ホーム > お金の使い方 > 森林投資がインフレ対策になる理由と投資方法を解説
(画像=japolia/stock.adobe.com)

森林投資がインフレ対策になる理由と投資方法を解説

インフレの長期化が懸念される中で、株式や債券への投資に代わるオルタナティブ投資が注目されています。SDGsやESGとの関連が深い「森林投資」もそのひとつです。日本では、広く知られていない森林投資の特徴や投資方法について解説します。

まずは、オルタナティブ投資への理解度を深めてから、森林投資を深堀りしていきます。

オルタナティブ投資とは

オルタナティブ投資とは、伝統的資産(国内株式と国内債券、海外株式、海外債券)と異なる投資のことで、代替的(オルタナティブ)な資産への投資を意味します。

オルタナティブ資産の値動きは、伝統的資産との相関関係が低くなる傾向があるといわれています。ポートフォリオに組み入れることによって、損失のリスクを抑えるために活用されることがあります。

デメリットとしては、上場株式のように活発な取引が行われていない投資商品が多い点や、投資に必要な金額が一般的に高額になりやすい点が挙げられます。

オルタナティブ投資の種類

オルタナティブ投資にはどのような種類があるのか、簡単に紹介します。代表的なオルタナティブ投資は、以下の通りです。

-プライベートエクイティ

潜在的な成長力のある未公開企業を買収して、企業価値を高めてから売却することで、リターンを狙うファンドのことです。

-ヘッジファンド

投資家から資金を集め、様々な投資商品を組み合わせて高いリターンを狙うことを目的としたファンドのことです。

-コモディティ投資

コモディティは日本語で「商品」という意味で、原油や穀物、貴金属などが該当します。これらの商品の取引を行うことでリターンを狙います。

-ベンチャーキャピタル

成長が期待できる未上場企業に出資して株式を取得し、IPOや株式の売却によってリターンを得る戦略のファンドのことです。

-不動産投資

アパートやマンションを購入して家賃収入を得たり、売却することで譲渡益を得たりする投資のことです。

上記の通り、オルタナティブ投資には様々な選択肢があります。それぞれ資産の特性や価格の決まり方が異なるため、伝統的資産との相関関係は低くなりやすくなっています。

森林投資とは

森林投資とは、森林に対して投資することです。森林には様々な活用方法があり、その種類には以下のようなものがあります。

・樹齢の若い樹木:包装用チップや紙への加工
・ある程度育った樹木:角材として利用
・大きく育った樹木:建築用資材として売却
・CO2排出権の取引(※)

一般的に樹木は大きく育ったものほど価値が高くなるので、森林投資は中長期的な投資と位置付けられています。また、景観や立地などの魅力がある場合は、キャンプ場やレジャー施設としての収益も期待できます。

このように森林は生活に関わっている分野が多く、一定の需要が見込めるため、安定した収益を確保しやすいといえます。

(※)あらかじめ企業などにCO2排出量の上限枠を設定し、上限より少ない場合は、上限を超過してCO2を排出する企業に対し、余剰分を売却できる制度のこと。

森林投資が注目される背景

森林投資の市場は、1980年代に米国において黎明期を迎えたといわれています。当初はオルタナティブ資産の一種として位置づけられていましたが、近年はESG投資などの影響で世界的に注目される資産になりつつあります。

2020年前半は、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で一時的に米国の住宅着工件数が大幅に減りました。2020年後半からは住宅着工件数が増加に転じたこともあり、木材先物価格も大きく上昇しています。

以下の画像は、米シカゴ・マーカンタイル取引所の先物市場のチャートです。

(引用:Investing.com「材木先物」)

2020年後半から2021年にかけての先物価格は平年と比べると急激に上昇しているだけで、1980年から2020年にかけて上昇と下落を繰り返しながらも横ばいで推移していました。

日本においては、木材・木製品・林産物全体の輸入価格が2015年から2020年まで横ばいで推移していましたが、2021年に入ってから急激に上昇していました。

(引用:経産省「いつまで続くウッドショック」)

木材は海外からの輸入に頼っている部分があるため、海外の価格上昇の影響を受けたのでしょう。

また、ESG投資が広く普及したことで、現在ではCO2排出権の取引対象としても森林が注目されています。CO2を多く排出する国や企業にとって、森林資源の重要性は高まっています。

森林投資がインフレ対策になる理由

森林は実物資産であるため、インフレに強いという特徴があります。インフレの状況では、実物資産の価格も上昇しやすい傾向にあるからです。

また、実物そのものに価値があることから、価値が下がることはあってもゼロになる可能性は低いです。その実物資産が生活に密接な関わりがあり、生活必需品ともなれば、インフレによって価値が下がりにくいといえるでしょう。

森林投資のメリットとデメリット

ここからは、森林投資のメリットとデメリットを見ていきましょう。

森林投資のメリット

森林投資のメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

-メリット①実需に支えられた資産

紙や建築用資材をはじめ、樹木から作られる製品の多くは生活必需品です。これらの製品は一定の需要が見込めるため、安定した収益が期待できます。

-メリット②ESG投資として注目度が高まる

森林はCO2を吸収する天然資源であるため、ESG投資への貢献が期待されます。世界的に環境への意識が高まれば、森林資源の需要は拡大する可能性があります。

森林投資は米国やカナダ、オーストラリアなどでよく行われていますが、国内では林業などの事業を展開する住友林業が2022年2月に1,000億円規模のファンドを設立すると発表しました。ファンドを通じて東南アジアや北米など、国内外で50万ヘクタールの森林を保有する予定のようです。

-メリット③値動きが株式よりも緩やか

野村資本市場研究所によると、森林投資のボラティリティ(※)が米国の大型株式と小型株式よりも低いというデータが出ています。少なくても米国市場においては、値動きが株式よりも緩やかになっているといえます。

(※)価格変動の大きさのこと。

(引用:野村資本市場研究所「欧米期間投資家の注目を集める森林投資」)
(※標準偏差=ボラティリティ)

ボラティリティが高い状況では、大きいリターンを狙えますが、その分だけリスクも大きくなります。値動きが緩やかということは、リターンが小さくなりやすく、リスクも低くなりやすい傾向にあるといえます。それでも46年間で平均12.51%のリターンが出ているため、リターンが決して小さいわけでもありません。

森林投資のデメリット

森林投資のデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

-デメリット①自然災害に伴う価格変動リスク

森林資源は、自然災害の影響を大きく受けます。例えば、保有している森林で大規模な山火事が起こると、資材になるはずだった木材が焼失してしまいます。

その他にも、悪天候や水不足による凶作も大きなリスクです。これらの自然災害が起こると価格は大きく下落する可能性があります。自然災害を予測することは難しいため、地域や伐採時期を分散して投資するなど、特有のリスク対策が必要になります。

-デメリット②住宅需要の低下による資源価格の下落リスク

森林は金融市場の影響を受けにくい資産ですが、不況の影響を避けられるわけではありません。2008年に発生したリーマン・ショックの直後は、米国の住宅需要が伸び悩んだことで、森林投資のリターンも大きく落ち込みました。

木材製品には生活必需品が多いものの、森林の運用方針によっては景気の影響を受けます。特に建築用資材を育てている森林は、住宅需要や着工件数によって収益が変わるため、投資する前に経済情勢や市況の確認が必要です。

個人投資家が森林投資を行う方法

森林投資を始めるにあたって、必要資金や管理方法に不安を覚える方は少なくないでしょう。森林投資には、現物を購入する方法以外に金融商品を購入する方法もあります。

ここからは、個人投資家が森林投資を始めるための代表的な投資方法を3つ紹介します。

投資方法①上場株式への投資

木材との関わりが深い企業への投資は、間接的な森林投資といえます。国内の投資先は限られますが、現在ではネット証券でも米国株式などの外国株式を取引できるため、世界中の森林関連銘柄にアクセスできます。

ただし、株式は市況の影響を受けやすいため、現物の森林資産と連動した値動きになるとは限りません。オルタナティブ資産として活用したい場合は、投資先の事業領域や運用方針、実績などを確認する必要があります。

投資方法②投資信託への投資

上場株式への投資と同じく、投資信託でも間接的な森林投資が行えます。投資信託は複数の資産を組み合わせて運用する金融商品なので、ひとつの銘柄で分散投資になります。

投資信託の組み入れ資産の内訳は確認し、森林関連の投資先がどの程度の割合になっているのかを把握しておきましょう。森林関連の投資先が少ない場合は、期待したリターンを得にくくなっているかもしれません。

投資方法③ETFへの投資

ETFにも森林関連の銘柄があります。

ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のことで、日本語では「上場投資信託」と呼ばれています。ETFでは、ひとつの銘柄で複数の資産に投資できるので、損失のリスクを抑えやすくなっています。

個人投資家が森林投資を始められる方法は少ない

森林関連の上場株式やファンドは存在するものの、国内では注目されたばかりの市場なので、森林投資の選択肢はそれほど多くありません。現在は成長段階といえるでしょう。SDGsやESG経営に取り組む企業が増えていることを考えれば、今後は関連商品が増えることは十分考えられます。

インフレ対策として森林投資を検討しよう

森林資産は、株式や債券などの値動きとの相関関係が低い傾向にあります。

現在は投資の選択肢が多くありませんが、SDGsやESG投資が広がったことで、今後は国内でもさらに注目される可能性があります。ポートフォリオにオルタナティブ資産を組み込みたいのなら、森林資産も投資の選択肢に入れることを検討してみましょう。

※上記は参考情報であり、特定のファンドや特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。

本サイトの記事は(株)ZUUが情報収集し作成したものです。記事の内容・情報に関しては作成時点のもので、変更の可能性があります。また、一部、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供している記事を掲載している場合があります。 本サイトは特定の商品、株式、投資信託、そのほかの金融商品やサービスなどの勧誘や売買の推奨等を目的としたものではありません。本サイトに掲載されている情報のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当サイトご利用にあたっては、下記サイトポリシーをご確認いただけますようお願いいたします。