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欧州政府が推進する「規制型暗号資産サービス」世界初の暗号資産銀行も登場

暗号資産の世界的な流通に伴い、一部の国の政府は積極的に市場への参入を進めています。

ブロックチェーン技術の可能性に早期から注目していたスイスでは、規制当局から承認を受けた世界初の仮想通貨銀行が誕生しています。欧州政府による暗号資産分野の最新動向をレポートします。

暗号資産の普及促進の狙いは?

暗号資産とは、ブロックチェーンを用いた分散型台帳を利用して、取引を作成・検証・保護する仕組みを持つデジタル資産のことです。

近年、暗号資産は多様化しており、ビットコインに代表される暗号資産からセキュリティトークン(デジタル有価証券)、非代替トークン(NFT)など、さまざまな種類が存在します。また送金や決済、資金調達(ICO)、売買、寄付、融資など、その用途も拡大しています。

一部の国が暗号資産の普及促進に積極的であることの背景には、暗号資産関連の取引を監視下に置くことで金融安定リスクを最小限に留めると同時に、ブロックチェーン技術に秘められた潜在的な金融イノベーションの恩恵を探索する意図があります。

暗号資産の普及を目指す欧州3ヵ国の事例

暗号資産をより安全に、かつ広範囲に普及させる上で、規制当局から承認を得た金融機関が旗手となるとの見方が強まっています。暗号資産の普及を目指す3ヵ国の取り組みを見てみましょう。

1.スイス:世界初の暗号資産銀行が登場

世界初の暗号資産銀行は、2016年に世界で初めてビットコインでの納税システムを確立したことで注目を浴びた、スイスの基礎自治体ツークで誕生しました。

2018年に設立されたセバ銀行(SEBA)は、スイス連邦金融市場監督局(FINMA)から暗号資産の銀行業務および証券ディーラーの許可を得た、世界初の金融機関です。

同行は現在、個人・法人向けに14種類の暗号通貨(ビットコイン、イーサリアムなど)の取引プラットフォームやゴールド(金)に裏付けされたセバゴールドトークン、暗号通貨ファンド、暗号資産セレクトインデックス(ETP)など、幅広い暗号資産サービスを提供しています。

スイスは2019年、FINMAが暗号資産取引に関するマネーロンダリング防止策(AML)のガイドラインを発表しました。これによりFINMAの監督下にある暗号資産サービスプロバイダーには、KYC(Know Your Customer/顧客の身元確認)やウォレットの所有権など、決済取引に必要な情報の確認・提示が義務付けられています。

SBIホールディングスも出資する、チューリッヒのデジタル資産銀行シグナム銀行(Sygnum)もスイス連邦金融市場監督局から同様の許可を取得しており、今後の動向が注目されています。

2.ドイツ:ファンド向け暗号資産法を導入

ドイツは、投資商品を含む暗号資産サービスの提供を金融機関に奨励するための法規制の整備が進んでいます。

2021年7月には、新たな暗号資産法「ファンドロケーション法(Fondsstandortgesetz)」が導入されました。これは「特別ファンド(Spezialfonds)」と呼ばれる期間投資家向けのファンドが、ポートフォリオの最大20%を暗号資産に投資できるようになる制度です。

同国の特別ファンドの運用資産に基づいて試算すると、最大4,150億ドルが暗号資産市場に流入する可能性があります。

銀行協会BdBは伝統的な金融機関を旗手とする理由について、1)顧客資産の保管とリスク管理の経験がある、 2)投資家の保護に取り組んでいる、 3)常に金融監督の管理下にある、と述べています。

既存の暗号資産サービスプロバイダーより信頼性が高く、「暗号資産を利用したマネーロンダリングやテロ資金供与を効果的に防ぐことができる」と期待されています。

現在は国内大手コメルツ銀行が独連邦金融監督庁に、暗号資産業務を行うための許可を申請中です。独連邦金融監督庁はこれまでに暗号資産カストディアンとして25の承認申請を受けており、そのうち4つが承認されています。

3.英国:ステーブルコイン、NFT発行を検討

英国は暗号資産の技術と投資における世界の中心になることを目指すための一環として、ステーブルコインを決済手段として検討する動きが高まっています。

英国の中央銀行であるイングランド銀行の金融政策委員会はステーブルコインを導入する場合、「銀行が保有するものと同様の高品質で流動性の高い資産と損失吸収資本を担保とする必要がある」と述べています。

2022年3月には英国の金融規制当局であるFCA(金融行動監視機構)が暗号資産部門を新設した他、4月には企業のイノベーションを支援する「金融市場インフラストラクチャサンドボックス」の立法や、NFTの試験発行について王立造幣局との提携関係を発表しました。

2022年4月29日現在、王立造幣局が開発するNFTの用途は明らかになっていないものの、早ければ同年夏に発行される可能性があります。

イングランド銀行は現在、銀行による既存のエクスポージャーと将来の暗号通貨計画の調査を進めると同時に、同国初の暗号資産の規制フレームワークの作成にも着手しています。

中国は暗号資産の取り締まりを強化

中国は2018年からビットコインなどの暗号資産への規制を段階的に進め、2021年9月には暗号資産関連事業の全面禁止を発表しました。デジタル形式で資産が移動できるデジタル通貨の存在は、デジタル人民元以外は認めない方針に沿った規制強化です。

また、この規制強化は、デジタル人民元の発行や流通の準備ともいわれています。

米国は暗号資産に対して慎重姿勢

米国には2022年3月、バイデン大統領が暗号資産に関する大統領令に署名しましたが、大統領令には具体的な法案や規制などは含まれておらず、進展には時間を要すると予想されます。

現状は、連邦政府機関に対して、暗号資産規制の起案に向けて調整を行なっているため、いずれ大型の法改正が行われる可能性が高いでしょう。

今後の成果に期待

暗号資産を「新たなイノベーションや経済圏創出のチャンス」と見なすか、あるいは「既存の金融システムの脅威」と見なすか、国によって捉え方はさまざまです。

現在はいずれの国も手探り状態ですが、積極的に普及を促進している国が成果を上げることができれば、多くの国が後に続く可能性は高くなるでしょう。

Wealth Roadでは、今後も各国の暗号資産市場の動向をレポートします。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式や暗号資産の売買及び投資を推奨するものではありません。

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