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不透明さはあるものの、ファンダメンタルズは多くの債券市場で堅調さを維持する公算

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●クレジット関連資産が好調に推移した2019年に引き続き、2020年も、投資適格社債は好調な幕開けが予想されます。
●好調な需給要因と人口動態面の有利さは、2020年のハイ・イールド債券が引き続き魅力的な存在であることを示しています。
●中国の成長は、貿易をめぐる不透明感の中で減速の兆しを見せていますが、中国の発行体のクレジット指標はおおむね依然として堅調で、企業のデフォルト・リスクも低い水準にとどまるでしょう。

マクロ環境

世界の経済成長は現在の予想を上回るだろうと考えています。欧州と中国では景気が底打ちし、米国の成長は、勢いには欠けるものの、米連邦準備理事会(FRB)の緩和的な金融政策によって下支えされるでしょう。米国は2020年中に潜在成長率並みの2%成長に戻ると見込まれます。財政政策が景気を大幅に押し上げるとは予想できないため、経済成長のほとんどは消費の増加に依存していることになります。消費を支えるには、安定した金融環境が必要になると考えられます。

ここ数カ月間に、世界中の中央銀行が大幅な金融緩和に踏み出しました。FRBは7月以降で3回の利下げを行い、経済指標の弱含みが続くようであれば、さらに利下げする可能性があります。FRBはまた、短期金融市場における資金不足(と、それによる金利の急騰)を防ぐという技術的理由から、バランスシートを再び拡大し始めました。欧州中央銀行(ECB)も金融緩和を進めており、量的緩和プログラムを再開しました。中国は財政政策を緩和しましたが、金融政策による景気刺激はより抑制されたものとなっています。FRBは、世界的な成長鈍化による景気の弱さに対処し、金融市場が自信を失って急落することを防ぐために、適切な緩和措置を執り続けなければならないでしょう。米国のレポ市場を安定させるためにバランスシートをさらに拡大させる可能性もあります。

世界の主要金利は上昇し、適正水準に戻ると予想しています。ただし、インフレ率が大幅に上昇しない限り(その可能性は低いと考えていますが)、その適正水準を超えて金利上昇が続くことはないでしょう。米ドルは、世界的な景気の底入れと、米国の金融緩和により、弱含むと見込まれます。不確実性は残っているものの、貿易摩擦が解消するようであれば、それも米ドル安圧力となりえます。ほとんどの先進国通貨と新興国通貨は米ドルに対して上昇が予想されます。

欧州債券

ユーロ圏経済は、2019年の成長率が1.9%から1%前後に半減する見通しです。米国と中国の貿易戦争の激化から「取引なし」のブレグジット(英国の欧州連合(EU)離脱)リスク、欧州の自動車に対する米国の追加関税の可能性に至るまで、さまざまな脅威が欧州の貿易の減退と産業界の信頼感悪化の主な原因となってきました。

2020年は、この貿易の低迷と事業環境をめぐる不透明感の高まりという悪循環が、これまでのところは堅調な労働市場と消費者・サービス部門に波及する可能性が懸念されます。同年の実質国内総生産(GDP)成長率は1%程度と、引き続き潜在成長率を下回る見通しです。

ECBの新たな大規模な緩和策は、多少の支援にはなるでしょうが、貿易やブレグジットをめぐる不透明感、内外ともに不安定な政治などが2020年もおそらく続きうる中で、ユーロ圏の景気拡大を伸長させ、投資の信頼感を回復させるには不十分でしょう。

2020年のユーロ圏の注目点は、金融政策から財政出動や構造改革にシフトするだろうと予想されます。しかし、危機が起きていない中での大規模な取り組みは、構造改革にせよ、財政出動にせよ、ユーロ圏では難しいでしょう。

英国についてはかなり不安定な状況が見られるかも知れませんが、2020年の他市場と比べたリスクのバランスは、英ポンドや英国債利回りは上昇方向、英国社債についてはクレジットスプレッドが縮小方向にあると考えています。

総じて、貿易摩擦の極端な高まりや合意なきブレグジットのサプライズがなければ、2020年のユーロ圏経済は1%前後の安定したペースでの成長が予想されています。企業部門は引き続き足かせとなるでしょうが、ECBの積極的な金融緩和、雇用やインフレに関する現在の明るい見通しが、ユーロ圏経済の恩恵となるでしょう。ブレグジットをめぐる前進や世界的な貿易の不透明感の減退は、いかなるものであっても、製造業部門に大きな恩恵をもたらし、企業の心理や投資を大幅に改善するだろうと予想されます。現在のところは、こうした前向きな展開はすぐには起こりそうにないですが、2020年後半には可能性があるのではないかと私たちは考えています。

「総じて、貿易摩擦の極端な高まりや合意なきブレグジットのサプライズがなければ、2020年のユーロ圏経済は1%前後の安定したペースでの成長が予想されます。」

投資適格社債

2017年以降、低下トレンドにある先進国の経済成長率は、2020年には低水準ではあるものの、プラスの水準で安定すると見込まれます。各国の中央銀行が、利下げを実施してきているほか、バランスシートの拡大を約束することで、低成長が景気の停滞に発展することを防ぎ、景気拡大を持続させようとしています。世界的な利回りの低下により、新たな「サーチフォーイールド」(利回り追求)が発生し、クレジットスプレッドの縮小や、マイナス金利政策の恩恵についての懸念につながってきました。

クレジット関連資産が好調に推移した2019年に引き続き、2020年も、投資適格社債は好調な幕開けが予想されます。①内外の著名な投資家からの需要、②企業のレバレッジ削減、③中央銀行の購入を受けた民間投資家の購入分減少の可能性―などが組み合わさり、投資適格社債の好需給につながっています。ユーロ建ての投資適格社債は、ECBの新たな債券購入策の恩恵を受けると考えられます。米ドル建ての投資適格社債も、規模は小さいものの、FRBの債券購入策の効果が期待できるうえ、FRBが利下げを続けるようであれば、為替ヘッジコストの低下による海外投資家の需要から、さらなる恩恵が考えられます。

ファンダメンタルズ面では、発行体企業のレバレッジ削減への意欲が見られます。これは、自社株の買い戻しや増配といった株主還元策や、M&A(買収・合併)活動が数年間、活発に行われた後の2018年後半に始まりました。

私たちは、ファンダメンタルズの観点から企業のクレジットをプラスに評価しており、中央銀行の流動性もクレジット市場に恩恵をもたらすだろうと予想しています。また、社債が同年限のソブリン債を上回るパフォーマンスを上げることを期待しています。景気サイクルが進展していることを踏まえると、2020年は、慎重なクレジット分析に根差したセクター配分と個別銘柄選択が極めて重要になると引き続き考えています。

「私たちは、ファンダメンタルズの観点から企業のクレジットをプラスに評価しており、中央銀行の流動性もクレジット市場に恩恵をもたらすだろうと予想しています。」

ハイ・イールド債券

貿易摩擦が世界的に不透明な経済環境に結びついていることから、一部企業が設備投資を削減し、それが米国やユーロ圏、アジアのGDP予想の引き下げにつながってきました。経済成長の鈍化に対する市場の懸念にもかかわらず、緩やかな成長環境の中で、ハイ・イールド債券は歴史的に見れば堅調に推移しています。市場では、企業収益が当面のピークを過ぎたと心配する向きもあるものの、ファンダメンタルズ全体は、企業がフリーキャッシュフローを生み出してレバレッジを削減するのに十分なほど強いと私たちは考えています。

一般に、レバレッジの削減はデフォルト・リスクの低下を意味し、クレジット・スプレッドを縮小させることになります。通常、ハイ・イールド債券がマイナス・リターンとなるのは、景気後退によって企業の収益が悪化し、デフォルトが増加する場合です。しかし、FRBとECBが金融緩和によって景気拡大を長期化させたため、今日はこのような環境にあるとは考えられません。彼らの行動はクレジット市場に恩恵をもたらし、多くの企業にレバレッジを削減する機会を提供しました。世界中で金利が低下している状況は、マイナスに作用する場合もありうるものの、投資家の資金を、低金利・マイナス金利の債券から、ハイ・イールド債券のような高利回りの債券にシフトさせてきました。多くのハイ・イールド債券は、固定のクーポンと複数年のコール・プロテクションを提供しており、投資家は、おおむね予想可能な金利収入とデュレーション効果からの恩恵を得ることができます。

歴史的に、景気後退はハイ・イールド債券にとってマイナスであることが実証されていますが、世界経済全体の健全性、FRBとECBによる金融政策面の支援、そして多くのハイ・イールド債券発行体企業の依然として健全なファンダメンタルズなどを踏まえると、懸念材料が早期に現実のものになるとは思えません。好調な需給要因と人口動態面の有利さ(高齢者のインカムへのニーズの増大)を背景に、2020年のハイ・イールド債券は、個人投資家と機関投資家の双方に、引き続き活発で魅力的な相対的価値を提供する見込みです。

新興国債券

2020年の新興国債券は、横比較の分析が機能するとみています。先進国と新興国の双方における金融緩和や、世界的な利回り追求の流れの持続が新興国債券の追い風になるだろうと考えています。域内のファンダメンタルズでは、健全なバランスシートと消費者の資産効果の恩恵が、大国を中心に新興国経済の支援材料となると期待されます。特に、財政の支援を得られるようであれば、徐々に自律的な回復が定着する可能性があります。一方で課題はといえば、主に貿易面の不透明さによるものであり、既に悪影響が見られますが、世界の企業心理や設備投資を圧迫する状況は今後も続くでしょう。貿易摩擦が今後も高水準で持続することや、想定を上回る中国の景気減速の厳しさなどが主たるリスク要因に挙げられます。

こうした状況を背景に、世界的に緩和的な金融政策の中でも、とりわけ中央銀行に利下げ余地が残っている新興国の債券が有望視されます。新興国と先進国の実質利回り格差は過去12年の最高に近い水準となっています。2020年には、米ドルが徐々に弱含み、もし新興国の成長率が米国よりも大きく高まるようであれば、米ドル安の進行も加速する可能性があると考えています。私たちは、2015年に始まった米ドル安が、2018年は米国の財政による大規模な景気刺激策(減税)によっていったん中断されたものの、中期的なトレンドとしてはまだ続いているとの見方を維持しています。2020年は、キャリー効果も新興国通貨の恩恵となると予想されます。

新興国のソブリン債と社債では、非投資適格ながら強固なファンダメンタルズを有する発行体を選好しており、国別では独自の成長要因に焦点を当て、構造改革やマクロ環境改善に向けた力強い原動力を有する銘柄の発掘に取り組んでいます。ブラジルとメキシコが平均を下回る経済成長トレンドから抜け出すことが期待される中南米で、いくつかの有望銘柄が見つかっています。中東の湾岸諸国やサハラ以南のアフリカ地域でも、低成長からの回復の恩恵が見られるはずだと考えています。

アジア債券

私たちは、2020年のアジアの債券について前向きにみており、世界的な金利の低下と、アジアの中央銀行が金融緩和方向に政策スタンスをシフトしたことがダウンサイド・リスクの軽減につながると予想しています。地政学リスクが高まり、世界的に経済成長が鈍化していますが、アジアの政府当局が進める金融・財政双方の緩和策は、ファンダメンタルズが依然として堅固な現地の発行体を支援し、海外からの逆風を相殺すると考えています。米国や欧州の社債と比べ、アジアの社債は引き続き魅力的な利回り水準にある公算で、アジアの米ドル建て債に対する各国投資家の「ホーム・バイアス」にも根強いものがあります。欧州や日本でのマイナス利回りの債券の増加から、投資家がそれ以外の地域に「利回りを求めている」ことを踏まえると、アジアのクレジット市場は引き続き需給面で下支えされると考えられます。

中国の成長は、貿易をめぐる不透明感の中で減速の兆しを見せていますが、底入れしつつあるようです。中国の発行体のクレジット指標はおおむね依然として堅調で、企業のデフォルト・リスクも低い水準にとどまるでしょう。昨年の豚インフルエンザ発生を受けた豚肉価格の上昇に伴うインフレ圧力は、おそらく一時的なものであり、中国の政府当局はさらなる緩和政策によって景気を活性化できると考えられます。中国の構造改革の加速と金融市場のさらなる開放も期待されます。したがって、私たちは、さらなる債券指数への採用も見込まれる中国のオンショア債券市場に前向きです。中国のオフショア社債は引き続き安定的に推移し、現在の水準からスプレッドが縮小すると予想しています。とりわけ、中国当局が、中国企業の海外での社債発行の割り当てを狭めたことを受け、質の高い発行体が少なくなって(希少性が高まって)いるためです。

中国以外では、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、インドの発行体をプラスに評価しており、グローバル・サプライチェーンの中国からの移転、国内の改革の着実な進展、政策の透明性の高まりなどからの恩恵を期待しています。通貨では、タイやベトナムといった資本流入の持続が見込まれる国の通貨を選好しています。2020年は、米国の大統領選挙を控えていることから、米中の貿易交渉における展開や政策面の逆風を、また、緊迫感の増す中東情勢を受けて原油価格の動向などに注意を払いたいと考えています。

インド債券

インドでは、総合インフレ率が3%と、インド準備銀行(RBI、中央銀行)が目標とする中立水準の4%を著しく下回っています。このため、RBIは2019年2月以降、9月末までに政策金利を計100ベーシスポイント(bp)以上引き下げました。成長が鈍化し、インフレ率が低下する中、今次利下げ局面では、さらに何度かの追加的な利下げが行われる見込みです。レポ金利(政策金利)の低下は、政府や高格付け企業の借入コストを引き下げ、やがてすべての債券の発行体に浸透すると期待されます。

財政面では、2019年の30%から22%への法人税減税が多くの投資家から歓迎されており、関税回避のため中国を離れる企業が続出する可能性がある中で、中国に対するインドの製造業の競争力を高める可能性があります。

インドと貿易相手国とのインフレ率格差の縮小により、インドルピーは底堅く推移すると予想され、海外からの証券投資や直接投資(世界でも有数の流入国となっています)や、非居住インド人からの本国送金を引きつける力の向上につながっています。

グローバルな債券指数に採用が進むことで、やがて外国人投資家のインド金融市場へのエクスポージャーが増えると予想されます。一方で、現在のインド債券の保有者における外国人比率の低さは、他のグローバル資産クラスとの低相関につながっており、そのようなインド債券は、潜在的な高利回りとともに、ポートフォリオに分散効果を提供することが可能となっています。

米国地方債

2017年末に成立した税制改正法(TCJA)の下で行われた税制変更が、2020年の地方債需要の主な原動力になると考えています。同法における、州・地方税控除(SALT)の上限を1万米ドルとする規定(いわゆる「SALT上限」)によって、州所得税の高い州(特に、カリフォルニアやニューヨーク、ニュージャージーなどの民主党の勢力が強い州)民の税額が驚くほど高額となりました。TCJAは、2018年1月1日に発効しましたが、投資家は、同年後半に納税申告書を提出するまで、その影響を十分に理解することはありませんでした。

これにより、2019年の地方債ミューチュアル・ファンドへの資金流入は過去最高となっています。2019年10月2日現在、地方債ファンドには差し引き695億米ドルが流入しており、年初来39週連続での純流入は、1992年の統計開始以降の最長記録となっています。

クレジットのファンダメンタルズは、2019年の地方債市場のパフォーマンスの支援材料で、2020年も、ファンダメンタルズは引き続き安定が予想されています。この安定は、米国の多くの地域で景気回復が続いていることによるものです。州のファンダメンタルズのさらなる向上につながったのは、2018年6月に米国の最高裁が、オンライン事業者からの州税の徴収を禁止した数十年前の判決を覆す決定を下したことです。5対4で決まったこの判決により、各州政府は自州内に物理的な事業拠点を持たない小売業者からも売上税を徴収できることになりました。加えて、全米中の州が、娯楽用大麻やスポーツ賭博などの産業に「罪」税を課し始めています。これらの産業が成長するにつれ、各州は徴税の観点では恩恵を受けられるようになっています。州・地方政府が徴収する固定資産税は、2020年も概して健全な成長が続くと予想されます。政治は、大統領選挙前後で連邦政府の政策に不透明さが高まるようであれば、2020年は市場の不安定さの根源となる可能性はあります。米国地方債市場にとっては、例えば、再び所得税改革が行われるようだと、とりわけ影響が高まる可能性があります。

インフラ支出は、超党派の支持を得ている数少ない分野の1つであり、2020年に前進する可能性が考えられますが、実現の可能性は低いでしょう。インフラ支出を2020年の選挙キャンペーンの一環としたい民主党が追求を先送りする可能性が高いためで、2021~2022年に実施される可能性はあります。ただし、ひとたびインフラに関する意思決定が行われれば、新規のプロジェクトは地方債市場を通じて資金調達される可能性が高いでしょう。その際も、発行のペースは調整されるだろうと私たちは信じています。最後に、2017年に財政破綻したプエルトリコ関連の地方債ですが、2019年の債務再編に続いて、2020年にはクレジット面の透明性がさらに高まることになるだろうと予想され、ハイ・イールド地方債の投資家に歓迎されると考えています。

2019年11月19日
ロブ・ワルドナー : インベスコ・フィックスト・インカム(IFI) チーフ・ストラテジスト アンド ヘッド・オブ・マクロ・リサーチ

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MC2019-140