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株式市場の回復は持続可能か?

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〔要旨〕

世界的に株価が反発:先週は世界の株式市場が大きく反発。その理由は?そして持続するのか?

長期的な見通しは楽観的:短期的にはボラティリティが高まると予想されるものの、長期的には株価の上昇が続くと見込む

投資機会を探る:今後数週間から数カ月、多くの株式市場が底値を打つ中で投資機会を捉え、ドルコスト平均法による購入を開始する時期である

株価リバウンドの原因は?

①米国の中国に対する関税の一部撤廃の報道、②米著名CEOによる米国経済への明るい見通し、③FOMC議事要旨、④米国のインフレがピークアウトした可能性―などが好感され、株価が上昇した模様

株価のリバウンドは持続するのか?

現在は、中国株に対する興味深い投資機会が生じていると見込む

復活を果たす物語は、誰もが好むものです。そして、その中にはより印象的なものがあります。最も偉大な復活を果たした一人は、ウィンストン・チャーチルです。チャーチルが若い頃、海軍大臣として従軍した第一次世界大戦中のガリポリ上陸作戦の失敗などの責任を問われたことを覚えている人は多くないでしょう。チャーチルは大きな批判を浴び、辞任に追い込まれましたが、再度挑戦することにしました。評判を取り戻すのに何年もかかりましたが、最終的に国民に愛され尊敬される首相となり、第二次世界大戦を通じて英国を、そして世界を導きました。

ユリシーズ・グラント(軍隊を辞した後、実業家として借金を抱え、南北戦争の将軍となり、米国大統領に就任しました)やリー・クアンユー(マレーシアとの連邦という、短命に終わった失望の出来事の後、シンガポールを経済的に活気のある大国に導きました)のように、他にも素晴らしい復活の物語がありました。一方で、復活を遂げられなかった物語もあります。フランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトは、亡命先のエルバ島から脱出して帝位に戻ったものの、その治世は約100日間で終わりました。ワーテルローの戦いで英国軍により壊滅的な敗北を喫したことは有名な話です。

このような例を挙げたのは、先週、世界の株式市場で株価が大きく反発したためです。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは、米国株がけん引し、欧州株も力強く反発する中、前週末比で4.6%上昇(現地通貨ベース)しました 1 。また、ナスダック総合指数が6%以上上昇するなど、テクノロジー株が大きく上昇しました 2 。しかし、ここで2つの疑問が生じてきます:1)何が株価反発を誘因したのか? 2)この反発は持続するのか?

株価リバウンドの原因は?

①米国の中国に対する関税の一部撤廃の報道、②米著名CEOによる米国経済への明るい見通し、③FOMC議事要旨、④米国のインフレがピークアウトした可能性―などが好感され、株価が上昇した模様

では、最初の質問から始めましょう。株価上昇の理由を正確に推測するのは難しいのですが、私はさまざまな要因が重なったのだと考えています。先週はじめに、バイデン政権がトランプ前政権による中国製品への関税の一部撤廃を検討しているとのニュースが流れました 3 。関税は米国経済にとって決して好ましいものではなかったと私は考えていますし、インフレの大きな要因とはならないものの、ちりも積もれば山となります。ですから、この報道を受けて投資家心理が改善したと考えます。

そして、ダボスの世界経済フォーラムで、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン、シティグループのジェーン・フレイザー、バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンという3人の著名な最高経営責任者(CEO)が、米国経済は良好で、労働市場はタイトであり、米国は景気後退を回避する可能性が高いと述べました 4 。これが投資家のポジティブな見方を支えたことは確かだと思います。

その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が発表され、ほとんどの市場関係者はこれをハト派的と解釈しました。米連邦準備理事会(FRB)は、金融環境がすでにしっかりと引き締まったことで、自らの強硬な発言が成果を上げたと認識することになりました。議事要旨によると、次の2回の会合でそれぞれ0.50%の利上げを行った後、FRBがその後の利上げの道筋を評価することが明らかとなりました。これは、その後の利上げを積極化させない可能性があることを示唆しています。つまり、FRBは「データに依存」しており、これはFRBが米国経済をソフトランディングに導くために非常に重要だと私は考えています。FRBではよりタカ派的な声があり、例えば、5月初めにクリーブランド連邦銀行のメスター総裁は、9月までにインフレが「鈍化」しなければ、「より速い利上げペースが必要かもしれない」と述べました 5 。しかし、少なくとも現時点では、これは少数派の意見のようです。

また、一部の米国小売企業からは、米国経済について、前回の報告よりも前向きな見解が報告されました。米国の小売企業の中には、顧客の消費が引き続き堅調な企業があるということでしたし、圧力が高まっているにもかかわらず、経営がうまくいっている企業もあることがわかりました。

そして、米国のインフレがピークに達しようとしている、あるいは既にピークに達しているという兆候もでてきました。FRBがインフレ指標として重視する個人消費支出コア価格指数は、4月に前年同月比で4.9%上昇し、前月の5.2%から低下しました 6 。まだ非常に高い水準ではあるものの、正しい方向に向かっていると言えます。

先週株価が上昇したのは米国市場だけではありません。欧州株も上昇しました。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、9月末までにマイナス金利を脱却する公算が大きいとの見解を示しました。また、ユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)速報値も、ロシア・ウクライナ紛争の圧力にもかかわらず、欧州経済がかなり回復していることが示され、投資家心理の改善を後押ししました。

そして、この価格上昇は株式だけではありません。ここ数日、世界の債券市場では利回りの上昇が頭打ちしています。この動きの一部は、中央銀行の利上げはすでにほぼ織り込み済みとの見方によるものです。さらに、多くの債券サブアセットクラスの利回りは、数カ月前よりもはるかに魅力的な水準になっています。

先週、価格が上昇しなかった市場の一つは、過去1カ月のパフォーマンスが好調だった中国株でした 7 。これは、中国の李克強首相の発言への一次的な反応の結果と思われます。李首相は、「就業、工業生産、電力使用量、貨物輸送量などの経済指標は大きく低下しており、一部の分野では、2020年の新型コロナウイルス感染拡大での厳しい経験よりも困難な状況にある 8 」と述べましたが、特に、「就業、工業生産、電力使用量、貨物輸送量などの経済指標は大きく低下している」との発言は、中国株に大きな重しとなりました。投資家は、中国が新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の初期段階で非常に迅速に景気回復を遂げたことを忘れているようですが、私は、中国経済が新型コロナの波によりさらに悪影響を受けることに驚きを感じません。先週の中国株のリターンはマイナスとなりましたが、この1カ月は上昇基調で推移しています。

株価のリバウンドは持続するのか?

現在は、中国株に対する興味深い投資機会が生じていると見込む

では、この株価のリバウンドはチャーチルの復活になるのでしょうか、それともナポレオンの復活になるのでしょうか。つまり、このリバウンドは持続するのでしょうか。今後数週間は株価のボラティリティは高さが続き、もう一段の大幅下落の可能性もあるため、後者になるだろうと私は考えています。また、今週からFRBによる量的引き締め(QT)が始まります。今回は、前回の引き締め局面で見られたような、比較的小規模のバランスシートの縮小ではありません。大規模な量的引き締めであり(私はこれを「TQT」と呼んでいます)、短期的には市場を混乱させる可能性があります。世界の株価が底を打ち、持続的な回復を始めるには、あまりに多くの不確実性が存在すると考えます。

また、欧州首脳が2022年末までにロシア産石油の禁輸で合意に達したとのニュースも流れたばかりです。これは地政学的な観点からはプラスに作用するかもしれませんが、欧州経済には間違いなく悪影響をもたらすでしょう。そして、ロシアが報復として、欧州がより依存している天然ガスの輸出を停止する可能性もあります。そうなれば、世界の株式市場にも悪影響を及ぼすでしょう。

加えて、ロシア・ウクライナ紛争の影響によるコモディティ価格・供給面へのショックや、中国が新型コロナの感染拡大を封じ込めるための厳しい行動制限により、短期的にはサプライチェーンへの圧力が続くことから、インフレが悪化する可能性が残っています。

しかし、長期的に見れば、今回の株価回復はよりチャーチルの復活のようになると思います。(地域による遅れはあるものの)今後数カ月で底値を打てば、世界で株価は力強い上昇を見せ、それが持続するのではないかと私は楽観的に考えています。

つまり、今が投資をはじめる機会であり、機会は十分に存在すると考えます。先週はテクノロジー株について触れましたが、もう一つの投資機会は中国株です。中国株に対する投資家心理は非常にネガティブであり(前述の通りです)、株価バリュエーションは非常に魅力的だと私は考えています。さらに、金融緩和政策と強力な財政出動が続くと予想しています。私の同僚のポール・ジャクソンが最近記述したように、「私は常に、2020年末の中国株への熱狂は行き過ぎだと感じていた。同じように、投資家は現在、過度に慎重になっていると思われる。そのため、今後数十年にわたって世界の株価指数で重要な役割を果たすと思われる中国株への興味深い投資機会が生じたと考える 9 」と思います。目先のカタリストとしては、中国の購買担当者景気指数(PMI)がありますが、行動制限と金融刺激策の緩和を反映して、小幅な回復を示すと予想しています。

つまり、さまざまな株式市場が底を打つ今後数週間から数カ月の間に、株式(そして、債券やオルタナティブ資産も該当します)への投資機会を探し、ドルコスト平均法を始めるべき時だと私は考えています。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

  1. 出所:MSCI、2022年5月27日
  2. 出所:ブルームバーグ、2022年5月27日
  3. 出所:CNBC、“Biden says White House could drop Trump China tariffs to slower consumer prices”、2022年5月10日
  4. 出所:ブルームバーグ・ニュース、“Dimon says ‘storm clouds’ over the US economy may dissipate’、2022年5月23日;フォックス・ビジネス、“Bank of America CEO: US consumer in ‘very good shape,’ makes Fed’s job ‘tougher’、2022年5月26日;CNBC、“Citi CEO Jane Fraser is convinced Europe will fall into a recession”、2022年5月23日
  5. 出所:Marketwatch、“Mester puts 75 basis point rate hike back on table for September”、2022年5月13日
  6. 出所:米国経済分析局、2022年5月27日
  7. 出所:MSCI。MSCIチャイナ・インデックスは、2022年5月27日現在、過去1カ月で4.3%上昇、過去1週間で0.4%下落(現地通貨建て、トータル・リターン)。MSCIチャイナ・インデックスは、中国のH株、B株、レッドチップ、Pチップ、外国上場株(ADRなど)の大型株と中型株の代表的な銘柄を採用。インデックスに直接投資することはできません。
  8. 出所:サウスチャイナ・モーニング・ポスト、“China GDP: economic growth likely to ‘fall far short’, premier admits as crisis concerns mount”、2022年5月26日
  9. 出所:インベスコ、“Uncommon truths: Why I like Chinese equities”、Paul Jackson、2022年5月29日

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