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FRBの不確実性に直面し、対応に苦慮する市場

FRBの不確実性に直面し、対応に苦慮する市場

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〔要旨〕

深まる市場の混乱:市場は、2022年の米連邦準備理事会(FRB)の金融政策が利上げの積極度合いに混乱を深める

その他の主要中央銀行にも不確実性が高まる:金融政策に対する不確実性は他の主要な中央銀行にも存在―自国経済を後退させることなくインフレを抑制することができるのか?

過去を振り返る:過去の経験からは、金融引き締めの終了後の金利は比較的低い水準にとどまる可能性が高い

実験的金融政策の影響

パウエルFRB議長は「0.75%の利上げは積極的に検討していない」と述べ、株式市場と債券市場に混乱とボラティリティをもたらした

市場には不透明感が漂う

各中央銀行が自国経済をソフトランディングに導くためには、データに依存することが重要になる

私は、「量的金融緩和(QE)以前」の債券市場、つまりQEより前の、利回り水準が現在よりも高かった時を覚えている年代ですが、その頃はどのような状況だったでしょうか。1996年当時、新婚だった私たち夫婦は、新居を購入することにしました。地元の銀行(この銀行は、その後、より大きな銀行に何度か買収されました)の融資担当者に会い、プラスチック製の住宅ローン「計算機」を渡されました。それは、金利に応じて1,000米ドル借りるごとに住宅ローンの支払いがいくらになるかを示すスライド式になっており、住宅ローン金利は6%から20%の範囲に設定されていました。この範囲は、当時から数十年前までの住宅ローン金利を反映したものでした。私はその計算機を大事に保管していましたが、金融緩和政策が実施され、住宅ローン金利が6%を大きく下回ると、この計算機は時代遅れになりました。もちろん、クローゼットの奥にしまわれているAラインのワンピースやベルボトムのように、机の引き出しの奥にあるこの計算機も、少なくとも私の子供たちには、役に立つ日が再び来るかもしれません。

実験的金融政策の影響

パウエルFRB議長は「0.75%の利上げは積極的に検討していない」と述べ、株式市場と債券市場に混乱とボラティリティをもたらした

米国の住宅ローン金利は、主要先進国の中央銀行による実験的な金融政策がいかにして金融抑圧を生み出し、世界の多くの債券市場の形を変えたかを示す一例であると思います。多くの経済学者や市場関係者が10年以上にわたって「平常な状態への回帰」を切望してきたにもかかわらず、実際にはそうなりませんでした。確かに、世界金融危機の後、非常に実験的で緩和的な金融政策を主導した米連邦準備理事会(FRB)は、2015年に金融引き締めを開始しましたが、それは遅々として進まず、再び金融緩和を開始するまでにそれほど時間がかかりませんでした。そして今、欧米の主要な中央銀行が再び金融引き締めを開始しており、一部の中央銀行はより積極的な引き締めを実施しています。

市場に強い不安が存在するのは当然と言えるでしょう。私たちは長い間、低金利の環境下にいたため、それに慣れてしまったのです。特に、高インフレに対する不安やFRBの政策に対する混乱が重なると、変化は非常に困難なものとなります。4月における軟調な市場動向は5月に入っても続き、FRBにより生じた混乱がそれを助長しました。5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でのパウエルFRB議長の発言は、非常にタカ派的なトーンで始まりました。パウエル議長は米国の消費者に直接語りかけ、「インフレはあまりにも高すぎる」と強調しました(この発言から、私は「家賃が高すぎる」をスローガンとし、高すぎる家賃の問題にのみ焦点を絞って政党を立ち上げたニューヨークのある政治家を思い出しました)。パウエル議長は、FRBがインフレを低下させる手段を持っており、その手段を使用することを力強く明言しました。また、FRBはインフレリスクに対して「非常に注意を払っている」と繰り返しました。

しかし、記者会見での質疑応答(もちろん、台本がありません)では、パウエル議長の発言はややハト派的なトーンになりました。中立金利をどう考えるかとの質問には、2%から3%と答え、0.75%の利上げは現時点では考えていないと述べました。そして、このことは、株式市場と債券市場に混乱とボラティリティを生じさせました。

市場には不透明感が漂う

各中央銀行が自国経済をソフトランディングに導くためには、データに依存することが重要になる

市場は、FRBの2022年の金融政策がどうなるか、そして利上げにどの程度積極的になるかについて、明らかに混乱しています。このことは、FF金利先物市場から計算される2022年末のフェデラル・ファンド金利の予想が大きく変動していることからも分かります。また、VIX指数が30を超えるなど、株式市場のボラティリティにも反映されています 1

このような不確実性は他の主要な中央銀行にも存在します。各中央銀行は自国経済を後退させることなく、インフレを抑制させることができるでしょうか。私は、各中央銀行が自国経済をソフトランディングに導くためには、データに依存する必要があると考えています。

特に、ユーロ圏と英国では、エネルギーとその他多くのコモディティに由来するショックは米国よりもはるかに大きな問題です。英国では、イングランド銀行(BOE)のベイリー総裁が、景気後退のリスクが高いことを多少示唆するシグナルを発信していますが、これは、金融引き締めには限界があることを言っているようなものです。このため、BOEは主要な中央銀行の中で最もタカ派的な位置から、かなり後退しました。ユーロ圏では、資産購入の縮小は行われるものの、バランスシートの縮小の開始はないと見込まれます。また、ユーロ圏では年央以降に利上げを開始する可能性が高まっていますが、利上げは米国よりも小規模で緩やかなものになりそうです。

結論から言えば、変化とは難しいものです。特に、混乱と不確実性を伴う場合はなおさらです。先週は多くのボラティリティがあったにもかかわらず、S&P500種指数は前週末比ほぼ横ばいであったことは注目に値すると思います 1 。富裕層のファイナンシャル・アドバイザーである私の友人の一人は、顧客から株式を売ってくれという電話の代わりに、保有証券の価格の大きな変動を見なくてもよいように、つまり動揺しなくてよいように、月次報告書から四半期報告書に変えてくれという電話がかかってくる、と言っていました。このような状況では、金融引き締めが終了する際でも金利はまだ比較的低い水準にとどまっている可能性が高い、という過去の経験が役立つと思います。市場が新しい金融政策下の世界を消化するにはまだ時間がかかると考えられるため、この株価のボラティリティと売りの時期がすぐに終わるとは思っていませんが、市場はいずれこの変化に適応していくでしょう。私は、長期投資家にとって、この消化の時期は株式、債券、オルタナティブ資産を購入するよい機会になる可能性があると考えています。

  1. 出所:ブルームバーグ、2022年5月9日時点

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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