Meta(旧Facebook)やMicrosoftなどの大手の市場参入で話題を呼んでいるメタバース。ビル・ゲイツ氏が「2~3年以内にほとんどのオフォス会議はメタバース内で実施されるようになるだろう」と予想したことでも、注目を浴びています。投資の観点から、その将来性を考察します。
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大手参入でビジネスツールとしての利用も急加速
「Meta(超越した)」と「Universe(宇宙・世界・人類)」を組み合わせた造語であるメタバースとは、インターネット上に構築された3次元仮想空間のことです。ユーザーはアバターを自分の分身として操作し、他の参加者と交流したりイベントに参加したり、現実の世界では不可能な冒険を楽しんだりすることができます。
近年は大手の参入により、ビジネスツールとしての利用も急速に加速しています。
2021年10月に社名をMeta(メタ)に変更したFacebookは、メタバース内で複数のユーザーが共同で作業できる仮想オフィス「Horizon Workrooms(ホライゾン・ワークルーム)」のベータ版を公開しています。
一方、Microsoftはメタバース・コラボレーションプラットフォーム「Mesh for Teams」を2022年に発表する予定です。これは既存のコラボレーションプラットフォーム「Microsoft Teams」と、2021年3月のイベントで発表したMR(複合現実)プラットフォーム「Microsoft Mesh」を融合させたもので、WEBカメラの代わりにアバターを利用して、仮想空間でコミュニケーションを図るというものです。Teamsの機能を利用できるため、仮想オフィスやカフェでパワーポイントを使ってプレゼンテーションを行うといったことも可能です。
両社は現実と仮想空間を融合させるツールであるXR(クロスリアリティ)ヘッドギアを、エンターテイメント以外の領域で普及させる動きも見せています。
また、公式には発表されていませんが、Appleがメタバース関連のヘッドギアやウェアラブルを市場に投入する可能性や、GoogleがAR事業を強化している可能性なども報じられています。
投資対象としての将来性は?
多様な領域への活用が期待されているメタバースですが、投資対象として有望かどうかは気になるところです。ポイントを挙げてみましょう。
リモートワークからメタバースワークへ?
リモートワークやオンラインレッスンなど、遠隔で仕事をしたり学んだりすることが一般的になった現在、メタバースはよりリアルな体験ができる次世代コミュニケーションツールとして有望視されています。
近い将来、仮想空間で仕事や勉強をする、ショッピングを楽しむ、診察や治療、各種サービスを受けるといった環境になるかもしれません。
900兆円規模の経済圏が構築される?
現在期待されているポテンシャルのひとつが、暗号資産との組み合わせによる経済効果です。
例えば、商品やサービスの売買、イベント等の開催など、現実の世界で行われている消費活動をメタバースで行うことも可能です。
デジタル資産の価値や所有権を証明するNFT(非代替性トークン)を活用するという構想が注目されており、今後さまざまな資産がメタバース内で取引されると予想されています。NFTはブロックチェーン上で発行されるトークンで、主にアート作品などのデジタルコンテンツやゲームのアイテムの売買などに利用されています。
XRなどの周辺機器やサービス市場の急成長も予想されます。普及に伴い、現在は想像もつかないような革新的な商品やサービスが生まれる可能性もあるでしょう。
このような期待材料から、モルガン・スタンレーは「メタバース関連市場が8兆ドル(約917兆5,204億円)規模に成長する」と予想しています。
メタバース金融商品の増加
メタバースに関連する金融商品の増加も予想されます。
すでにカナダの資産運用企業エヴォルヴファンズ(Evolve Funds)が『Evolve Metaverse ETF(上場投資信託)』を、ホライゾンETFマネージメントが『GLOBAL METAVERSE INDEX ETF』をトロント証券取引所で販売しており、米資産運用企業プロシェアーズ(ProShares)はメタバースに特化したETFの承認をSEC(米国証券取引委員会)に申請しています。
「ネット依存症」や「環境整備」が課題
普及に向けて解決が必要な課題もあります。現時点では、以下のような問題が指摘されています。
インターネット依存による弊害
インターネットが日常生活に欠かせないツールとなった現在、過剰利用による運動不足や睡眠障害、体力・視力低下といった健康への悪影響、インターネットに起因する犯罪や事件の増加、現実の世界におけるコミュニケーション不足などのマイナス面が問題視されています。
米ビジネスソリューションサービスのティディオ(Tidio)が2021年12月に実施した調査では、回答者1,050人中77%が「メタバースは社会に深刻な悪影響を及ぼす」との懸念を示しました。具体的には「仮想世界への依存症(46%)」「プライバシー問題の急増(41%)」「メンタルヘルスへの影響(41%)」が懸念されています。
セキュリティ面の脅威
ユーザーが安全にメタバースを利用するためには、セキュリティの向上や規制環境の整備が不可欠です。
起こり得る脅威として、IDやパスワードを含む「個人情報の漏洩」やアバターの「なりすまし・乗っ取り」「データの改ざん」「身元の隠蔽」「サービス拒否攻撃」などが挙げられます。
いずれも既存のインターネットサービスで頻繁に発生している問題であり、メタバースではさらに増えることが懸念されます。電子商取引やプライバシーの保護などを巡る規制や、法整備も必要になるでしょう。
「生活に欠かせない存在」に成長するポテンシャルあり?
試験段階ということもあり、現在メタバースは「次世代SNS」と位置づけられているようです。しかし、実用化が進むにつれて活用の幅が広がり、生活に欠かせない存在へと成長するポテンシャルを秘めています。Wealth Roadでは引き続き、メタバース市場のポテンシャルをレポートします。
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。