはリターンとリスクの特性が異なります。
ここからは、インフラ投資のメリットを紹介します。他の金融商品との違いを意識しながら、ひとつずつ確認していきましょう。
インフラ投資の対象資産は、基本的にインフラ施設の運営に関わる規制や長期契約によって保護されています。
公共道路や電力網が災害によって被害を受けた場合は、迅速に復旧作業が行われます。厳重なメンテナンスや管理も行われているので、インフラ設備は耐用年数が長い実物資産といえます。
事業自体も日常生活に関わるものが多いため、一般的な上場企業と比べても倒産のリスクを抑えられます。
安定した収益(インカムゲイン)を狙える点もインフラ投資の魅力でしょう。インカムゲインとは、資産を保有している間に得られる利益(分配金や配当金など)のことです。
また、規制に守られているインフラ事業は、多額の設備投資が必要になることもあって参入障壁が高いため、過当競争に巻き込まれる状況は少なくなっています。長期で安定した運営が可能になるため、インカムゲインを生み出す事業の収益も安定しやすいといえるでしょう。
これらの要因からインフラ投資は他の投資と比べると将来のリターンを予測しやすいため、中長期的な運用計画を立てやすいといえます。
インフラ資産は、インフレによるコスト増加を利用料金に転嫁しやすくなっています。
他の業種でもインフレ時に価格転嫁が行われることがありますが、事業内容によっては値上げが利用者の減少につながることがあります。特に生活必需品との関連性が低い事業や、企業間の競争が激しい事業では、インフレによるコスト増加を価格に転嫁できない状況が多々あるでしょう。
しかし、インフラ資産については、独占的に事業を運営しているケースもあり、採算をとるためのコスト増を価格に転嫁しやすい環境にあるケースが多い状況です。
そのため、一般的な企業よりもインフレによる悪影響が小さくなりやすく、そのような状況下では、インフラの価値は相対的に上昇するため、リスクを抑えつつ、リターンを狙いやすくなるとも考えられます。
一方で、インフラ投資には特有のデメリットがあります。代表的な3つのデメリットについて、詳しく解説します。
景気変動の影響を受けにくい点は、メリットにもデメリットにもなり得ます。運用が安定しやすい点はメリットですが、インフラ事業は景気拡大時における収益の変動幅が小さいため、短期間で大きいリターンは期待できません。
インフラ自体の規模は大きくとも、株式市場などに上場しているわけではないケースも多く、国内株や米国株に比べると、インフラ投資の市場規模は大きくありません。例えば、東京証券取引所で取り扱いのあるインフラファンド(※)は投資法人7社のみです。
(※)発電所や空港などの社会基盤に投資し、そのインフラからの収益を分配するファンドのこと。
このように市場規模が小さい場合は、売買の数量(出来高)が少ないことによって、思い通りの価格で取引を行えない恐れがあります。これから投資を検討している場合は、購入時よりも売却時の注文が通ってくれるのかを確認しておきましょう。
購入できなかった場合は損失が発生しませんが、売れない場合は価格帯によって損失が発生する可能性があるので、特に注意が必要です。
また、東京証券取引所のインフラファンドの全てが再生可能エネルギー事業になっている点も頭に入れておきましょう。
インフラ事業は金利変動の影響を受けやすく、金利の上昇局面では収益が減少する恐れがあります。現状は、長期金利の重要指標である「新発10年国債」の推移を見ると、国内の金利は横ばいで推移しています。
日常生活に不可欠なインフラ事業は、金利上昇分の価格転嫁が認められやすい傾向があります。しかし、急激な金利上昇があった場合は、値上げするまでの間は金利上昇がマイナスに働きます。
ここからは、インフレ対策につながるインフラ 投資の方法 を紹介します。
インフラ株とは、インフラの関連事業に携わる上場株式のことです。例としては、鉄道会社や航空会社、電力会社などが挙げられます。どれも日本で生活していれば、必ず名前を聞いたことがある会社ばかりです。
株式投資は価格変動が比較的大きいため、相場によっては短期間で大きなリターンを狙えます。さまざまな地域や業種の銘柄を組み合わせれば、個別株だけで分散投資をすることも可能です。
ただし、企業によってビジネスモデルが異なるので、インフレの恩恵を必ず受けられるとは限りません。選択肢が多いからこそ、銘柄を選定する前に情報収集や分析を行う必要があります。
インフラファンドは、インフラ事業に携わる投資法人が運営する金融商品です。投資によって運用益が発生すると、購入口数に応じて分配金が各投資家に支払われます。
インフラファンドの多くで、分配金が期待できる点や10万円程度から投資できる点や、タイミング次第では譲渡益を期待できる点も魅力です。
2022年1月時点の時価総額は1,600億円程度と少なめですが(※)、これは2015年4月に東証インフラファンド市場が創設され、生まれた比較的新しい金融商品であるためです。
(※)同時期の東証一部は約692兆円、J-REITは約15兆円の時価総額。
様々な方法によって、個人投資家はインフラ投資を始められるようになりました。資産としての安定性や利回りはもちろん、インフレ対策としての効果も期待できます。金融商品の種類や銘柄によって特性が異なるので、投資する前に情報収集や分析を徹底しましょう。
※上記は参考情報であり、特定のファンドや特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。