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世界の金融市場を揺さぶる3つの問題

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アイオワ州党員集会、ブレグジット成立後、新型コロナウイルスの状況を注視

〔要旨〕

新型コロナウイルスの感染拡大により、金融市場はリスクオフの展開に

●注視する3つの問題

1.アイオワ州党員集会

2.ブレグジット成立後の貿易交渉

3.新型コロナウイルス

●今後発表される米国経済指標に注目

 —米国の先行指標、FRBの金融政策報告書に注目

新型コロナウイルスの感染拡大により、金融市場はリスクオフの展開に

先週の金融市場は、新型コロナウイルスの恐怖が市場を襲い、リスクオフ一色となりました。株式市場は大幅に下落し、米国10年債利回りは2週間前の1.8%を超える水準から1.51%に、ドイツ10年債利回りは-0.22%から-0.44%にそれぞれ低下しました 1

今週も変動の激しい市場の状況が続くと考えていますが、以下、私が注視している3つの重要な問題について述べたいと思います。

注視する3つの問題

1.アイオワ州党員集会

アイオワ州では、2月3日からの民主党員集会において、民主党の大統領候補者が選別されます。最新の世論調査ではサンダーズ氏の勝利が予想されており、これによる市場の大幅な下落を危惧する声もあります。ただし、この選挙で最終的な候補者が決まるわけではありません。候補者の決定には多くの予備選挙や党員集会が控えていますし、私は今回の民主党の候補者選びは難航すると思います。そして、米大統領の予備選挙は予想外の展開となることが多いため、予備選挙が多く実施される今春にかけて、投資家は金融市場の変動に備えておくべきでしょう。ただし、もしも、急進的な政策を掲げる民主党候補者が指名を受け、最終的に大統領選に勝利したとしても、投資家はパニックに陥るべきではありません。米国政府は、いかなる指導者に対しても強力なモニタリングを実施していくため、経済成長が危険にさらされるような政策に対しては、真剣な対処をするでしょう。

2.ブレグジット成立後の貿易交渉

1月31日金曜日の夜、ボリス・ジョンソン英国首相は、英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)が成立し移行期間に入ったことから、「(英国は)夜明けとともに新たな時代を迎えた。国家としての真の再生と変革の瞬間だ」と表明しました。しかし、英国とEUとの間では、貿易関係をはじめ、安全保障、エネルギー、漁業、データをめぐる問題を11カ月以内に決定すべく、厳しい交渉が待ち構えています。

ジョンソン首相は、移行期間を2020年12月31日以降に延長しない方針としていますが、このためには非常に短い間に多くの難題を解決しなければなりません。EUは、欧州企業との公正な競争を確保するための厳しい要件に英国が同意することを求めているため、英国とEU間の交渉進展は容易ではありません。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は「環境、労働、税制、国家援助に関する公平な競争条件がなければ、世界最大の単一市場(EU)への最良のアクセスを得ることはできない」と述べました。一方、ジョンソン首相は合意なき離脱も辞さないと、強気の姿勢を見せています。

仮に英国がEUから「合意なき離脱」をしたとすると、英国とEUの2021年以降の貿易関係は世界貿易機関(WTO)の条項に従って決定されることになります。それはもちろん、高い関税率やその他の制限を受け入れることを意味するため、両国にとって負担となります。英国政府は、特に英国の製造業者のロビー活動団体から、EUとの貿易関係をすぐにでも明確にするようにとの圧力を受けています。ビジネスの不確実性を回避したいと企業経営者が考えている中、このような圧力は日々強まっていくと思います。

3.新型コロナウイルス

旧正月後、中国の金融市場は3日に取引を再開し、前場では一時、深セン総合指数が-9%、上海総合指数が-8.7%と大きく下落しました 2 。市場再開に先立ち、中国政府は予想通り積極的な行動を見せ、中国当局、省庁、地方自治体の多くは、新型コロナウイルスによる経済への影響を抑制するための政策措置を発表しました。中国政府は、経済的な支援のため、5省庁・規制当局に対する30の措置を発表しました。中国人民銀行(中央銀行)は、レポ市場の公開市場操作を通じて1.2兆元の流動性を市場に供給するとともに、7日物リバースレポ金利を2.5%から2.4%、14日物を2.65%から2.55%にそれぞれ引き下げるという大規模な措置を発表しました 3

足下、新型コロナウイルスは急速に広がっており、感染者数は2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)集団発生時をはるかに上回っています。しかし、明るいニュースとしては、死亡率はSARSやMERS(中東呼吸器症候群)よりもはるかに低いとみられることです。多くの国がウイルスの拡散を封じ込める措置をとっていますが、この感染がどのように収束するのか、現段階では不明です。現状の認識では、新型コロナウイルスが2020年1ー3月期の中国とアジア経済には甚大な影響を及ぼし、4-6月期には若干の改善を見せると予想しています。2003年のSARS発生時と比べ、今回は、新規の症例が1ー3月にピークを迎えるため、足下の四半期でのマイナス影響がより強く出ると予想されます。現在、中国をはじめとする政府の対応がSARS発生時の2003年よりも迅速かつ透明性の高いものとなっていることから、4月以降、新たな感染者数は落ち着くものと見込まれます。新たな感染者数の増加が緩やかになり、米中貿易交渉の第一段階の合意の影響が企業と消費者心理にプラスに作用することで、6月末までには景気が回復し始め、その後さらに力強い回復が確認されると予想しています。株式市場の変動性が高まる一方で、特に中国政府と米連邦準備理事会(FRB)の双方が必要に応じて追加の金融緩和策を行う用意があることを踏まえると、金融市場の回復は経済の回復よりも前に訪れることが予想されます。

今後発表される米国経済指標に注目

米国の先行指標、FRBの金融政策報告書に注目

上記の点に加え、今週発表される経済指標も注意深く見守る必要があります。足下の新型コロナウイルスの伝染を受け、市場参加者は世界経済の成長見通しについて懸念をしている状況です。直近、米国で予想を下回る経済指標が発表されました。例えば、先週金曜日に公表されたシカゴPMI(購買部協会景気指数)は、12月の48.9から42.9に大きく低下しています。さらに、政府による大規模な支援にもかかわらず、米国の農場倒産数が2019年に20%増加したことが明らかになりました 4

来週は、米国の経済指標、特に先行指標の発表に注目したいと考えています。ISM指数、米国とカナダの雇用統計を特に注視します。それ以外では、欧州委員会による経済見通しの発表もあります。そして、私が最も注目しているのは今週金曜日に発表されるFRBの金融政策報告書です(経済や金融の動向、金融政策および予測について、FRBが議会に提出するもの)。FRBは、金融政策レポートで特定のテーマに絞って見解を述べますが、これは現在のFRBの考えを知る良き手がかりとなります。言わずもがな、FRBの金融政策は、現在、市場に影響を及ぼす最大の要因です。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

1.出所:ブルームバーグL.P.、2020年1月31日。
2.出所:ブルームバーグL.P.、2020年1月31日。
3.出所:ロイター、2020年2月2日。
4.出所:シカゴ購買部協会、2020年1月31日。

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