勤続3年ちょうどで退職、退職金はもらえる?相場や中小企業での場合を解説

勤続3年ちょうどで退職した場合、退職金はもらえるのでしょうか。退職金の規定は会社によって異なりますが、統計データをもとに相場や勤続年数の目安をご紹介します。退職日が1日違うだけで、退職金が変わることがあります。さらに、退職金には税金がかかることにも注意が必要です。

勤続3年で退職金はもらえるのか?

自己都合による退職の場合の「退職手当の受給に必要な所要年数」の企業数割合は、次の通りです。

1年未満 3.2%
1年以上2年未満 15.0%
2年以上3年未満 9.7%
3年以上4年未満 56.2%
4年以上5年未満 1.6%
5年以上 10.9%

(出典:平成30年就労条件総合調査(厚生労働省))

調査結果を見ると、勤続年数が「3年以上4年未満」から退職金を支給する企業が約6割ということが分かります。そのため、勤続3年ちょうどで退職した場合は、退職金をもらえる可能性があります。

勤続3年でもらえる退職金の相場

次に、勤続3年の退職金の相場を見てみましょう。

<勤続3年・総合職・自己都合退職のケース>

最終学歴・年齢 モデル退職金 モデル退職金の月収換算
大卒(年齢25歳) 32万3,000円 1.3ヵ月分
短大・高専卒(年齢23歳) 32万7,000円 1.5ヵ月分
高卒(年齢21歳) 31万4,000円 1.6ヵ月分

(出典:令和3年賃金事情等総合調査(中央労働委員会))

調査結果を見ると、勤続3年のモデル退職金は約30万円で、月収換算では1.3ヵ月分~1.6ヵ月分だと分かります。

参考までに、勤続年数が長くなった場合のモデル退職金と月収換算もご紹介します。

<総合職・自己都合退職のケース>

勤続年数 大卒 短大・高専卒 高卒
3年 32万3,000円
(1.3ヵ月分)
32万7,000円
(1.5ヵ月分)
31万4,000円
(1.6ヵ月分)
5年 59万4,000円
(2.2ヵ月分)
59万2,000円
(2.5ヵ月分)
52万2,000円
(2.5ヵ月分)
10年 179万9,000円
(5.1ヵ月分)
155万5,000円
(5.3ヵ月分)
137万8,000円
(5.1ヵ月分)
15年 387万3,000円
(9.3ヵ月分)
306万4,000円
(9.1ヵ月分)
289万円
(9.0ヵ月分)
20年 726万5,000円
(14.5ヵ月分)
617万3,000円
(14.4ヵ月分)
557万3,000円
(15.7ヵ月分)
25年 1,143万1,000円
(20.4ヵ月分)
875万2,000円
(22.4ヵ月分)
862万8,000円
(20.5ヵ月分)
30年 1,706万7,000円
(28.8ヵ月分)
1,243万6,000円
(29.4ヵ月分)
1,197万円
(27.0ヵ月分)
35年 2,163万4,000円
(35.3ヵ月分)
1,590万3,000円
(35.6ヵ月分)
1,546万2,000円
(33.8ヵ月分)
大卒38年
短大・高専卒40年
高卒42年
2,269万2,000円
(39.9ヵ月分)
1,243万1,000円
(28.6ヵ月分)
1,678万9,000円
(34.3ヵ月分)

(出典:令和3年賃金事情等総合調査(中央労働委員会))

勤続年数が上がるほど退職金が増え、最終学歴による差が開く傾向がありました。

退職金をもらえない企業もある

退職金の支払いは任意であり、会社にとっての義務ではありません。また、勤続年数などの退職金を支給する要件や退職金の金額も、会社が自由に決められます。そのため、退職金がない企業も存在します。

企業規模別の退職金制度がある企業の割合は次の通りです。

<企業規模別の退職金制度がある企業の割合>

企業規模 退職金制度がある企業の割合
1,000人以上 92.3%
300~999人 91.8%
100~299人 84.9%
30~99人 77.6%

(出典:平成30年就労条件総合調査(厚生労働省))

企業規模が大きくなるほど、退職金制度のある企業が増える傾向にあります。逆に企業規模の少ない、いわゆる中小企業では退職金がないケースの割合が多くなります。業種によっても退職金制度がある企業の割合は変わります。

退職金制度のある企業が多い業種、少ない業種をそれぞれピックアップしてご紹介します。

<退職金制度のある企業の割合が高い業種>

業種 退職金制度がある企業
複合サービス事業 96.1%
鉱業、採石業、砂利採取業 92.3%
電気・ガス・熱供給・水道業 92.2%

(※複合サービス事業とは、郵便局や協同組合のこと)

(出典:平成30年就労条件総合調査(厚生労働省))

<退職金制度のある企業の割合が低い業種>

業種 退職金制度がある企業
宿泊業、飲食サービス業 59.7%
生活関連サービス業、娯楽業 65.3%
サービス業 68.6%

(出典:平成30年就労条件総合調査(厚生労働省))

退職金制度のある企業の割合は業種によって、大きな差があることが分かりました。

退職日が1日違うと退職金が変わることがある

退職金は、勤続年数をもとに計算されることが一般的です。勤続年数は、入社日から退社日までを合計して計算します。ここで注意したいのが、1年未満の端数があるときは、基本的に切り上げて計算するということです。

例えば、4月1日に入社し、3年後の3月31日に退職した場合、勤続年数は3年です。一方で、3年後の4月1日に退職した場合、勤続年数は4年に切り上げて計算することが一般的です。勤続年数によって退職金がもらえなかったり、退職金の支給額が変わったりする可能性があるため、退職日は慎重に決めましょう。

また、勤続年数の計算方法が、会社の規定によって定められていることもあります。必ずしも切り上げて計算するとは限らないため、その点もよく確認しておきましょう。

退職金制度の確認方法

会社の退職金制度は、どのように確認すればいいのでしょうか。代表的な2つの方法をご紹介します。

総務部や人事部に問い合わせる

まずは、総務部や人事部に直接問い合わせて確認する方法です。すぐに問い合わせることができ、分からない点があれば質問できるため、スピーディで確実な方法といえます。

ただし、退職を検討していることを周囲に伝えていない場合は、「退職する気なのでは?」と疑われたり、退職を引き止められたりする可能性があるため、注意しましょう。

就業規則を確認する

会社の就業規則には、退職金制度に関する記載があります。そのため、自分で就業規則を確認すれば、退職金制度について詳しく知ることができます。

就業規則がどこにあるか分からない時は、総務部や人事部に確認しましょう。「就業規則を見たい」と伝えるだけなら、退職を検討していることが周囲に知られてしまう心配はありません。

退職金には所得税・住民税がかかる

退職金には、基本的に所得税・住民税がかかります。ただし、退職金の金額や勤続年数によっては、税金がかからないケースもあります。退職金にかかる税金の計算方法と具体例を見ていきましょう。

所得税・住民税の計算方法

退職金を一時金として受け取った場合は、「退職所得」として扱われ、給与など他の所得とは分けて計算します。退職所得は、次のように計算します。

(退職金の収入-退職所得控除)×1/2=退職所得

退職金から退職所得控除を差し引き、さらに2分の1をかけた上で税金を計算するため、退職金にかかる税金は優遇されていることが分かります。「退職所得控除」は勤続年数によって変わります。計算式は次の通りです。

勤続年数 退職所得控除の計算式
20年以下 40万円×勤続年数
※80万円に満たない場合、80万円
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

(出典:国税庁)

退職所得を計算したら、退職所得に所得税率・住民税率をかけて、所得税・住民税を計算します。なお、2037年12月31日までは、東日本大震災の復興のため、所得税にくわえて復興特別所得税もかかります。

退職所得×所得税率-控除額=所得税
退職所得×住民税率10%=住民税
所得税額×2.1%=復興特別所得税

所得税率は、退職所得の金額によって変わり、退職所得が多いほど高い税率が適用されます。

退職所得 所得税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

(出典:国税庁)

住民税率は、都道府県や市町村によって異なりますが、一律約10%です。

勤続3年で退職金が30万円のケース

次に、勤続3年で退職金が30万円のケースを見てみましょう。まずは、勤続年数が20年以下なので、次の計算式に当てはめて退職所得控除を計算します。

40万円×勤続年数3年=退職所得控除120万円

退職金は30万円で、退職所得控除の範囲内に収まるため、退職所得は0円になります。そのため、このケースでは、退職金に税金はかかりません。

勤続3年で退職金が150万円のケース

退職金が退職所得控除を上回ってしまった場合の計算例を見てみましょう。勤続年数が3年なので、退職所得控除は今回も120万円です。しかし、退職金が退職所得を上回るため、税金がかかることになります。計算式に当てはめて、退職所得を計算します。

(退職金150万円-退職所得控除120万円)×1/2=退職所得15万円

それぞれ税率をかけて、所得税、復興特別所得税、住民税を計算します。

退職所得15万円×所得税率5%=所得税7,500円
所得税7,500円×2.1%=復興特別所得税157円
退職所得15万円×住民税率10%=住民税1万5,000円

税金の合計額は2万2,657円です。退職金は、金額が大きい割に徴収される税金は少なく、退職所得控除による優遇が大きいことが分かります。

退職金を支給された時に必要な手続き

退職金にかかる税金は、基本的に会社が計算して徴収(源泉徴収)してくれるため、自分で計算したり確定申告したりする必要はありません。ただし、会社から渡される「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があります。

もし提出しなかった場合は、退職所得控除を適用できず、高い税率が課される恐れがあるため、注意しましょう。

退職金制度を確認してから退職日を決めよう

退職金制度は会社によって異なるため、まずは就業規則などで退職金規定を確認しましょう。退職金規定を見れば、退職金の金額や支給される勤続年数について知ることができます。

勤続年数の端数は切り上げて計算することが一般的ですが、会社によっては異なるため、この点も注意が必要です。また、退職金がもらえなくなったり、金額が減ったりする可能性もあるため、入社日をよく確認した上で退社日を決めましょう。

退職所得控除が適用できることから、勤続3年で退職金に税金がかかるケースは稀ですが、税金についても知っておく必要があります。また、「退職所得の受給に関する申告書」を渡された時は、速やかに提出してください。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

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