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目次
要旨
1-2月の中国経済指標は上振れ
1-2月の中国の主要経済指標は市場予想よりも上振れ、景気が安定化しつつあることを強く示唆する内容でした。投資が加速したのに加え、輸出が堅調を維持し、鉱工業生産の伸びも加速しました。
不動産投資と消費の先行きにリスク
ただし、不動産投資と民間消費の先行きについては下振れリスクが存在することには注意が必要です。不動産投資については、1-2月の統計では、住宅の着工面積や販売面積の前年比での減少が続いていたことが明らかになりました。民間消費については、コロナウイルスの新規感染者が3月初めから急増している点が暗い影を投げかけています(図表5)。
「政策主導で回復」との見方に変化なし
それでも、当局による足元でのより積極的な対応を踏まえ、私は、4-6月期中に中国景気のリバウンドが確認され、中国経済は今年後半には5%以上の成長軌道をたどる、という以前からの見方を維持したいと思います。
1-2月の中国経済指標は上振れ
直近の中国景気には強さと弱さが入り交じった動きが生じています。以下では、直近で公表された1-2月分の主要経済指標を踏まえ、中国景気のポイントと今後の注目点やリスクについて考えてみたいと思います。ロシアによるウクライナ侵攻によって商品市況が高騰し、グローバルな景気への悪影響が織り込まれる中、実質GDP成長率が昨年10-12月期に前年同期比で4.0%に低下した中国の景気が浮揚するかどうかは、グローバルな経済環境をみるうえで重要なポイントの一つです。結論から言うと、1-2月の中国の主要経済指標は市場予想よりも上振れ、景気が安定化しつつあることを強く示唆する内容でした。特に強かったのは、投資であり、都市部の固定資産投資の1-2月における伸び(伸び率の計算に際しては前年同期比ベースで算出、以下同様)は12.2%と、2021年11月の-2.2%、12月の2.0%から大きく加速しました(図表1)。1-2月は投資の伸びが製造業で大きく加速したほか、インフラ投資や不動産投資分野でもプラス圏に戻りました(図表2)。インフラ投資の戻りは地方政府がインフラ投資の財源として使用することの多い特別地方債の発行手続きが前倒しされたことが寄与したとみられます。
一方、輸出の伸びは1-2月の合算ベースで16.3%であり、2021年後半ほどの伸びはないものの、なお比較的高い伸びを維持しました。投資や輸出の好調を反映し、1-2月は鉱工業生産の伸び率も7.5%へと高まりました。今年の春節は1月末から始まりましたが、2月4日から北京オリンピックが開催されたこともあり、昨年や一昨年と同様、春節で帰省する人々はコロナ前を大幅に下回っていました。工場で働く人々の中には帰省しなかった人も多く、企業は春節による減産幅を例年よりも抑えることができたとみられます。投資や輸出の好調とともに、この点が鉱工業生産の堅調さに寄与したと考えられます。
不動産投資と消費の先行きにリスク
ただし、不動産投資と民間消費の先行きについては下振れリスクが存在することには注意が必要です。まず、不動産投資については、1-2月の統計では、住宅の着工面積や販売面積の前年比での減少が続いていたことが明らかになりました(図表3)。政府による不動産会社の財務への規制が続く中、大手不動産会社による債券市場での資金調達も従来ほどスムーズにいかない状態が続いています。中国恒大問題による悪影響が残っていることもあり、不動産価格の動きは全体として鈍いままです。政府が公表する不動産投資の伸び率は昨年12月の-11.9%から1-2月には3.7%へとリバウンドしました(図表4)が、着工面積や販売面積のデータとは必ずしも平仄(ひょうそく)がとれていないことから、3月以降に不動産投資の伸びが再びマイナス圏に沈むリスクがあると言えます。
次に、民間消費については、コロナウイルスの新規感染者が3月初めから急増している点が暗い影を投げかけています(図表5)。直近の3月21日における新規感染者数は4,577人(海外からの渡航者を含まない人数。症状が出ている感染者数である2,281人に無症状の感染者数の2,313人を合わせ、前日には無症状であったが当日に症状が出た感染者数の17人を差し引いた人数)と、他の多くの国々よりも感染者数はかなり少ないのですが、中国では「ゼロ・コロナ政策」の下、感染者が出た地域で大規模なロックダウンを実施することから、経済的な影響、特に民間消費への悪影響が出やすくなっています。地域別にみると、中国で32ある省、省級都市、自治区のうち、20の地区において新規感染者が確認されており、3月は民間消費にある程度の悪影響が出るのは避けられません。中国当局は以前よりも経済活動やサプライチェーンの維持に配慮した政策を実行してはいるものの、コロナ感染の拡大に伴って経済への悪影響が想定外に膨らむ可能性があることには注意が必要です。
「政策主導で回復」との見方に変化なし
それでも、当レポートの先々週号(「中国が大規模な財政出動を決定」3月10日号)で触れたように、中国当局は足元で大規模な財政政策を出動させつつある上、金融面での追加的な緩和措置も実施されると見込まれます。さらに、3月16日には、劉鶴副首相が主任を務める国務院金融安定発展委員会において、①金融政策は主動的に対応し、新規融資の適度な伸びを保つこと、➁不動産企業に対して力強く効果的なリスク防止・解消の対応プランを検討すること、➂国務院は資本市場に重大な影響を及ぼす政策についてはすべて金融監督官庁と事前に調整すること―が決定されました。これらの政策は景気や金融市場の安定に寄与すると考えられます。当局による足元でのより積極的な対応を踏まえ、私は、4-6月期中に中国景気のリバウンドが確認され、中国経済は今年後半には5%以上の成長軌道をたどる、という以前からの見方を維持したいと思います。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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MC2022-037