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4月に注目すべき主な経済指標

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〔要旨〕

中国の経済指標:都市封鎖の解除と金融・財政支援策により、2022年後半には中国経済の成長が再び加速すると予想

欧州の経済指標:欧州の景況感は弱まっており、経済活動の停滞につながる可能性も

サプライチェーンの混乱:2022年、ニューヨーク連邦銀行はグローバル・サプライチェーン・プレッシャー指数の公表を開始。同指標は、サプライチェーンの逼迫(ひっぱく)度合いを示す

4月に注目すべき経済指標

①中国の製造業・サービス業PMI、②欧州の景況感と設備投資、③エネルギー生産の行方、④グローバル・サプライチェーンの行方、⑤輸送用コンテナ運賃、⑥「高額商品」の購入に関する米国の消費者心理、⑦米国債のイールドカーブ、⑧米国の雇用状況―に注目

まとめ

主要な3資産クラスおよび各資産クラス内の両方で長期的に十分に分散されたポートフォリオを維持することが引き続き重要

世界の多くの場所で経済が再開されていますが、私は出張でクライアントの皆さんと交流する機会に恵まれました。そこで私が受けた質問の1つは、私が最も注視する経済指標は何かというものでした。私は多くの経済指標に注目していますが、本稿では、現時点で特に重要と考えられる指標について触れようと思います。

4月に注目すべき経済指標

中国の経済指標

中国の製造業・サービス業PMI指数に注目

中国経済は、中国全土で見られる都市封鎖(ロックダウン)により、圧力にさらされています。これは、最新の政府版PMIに反映されていますが、3月の中国の製造業PMIは、業況の低下を示す49.5となり、2月の50.2から低下しました 1 。また、サービス業PMIも48.4と、2月の51.2から低下しました 1 。私はこの「落ち込み」は一時的なものと引き続き考えており、最近発表されたゼロコロナ政策の変更によるロックダウンの解除と金融・財政支援策に下支えされ、2022年後半に経済成長が再び加速すると予想しています。経済活動の詳細や経済指標を確認できるサブインデックスを含め、PMIを注視したいと考えています。

欧州の経済指標

欧州では景況感が悪化し、特に民間消費の急激な冷え込みが見られる模様。景況感とともに、設備投資の先行きを注視

私は、欧州はロシア・ウクライナ危機の震源地にあり、ユーロ圏経済が景気後退に陥るリスクが明らかに高まっていると考えます。すでに景況感は弱まっており、経済活動の停滞につながる恐れがあります。ユーロ圏の経済指標をみると、3月の景況感指数は前月から5.4ポイントも低下しました 2 。今後の欧州の経済指標を注視したいと考えます。かなり冷え込んでいると考えられる民間消費は特に注目されます。さらに、ユーロ圏の景気不確実性指数は、3月に大きく上昇(25.8と前月から10.7ポイント上昇)しました 2 。通常、経済の不確実性が高まると、設備投資も減少します。そのため、ユーロ圏のこれらのマインド系の指標と設備投資を注視したいと思います。

エネルギー生産に関連する地政学的リスク

エネルギー供給に関する今後の各国間の交渉の行方に注目

現在、原油と天然ガスの価格は明らかに世界経済に大きな影響を与えており、エコノミストやストラテジストの大きな関心事項となっています。原油価格が1バレルあたり150米ドルを超えるのではないかと懸念する声が多く聞かれていますが、過去、原油価格が長い期間にわたって1バレルあたり100米ドルを超えることはほとんどなかったことに留意することが重要だと考えます。原油価格の上昇は、需要を減少させ、供給が増やす傾向があるのです。

供給を増やす一つの方法は地政学的な交渉によるものであり、私たちはその進展を注視したいと考えています。欧州連合(EU)がロシアからのエネルギー購入停止を決定したり、ロシアがEUへの輸出を拒否したりするなどの地政学上の動きによってエネルギー価格が上昇する可能性がある一方、供給を増やすことでエネルギー価格が下落する可能性もあります。米国などの国々は、短期的には化石燃料の環境への影響にあまり焦点を当てず、化石燃料の増産を認めるかもしれません。米国と欧州諸国は、エネルギー供給を増やすために、イランやベネズエラなどの国に対する制裁を緩和することも考えられます。そして、米国は、過去最大の戦略的石油備蓄の放出を発表しています。

サプライチェーンの混乱

ロシア・ウクライナ危機と中国でのロックダウンの影響を受け、3月には世界のサプライチェーンが再び悪化すると予想

サプライチェーンの混乱は供給に重大な影響を及ぼし、インフレ圧力にも寄与する可能性があります。ロシアがウクライナへ侵攻する前は、世界のサプライチェーンの混乱は一部、改善に向かっていました。現在、サプライチェーンの問題を悪化させているのは、中国での新型コロナウイルスの感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)です。2022年に入り、ニューヨーク連邦銀行は、グローバル・サプライチェーン・プレッシャー指数の公表を開始しました。最新の数値である2月分の計数をみると、2021年12月以降、サプライチェーンの逼迫(ひっぱく)が緩和したことがわかります。しかし、私は、ロシア・ウクライナ危機と中国での新型コロナウイルスによるロックダウンの影響を受け、3月の数値は悪化すると予想しています。

この経済指標により、サプライチェーンがどの程度混乱しているかを把握することができます。これがインフレに影響することは言うまでもありません。とはいえ、同指数は世界のサプライチェーンの「全体像」の評価であり、バルチック海運指数などからの輸送コストと、中国、ユーロ圏、日本、台湾、韓国、英国、米国など、密接に関わり合った主要な経済圏のPMI調査から得られた納期と受注残高などを元に算出されています。また、上記の国々のそれぞれに固有の評価もみることができます。ただ、これらの指標では実際にサプライチェーンに対してどのようなストレスがかかっているかはわからず、その点で限界もあります(そのため、半導体などについての具体的な状況も注視する必要があります。)。

輸送用コンテナ運賃

世界のコンテナ運賃は、数カ月前にピークアウトした模様

サプライチェーンの混乱に加えて、輸送用コンテナ運賃にも細心の注意を払うことが重要でしょう。コンテナ運賃は、人件費(および人手不足)や原油価格などのさまざまな要因を反映しています。また、輸送コストの上昇分は消費者が財に支払う価格に上乗せされることから、インフレ圧力を増大させてしまう可能性があります。私は、フレイトーズ・バルチック指数(Freightos Baltic Index)に注目していますが、これは世界コンテナ運賃指数(Global Container Freight Index)と世界コンテナ指数(World Container Index)、および特定の輸送ルートのコンテナ運賃から計算される指数です。コンテナ運賃は、新型コロナウイルスの世界的な大流行(パンデミック)前よりもはるかに高い水準ではありますが、数カ月前にピークに達してから下落しています 3

「高額商品」の購入に関する米国の消費者心理

米国では高額商品の購入を控える消費者が増加

ミシガン大学は、消費者が現在、高額の家庭用耐久品や自動車を購入するのに適している時期かそうではないかについて、毎月調査しています。ここ数カ月、その指標が大きく低下しており、そのような商品を購入するのには適していないと考える消費者の数が増加しています。これは、必要な場合を除いて、消費者が高額商品の購入を先延ばししていることを意味しており、インフレ圧力を軽減するという点でプラスになる可能性があります。通常、インフレ環境下にある消費者は、将来的に価格が上昇すると予想しているため、商品を予定よりも早く購入します。需要の減少はインフレ圧力の緩和に役立つかもしれません。

米国のインフレ期待

FRBが重視する消費者による長期のインフレ期待は引き続きアンカーされている模様

米連邦準備理事会(FRB)は、長期のインフレ期待が「しっかりとアンカーされたまま(安定的につなぎ止められてる)」であることを確保したいと考えています。もちろん、FRBは、市場によるインフレ期待から、エコノミストや経営者、そして消費者への調査によるインフレ期待まで、さまざまな数値を注視しています。ただし、私は、FRBが最も気にかけているのは、消費者によるインフレ期待であると引き続き考えます。理由は、消費者が米国経済において非常に重要な地位を占めるためです。そのため、ニューヨーク連銀の消費者調査やミシガン大学の消費者調査のインフレ期待、特に長期のインフレ期待は、非常に有用でしょう。現在のところ、ミシガン大学調査による5年先の消費者インフレ期待は高水準ではあるものの、比較的しっかりとアンカーされているようです。ただし、この先、高水準のインフレが続いた場合は、それが変化する可能性があります。

米国債のイールドカーブ

米国10年債と3カ月債のイールドカーブの行方に注目

ご存じのとおり、先週、米国債市場では、10年債と2年債の利回り格差(イールドカーブ)が逆転(逆イールド)しました 4 。これは、市場が米国経済の悪化を予想していることを示している可能性があります。ただし、他の満期の異なる債券のイールドカーブは健全に見えることから、他のイールドカーブのすべてが最終的に逆転するかどうかを確認するために、引き続きイールドカーブを注視する必要があります。特に、過去、一部のエコノミストが景気後退を予測するうえで注目してきたことから、私は10年債と3カ月債のイールドカーブに細心の注意を払いたいと思います。さらに、イールドカーブをみるうえでは、①逆イールドがかなりの期間続かないと景気後退を見通すことはできないこと、➁過去において逆イールドが株式を売却するのに適したシグナルではなかったこと—を理解する必要があります。過去60年間では、10年債と2年債の逆イールドの発生から景気後退が始まるまで、平均して18カ月かかっていました 5

米国の雇用状況

3月の米雇用統計は力強い結果となり、FRBが5月に政策金利を0.5%引き上げる可能性が上昇。ただし、FRBが2022年内に利上げを積極化するわけではないと考える

3月の米雇用統計から、FRBが5月に政策金利を0.5%引き上げる2つの理由を得ることができました。一つは、同統計は雇用創出の強さを示したことです。3月の非農業部門雇用者数は前月比43.1万人の増加と好調で、2月の同指数は75万人に上方修正されました 6 。第2に、平均時給は前月比0.4%増加しました 6

ただし、これは、FRBが2022年により積極的な利上げを実施するとの道筋を示しているわけではありません。私は、米国経済に対する最大のリスクは、FRBが米国を景気後退に陥れるような過度に積極的な姿勢をとることであると引き続き考えます。私は、FRBが米国の景気後退を回避し、データに依存した行動をとることで米国経済を「ソフトランディング」に導くべく、最善を尽くすと考えます。雇用が大きく弱まった場合、FRBが年内の金融引き締め計画を遅らせる可能性があるため、3月に見られた力強さが持続するかどうか、注視する必要があります。逆に、賃金が速いペースで上昇し続けると、FRBは賃金と物価のスパイラル(賃金の上昇は物価の上昇につながり、さらに賃金の上昇を招く)の可能性について懸念するかもしれません。これにより、金融引き締めがさらに積極化する可能性があります。

まとめ

主要な3資産クラスおよび各資産クラス内の両方で長期的に十分に分散されたポートフォリオを維持することが引き続き重要

米国では4月は金融リテラシー月間ですが、金融リテラシーは世界中で重要なトピックです。そしてその一部は、さまざまな市場および経済リポートが投資家である私たちに何を伝えているかを理解することです。本稿で記載した「短いリスト」が、現在の困難な経済環境を理解するのに役立つことを望みます。ただし、これらの経済指標は戦術上の決定に役立つ可能性がありますが、長期的にはほとんど影響がないことを認識しておく必要があります。私は、投資家は、投資目標の達成のために、3つの主要な資産クラスおよび各資産クラス内の両方で長期的に十分に分散されたポートフォリオを維持することに焦点を当てるべきだと考えています。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

  1. 出所:中華人民共和国国家統計局
  2. 出所:欧州委員会、2022年3月30日
  3. 出所:Freightos Data(Freightos Baltic Index: Global Container Freight Index)and Drewry(World Container Index)
  4. 出所:ブルームバーグ
  5. 出所:全米経済研究所、ブルームバーグ、インベスコ
  6. 出所:米国労働省労働統計局、2022年4月1日

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