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新型コロナウイルスの市場への影響

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2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)との違いを考察

〔要旨〕

新型コロナウイルスの感染拡大により、金融市場の緊張が高まる

●何が起きているのか?

 —米国、フランス、オーストラリアなどでも感染が確認

●市場の反応は?

 —香港ハンセン指数の下落など、市場はネガティブに反応

●投資へのインプリケーションは?

 —SARS発生時は短期間で終息したものの、経済に与えた影響は甚大

●現状に対する当社の見通しは?

 —新型ウイルスは潜伏期間が長いため、その追跡や隔離が難しい特徴

 —一方で、中国政府や医療関係者の対応は過去よりはるかに改善

 —現在の中国経済は消費活動への依存度が高く、航空や観光産業への影響の拡大を懸念

●今日の経済と2003年の経済との違いは?

 —リスクオフの展開が予想される中で、いくつかの経済の前提に違いがみられる

●今後の市場動向は?

 —感染が終息すれば、米中貿易協定の合意などより投資や消費の改善を見込む

●以上を踏まえた当社の投資戦略は?

 —長期的な視点を持つ投資家は現在のポートフォリオを維持すべきと考える

●当社の見方に対するリスク要因の整理

 —中央銀行がリスク資産を支えている現状下、状況が改善する場合、かなり速いスピードでの株価の反発が見込まれる

新型コロナウイルスによる感染の拡大により、金融市場の緊張が高まる

中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる感染が中国のみならず世界にも拡大する中、金融市場においても緊張の高まりが見られます。私たちは、新型コロナウイルスの投資家に与える潜在的な影響と、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)などの過去の感染症の拡大時と比較した経済的影響について、お客様から多くの質問を受けています。以下、現時点で得られている情報をもとに、私たちの見解を述べたいと思います。

何が起きているのか?

米国、フランス、オーストラリアなどでも感染が確認

足下、新型コロナウイルスの拡散を防ぐため、約3,000万人が居住する中国10都市が封鎖されています 1 。新型肺炎の広がりは、2003年のSARSのように速く、人々は警戒を強めています。最初の症例の報告から5週間後の先週には、世界で2,600人以上が新型コロナウイルスに感染し56人が死亡する 2 など、感染者数は増え続けています。現在、米国、フランス、オーストラリア、日本、マレーシア、ネパール、ベトナム、シンガポール、韓国、中国で感染が確認されています。

市場の反応は?

香港ハンセン指数の下落など、市場はネガティブに反応

世界の金融市場は、新型コロナウイルスの患者数や死亡者数の増加を懸念しています。先週、中国当局が新型コロナウイルスのヒトからヒトへの感染を発表したことを受けて、香港ハンセン指数は2.8%下落しました 3

旧正月には数億人の中国人が旅行に出かけるため、今後数週間で新型肺炎が世界的な大流行となる恐れがあることが懸念されています。良いニュースは、中国政府が旧正月中の旅行を禁止し、旧正月を祝う公式イベントの多くをキャンセルすることにより、状況を改善しようとしていることです。ただし、旧正月終了後から1週間は旅行客が多く、新型ウイルスの潜伏期間が10日以上程度とみなされていることから、少なくとも2月中旬までは新たな感染例の報告が続く可能性があり、中国、アジア全体、おそらくは世界の2020年1-3月期の経済成長の鈍化と、それが金融市場に及ぼす影響が不安視されています。

投資へのインプリケーションは?

SARS発生時は短期間で終息したものの、経済に与えた影響は甚大

過去、予期せぬ感染症の拡大は、経済や市場を大きく揺さぶりました。例えば、2003年のSARSの発生時は、経済や市場に与えた影響は大きなものでした。ただし、それは比較的短期間で終息したことも事実でした。

SARSは動物由来の感染症で、中国の広東省南部で発生し、終息まで約6カ月かかりました。29カ国で8,096人が感染し、774人が死亡しました 4 。SARSは、特に観光、飲食、小売、航空、カジノ、不動産業界においてアジア経済に著しいダメージを与えました。SARSにより、2003年GDP成長率(前年比)は中国が-1.0%、香港経済は-2.5%まで落ち込みました 5

突如とした感染症流行の金融市場への影響は、実際の社会への影響よりもかなり大きいことがあります。米国および世界のインフルエンザによる年間死亡者数は、それぞれ平均で約56,000人および646,000人とSARSをはるかに上回りますが、毎年予期されているためか、金融市場にあまり大きな影響を与えません。対して、予期せぬSARSへの市場の動揺は、大変に大きなものでした 6

現状に対する当社の見通しは?

新型コロナウイルスとSARSには感染経路に類似性がありますが、新型コロナウイルスがSARSよりも伝染性や致死率が高いことを示す証拠は現在のところありません。

新型ウイルスの潜伏期間は長いことから、追跡や隔離が難しい特徴

不安要素としては、新型コロナウイルスの潜伏期間が大幅に長い可能性が挙げられます。SARSの潜伏期間は2~7日でしたが、新型コロナウイルスは約10日とも、14日ともいわれています。加えて、中国の保健当局は、新型コロナウイルスによる肺炎がまだ発症していない人々によっても広がる可能性を示唆しており、追跡、隔離、そして最終的な封じ込みが複雑になりそうです。

一方で、中国政府や医療関係者の対応は過去よりはるかに改善

明るいニュースとしては、新型コロナウイルスに対する中国政府の対応が、過去よりはるかに優れていることです。例えば、SARS発生時、中国政府は世界保健機関(WHO)による調査を阻止しようと試み、何カ月もの間、謎の病気を報道しようとするメディアの活動を抑制しました。今回、中国当局者はより透明かつ積極的に行動しました。当局はすでに新型コロナウイルスのゲノムを公表しており、中国共産党は、感染を隠そうとするすべての公務員は中国人や共産党にとって「天下の大罪人」とみなされると宣言しました。

また、中国の医療関係者のウイルスの集団感染への対応は、(SARS発生後から)過去17年間で非常に改善されています。より透明性の高いコミュニケーション、より優れた公共の備え、および医療サービスの向上により、新型肺炎はSARSに要した6カ月よりも速く終息するだろうと主張する声があります。

さらに、中国は海外渡航を制限していると報告されており、これはウイルスの地理的拡散を抑制または少なくとも減少させ、大流行を阻止する一助となると見込まれます。経済的な観点では、都市を隔離し、旅行を制限するという厳格な措置は、サービス活動と地域の消費者の信頼感に即ちに影響を与える可能性があります。しかし、病気の広がりを抑え込むことは、経済活動には最終的にプラスです。

現在の中国経済は消費活動への依存度が高く、航空や観光産業への影響の拡大を懸念

新型コロナウイルスによる経済的な影響は、感染の規模および地理的条件、ならびに中国や他国の当局の封じ込め政策の有効性といった様々な要因に依存するため、定量化するのは非常に困難です。ただ、今日の中国経済は、SARS発生時の2003年よりも消費活動への依存度が高いことから、新型コロナウイルスの影響を大きく受ける可能性を考えておく必要があります。

旧正月時に新型コロナウイルスが拡散するとの懸念から、中国の航空や観光産業は悪影響を受けており、ウイルスが広がるにつれてさらに状況が悪化するのは明らかでしょう。2003年3月にSARSがシンガポールで流行した当時、人々はパニックに陥りました。感染を避けるために人々はショッピングセンターに出かけるのを控え、SARSの最新状況を確認するため常にテレビを観ていました。また、SARSの広がりを恐れ、食品やその他の必要品の購入を増やし、それ以外の購入は控えました。電車やバスの使用を避け、タクシーに長い行列ができました。幸いにも、パニックは数週間で終わり、人々の生活は正常化しました。

今日の経済と2003年の経済との違いは?

消費活動の停滞から市場もリスクオフの強まりを予想

SARSの経験から、新型コロナウイルスにより(必需品の購入を除く)消費活動が大きく落ち込み、事業活動も停滞すると予想されることから、市場でもリスクオフ姿勢が強まる可能性が高いと考えられます。マクロ経済と市場の反応を考える上では、現在と2003年当時の中国経済と世界経済の構造の違いを考慮することが有用でしょう。

■今日、中国のアウトバウンド観光は、2003年よりもはるかにアジアと世界全体を左右する大きな要因です。実際、中国は経済活動の源を、製造業と純貿易から消費・サービスへと大きく移行してきました。

■2003年は、中国人民元は米ドルに固定され、アジア新興国の多くは為替レートの管理を行っていました。今日の為替レートは、アジア諸国の多くで実質的な変動為替制を採用しているため、それらの為替レートが下落する可能性があります。

■2003年の世界経済は、ほとんどの主要先進国と新興国が景気サイクルの初期の段階にありましたし、貿易と投資など世界的な結びつきがより強くなっていく展望が描ける時期でした。これは、市場下落への下支え要因であったと考えられます。対して、現在の世界経済は生産・投資・貿易などが減速基調であり、新型肺炎の流行の加速が世界経済の成長率をさらに圧迫する恐れがあります。

■金融政策については、2003年と現在で大きな違いが見られます。2003年は金融緩和の環境下で、更なる利下げ余地が残っていました。しかし、現在は、金利がゼロ近辺かゼロ以下で、更なる金融緩和の余地は限られていると考えられます。

■リスク資産のバリュエーションについて、足下は2003年より割高と言えるでしょう。FRBをはじめとする主要な中央銀行の金融緩和によってリスク資産価格は押し上げられ、直近では米中貿易交渉の第一段階の合意が好感されたことにより、米国をはじめとする多くのリスク資産の割高感が指摘されています。

今後の市場動向は?

感染が収束すれば、米中貿易協定の合意などにより投資や消費は改善すると見込む

中国をはじめとするアジア市場で株価の下落が続き、世界的にも株価は軟調に推移すると予想しています。また、石油価格の下落、金価格の上昇、米ドル安/円高が予想されます。

ウイルスがさらに拡散することで、市場はさらなるダウンサイド・リスクに直面するとみられます。しかし、新型コロナウイルスの封じ込めが成功すれば、状況は正常化し、金融市場は安定する見込みです。

私たちの基本的な考えは、新型コロナウイルスが経済のファンダメンタルズを変える可能性は低い、というものです。直近、Societe Generaleは、新型コロナウイルスの広がりが3月までに沈静化しない場合、2020年1-3月期の中国のGDP成長率が6%(年率換算)を下回る可能性があるとのネガティブなレポートを発表しました 7 。しかし、感染の状況がいったん落ち着けば、米中貿易交渉の第一段階の合意により消費者・企業心理や支出の改善が見込まれることから、GDP成長率の大幅な改善が期待できると考えています。新型コロナウイルスの広がりによってこの回復は遅れるものの、いずれは投資や消費などの支出面の改善が確認されるようになると思われるため、足下の状況を過度に懸念する必要はないと考えています。

以上を踏まえた当社の投資戦略は?

長期的な視点を持つ投資家は現在のポートフォリオを維持すべきと考える

新型コロナウイルスの影響が心配な投資家は、リスク許容度と投資目標などを財務アドバイザーと相談したほうがよいでしょう。しかし、過去、感染症の広がりへの恐怖と市場への影響が非常に短期間であったことを踏まえると、長期的な視点を持つ投資家は、自身の現在のポートフォリオのアロケーションを維持するべきと考えます。

短期的な視点を持つ投資家は、金、米国債、低ボラティリティ・エクイティ・ファクター戦略といった「安全な逃避先」をみなされる資産クラスに資金を移すべきかアドバイスを受けることを望むかもしれません。

当社の見方に対するリスク要因の整理

中央銀行がリスク資産を支えている現状下、状況が改善する場合、かなり速いスピードでの株価の反発を見込む

私たちは、感染症の流行が市場に及ぼす影響を、過去の事例から学ぶことができます。以前の感染症の流行に対する私たちの理解は、以下の通りです:

1.通常、最初の集団発生時には懸念はそれほど高くなく、相対的な安心感があります。市場は緩やかに下落します。

2.いったん、感染が広がり大流行が懸念されると、パニックに陥ります。これは、米国と欧州に流行が広がったときによく起こります。市場は感染の拡大をより深刻にとらえ、大幅な下落が起きます。特に、航空会社、船舶、旅行会社や石油といった旅行やレジャー関連の株価の下落が典型的です。金や米国債などの「逃避資産」の価格が好調に推移し、経済的な影響が懸念されます。

3.当局が病気の広がりを封じ込めるにつれて経済活動は正常化し、市場は回復します。

現在、フェーズ1が終了し、フェーズ2に入ったかのようです(状況の悪化を仮定しています)。

株式市場が非常に強い上昇を遂げてきた現在、新型コロナウイルスの一連のニュースは、株価修正のきっかけとなるかもしれません。最悪の場合、世界の株式が10%~20%下落する可能性も考えられますので、私たちは新型コロナウイルスの動向を注視したいと思います。政府当局が新型コロナウイルスの拡散を遅らせ、状況を安定化させることができなければ、拡散期間が長くなればなるほど、新型コロナウイルスが経済や市場に与える影響は大きくなります。しかし、金融緩和的な政策を維持する中央銀行がリスク資産を支えている現状を考えると、状況が改善する場合、かなり速いスピードでの株価の反発が見込まれると考えています。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

1.出所:AP通信、“China expands lockdown against virus、fast-tracks hospital”、2020年1月24日。
2.出所:AP通信、“China expands lockdown against virus、fast-tracks hospital”、2020年1月24日。
3.出所:サウスチャイナ・モーニング・ポスト、“Hong Kong and China markets rebound as investors make most of Wuhan coronavirus-led declines to increase positions”、2020年1月22日。
4.出所:米国疾病予防管理センター、“SARS (10 Years After)” 。
5.出所:国立生物工学情報センター。
6.出所:米国疾病予防管理センター、MedicineNet.com。
7.出所:ウォール・ストリート・ジャーナル、“Deadly Infection Keeps Chinese Consumers From Spending”、2020年1月26日。

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MC2020-010