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目次
グローバルなサプライチェーンへの圧力は緩和されつつある:いまだにかなり高水準ではあるものの、中国での納期の改善もあり、世界的に見られるサプライチェーンへの圧力は低下
最近のインフレデータには明るい材料が存在:6月発表の米ヘッドラインインフレ率は上昇したものの、最近のデータにはいくつかの明るい兆候が存在
明るい兆しが見られる中国経済:中国の4-6月期の経済成長は市場予想を下回ったものの、6月には底堅い回復が確認される
①グローバルなサプライチェーンへの圧力の緩和、②下落傾向にあるコモディティ価格、③明るい材料が見られる最近のインフレデータ、④米国の長期の期待インフレの安定化、⑤明るい兆しが見られる中国経済、⑥中国の新型コロナの感染状況は改善、⑦ポジティブ・サプライズの影響の大きさ
以前から本リポートやメディアからのインタビューで述べているように、私は、現在のグローバルな市場環境は過度に悲観的であると感じています。2年前、私たちは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなかにあり、近い将来はおろか、新型コロナに対する有効なワクチンが開発されるかどうかもわからない状態でした。現在、私たちははるかに異なる状況にあります。もちろん、これほど高水準のインフレと、多くの先進国・地域の中央銀行で進行中の積極的な金融引き締めは望ましくないのですが、私たちは2年前よりもはるかに良い環境にいると考えます。
しかし、多くの人がそう感じているわけではなさそうです。世界の多くの地域で、消費者、企業、金融市場が悲観的な見方をしています。このような環境下で楽観的でいられる理由をいくつか挙げてみるのは皆さんの助けになるのではないか、と考えました。本リポートでは、このような環境下でポジティブに考える7つの理由を取り上げます。
供給網のひっ迫状況を示すグローバルサプライチェーン圧力指数から分かるように、依然として非常に高水準ではあるものの、国際的なサプライチェーンに対する圧力や混乱はここ数カ月で低下しています。前月の低下は、主に中国の納期が改善したことによるものです。中国では多くの都市で新型コロナによる厳しい行動制限が解消されたことを考えれば、違和感はありません。これは、少なくとも1つのインフレ圧力が緩和されつつあることを示しています。
依然として高水準にありますが、コモディティ価格も低下しています。S&Pゴールドマン・サックス商品指数は、3月8日に記録した今年のピークから19.92%下落しました 1 。ブルームバーグ商品指数も、6月9日に記録した高値から16.94%下落しています 1 。これも、少なくとももう一つのインフレ圧力が緩和されつつあることを示しています。ちなみに、このことは米国生産者物価指数(PPI)の財価格の上昇も、遅れて緩やかになることを示唆しており、財価格のインフレも近いうちに緩やかになる可能性が高いと考えます。
直近発表された米国のヘッドライン消費者物価指数(CPI)と個人消費支出(PCE)は引き続き上昇しましたが、価格変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIとコアPCEは、上昇幅がわずかに減少しました 2 。先週発表された生産者物価指数(PPI)は市場予想を上回ったものの、次のようなポジティブな材料が見つかっています。サービス分野のPPIは前月比0.4%の上昇にとどまりました 3 。また、7カ月連続で上昇していた中間需要サービスは6月に横ばいとなりました 3 。これらは、サービス分野のインフレが近い将来緩やかになる可能性を示唆しています。
先週のミシガン大学の消費者調査によると、5年先の消費者による期待インフレ率が前月の3.1%から2.8%に低下しました 4 。ニューヨーク連銀の消費者期待調査でも、同様の結果が示されました。同調査では、1年先の消費者によるインフレ期待が上昇した一方、5年先のインフレ期待は低下しています。また、3年先のインフレ期待も5月の3.9%から6月には3.6%と鈍化しました 5 。この2つの調査から、消費者による長期的なインフレ期待は適度にアンカーされている(安定的に維持されている)ことが明らかになったことで、米連邦準備理事会(FRB)は景気後退を招くほどの大幅な金融引き締めを行わないよう後押しされると見込まれます。
具体的には、FRBが次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で1%の利上げを行う可能性は低く、0.75%が適当とみられることを示唆しています。これは、カナダのインフレ期待とは対照的です。カナダ銀行(中央銀行)が最近実施した景況感調査によると、5年先のインフレ期待は1-3月期の3.23%から4-6月期には4%に上昇しており 6 、カナダ銀行が7月の会合で1%の利上げを実施した理由の一つと見込まれます。
中国の4-6月期の国内総生産(GDP)成長率は市場予想を下回りましたが、6月は底堅い回復が確認されました。中国の4-6月期GDP成長率は、オミクロン変異株の感染拡大による厳格な行動制限の影響で前年同期比0.4%増となりました 7 が、6月には行動規制が緩和され、経済成長は広範にわたり回復しています。2022年後半は、景気対策による工業生産やインフラ投資にけん引され、引き続き景気回復が予想されます。
中国では都市封鎖が解除され、経済活動も回復しつつあります。しかし、最近、一部の地域で新規感染者数が増加していることが報告されており、大規模な行動制限が再び課されるのではないかと懸念する声も聞かれます。しかし、中国の新型コロナ政策はこの数カ月、ゼロコロナ政策からダイナミックゼロコロナ政策、ダイナミック・ソーシャル・ゼロコロナ政策へと、感染状況に応じて対応策を変えようとしています。そのことから、大規模な行動制限を再実施する可能性は非常に低いと見込まれます。すなわち、新規感染者数が増加した場合、地理的に大きなエリアではなく、近隣地域などの小さなエリアが封鎖される可能性があるということです。この政策は日々の検査によって支えられており、政策立案者は感染が拡大する前に、感染者の増加に迅速に対応することができます。
株価は大きく下落しており、今後さらに世界の株式市場が下落する可能性はあります。特に、業績予想が下方修正される可能性があることを考えると、下落する可能性は存在します。しかし、私は、株価は底にはるかに近づいていると考えており、今後数カ月のうちに有意義な好材料が現れる可能性があるとみています。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2022-101