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行き過ぎた市場の悲観論

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〔要旨〕

下振れリスクは何か?:政策ミス、持続的なインフレ、新型コロナウイルス変異株が、投資家の懸念事項の上位に

上振れリスクは何か?:ワクチン接種の増加、好決算のサプライズ、米連邦準備理事会(FRB)の安定した政策運営が、明るい材料に

下振れリスクは何か?

①FRBの政策ミス、②持続的なインフレ上昇、③新型コロナウイルス変異株、④米国の景気後退、⑤中国経済の減速―投資家が懸念する下振れリスク

上振れリスクは何か?

①新型コロナの封じ込めの成功、②FRBの安定した政策運営、③予想よりも早く緩和するインフレ、④中国の規制強化の動向、⑤税制政策上の手詰まり感、⑥好決算のサプライズ―が、投資家が見落としがちな上振れリスク

まとめ

投資家は市場の下振れリスクに固執している中、上振れリスクに目を向けることが重要であろう

CNBCの調査によると、現在が株式投資のよい機会と考える米国人はわずか31%であることが明らかに

まもなくハロウィンがやってきます。私は、ハロウィンには、息子と怖い映画を鑑賞するのが恒例です。息子にとって、怖い映画は怖いほど良いのですが、私は本当にひどいものは観たくありません。たとえば、「悪魔のいけにえ」は、そのカルト映画としての高い評価にもかかわらず、わが家では観ることは禁止されています。毎年恒例のハロウィン映画鑑賞で、私は以下のことを不思議に思います:「人は、なぜ怖がることを選ぶのだろうか?そして、どうして怖がることを楽しんでいるのだろうか?」

私はこの数週間、人の怖れについてよく考えてみました。私はこのところ各地を回ってプレゼンテーションを行い、顧客や金融の専門家と交流する機会を得ましたが、そこで分かったのは、彼らが怖がりたいと思っているようにみえることでした。つまり、彼らは皆、下振れリスクを懸念していますが、上振れリスクを無視しているのです。楽観的になりすぎてリスクを見落とさないように、客観的でありたいという願望は理解できます。しかし、私が現在目にしているのは、機会ではなく、恐怖を投資家に強く意識させている本当に悲観的なバイアスです。CNBCが先週発表した世論調査によれば、株式に投資するのに良い時期だと考えているのは米国人のわずか31%に過ぎず、その割合は2016年以来の最低水準にあることが明らかになりました 1

より広い視点で状況を把握するために、本稿では、現在確認されている下振れリスクと上振れリスクをまとめてみたいと思います。

下振れリスクは何か?

①FRBの政策ミス、②持続的なインフレ上昇、③新型コロナウイルス変異株、④米国の景気後退、⑤中国経済の減速―投資家が懸念する下振れリスク

下振れリスクには長いリストがありますが、最近の顧客とのミーティングで最も話題となった懸念は、以下となります。

• FRBの政策ミスの可能性
政策ミスは、投資家が最も懸念していると思われるリスクです。誰もが知っているように、中央銀行には、あまりに早急に金融引き締めに動くことで、景気サイクルを終わらせ、経済成長を阻害する力があります。米連邦準備理事会(FRB)が米国を景気後退に陥れ、他国にも悪影響を及ぼしてしまう可能性があるという大きな恐れが実在しています。FRBが自らをタカ派ではないとし、忍耐強いことを示すためにできる限りのことをしているにもかかわらず、この恐れは続いています。

• 持続的なインフレ率の上昇
インフレが一時的なものではないという懸念がありますが、ここでの「一時的」は正確な定義からほど遠いものです。「一時的」とは数カ月を意味すると考える人もいるようですが、この物価の急上昇は、それよりも長く、おそらく2022年半ばまで続く可能性があるようです。FRBのパウエル議長は先週、「供給面の制約と物価上昇は、以前の予想よりも長く、2022年に入っても続く可能性がある。賃金への圧力についても同様だ。」と述べました 2 。しかし、これは「恒久的な」インフレとはほど遠いものです。イノベーションや人口動態の傾向など、長期的に物価に下押し圧力をかけると考えられる力が数多く存在します。

• 新型コロナウイルス変異株
現在、恐怖を生じさせる緊張は、新型コロナウイルスのデルタプラス変異株です。ワクチン接種水準が比較的高いにもかかわらず、英国では最近、新型コロナウイルスの新規感染者数が大幅に増加しており、デルタプラスが感染拡大の理由だとされています。保健当局者は、デルタプラスは伝染性が高く、さらに悪いことに、既存のワクチンに耐性がある可能性があると懸念しています。さて、以前、新型コロナのミュー変異株について、伝染性が非常に高く、既存のワクチンの有効性が非常に低いとの懸念がありました。そして、それは誤りでした。もちろん、今後も先行きを注視していきたいと思いますが、最悪のシナリオでも、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が発生し、それをコントロールする防御策が開発されていなかった2020年初めのような暗い時代に私たちが戻ることはないことを認識する必要があるでしょう。

• 米国の景気後退
米国が景気後退に陥るのではないか、との一般的な見方が広がりをみせていますが、私はこれに驚いています。なぜなら、現在の米国の労働市場は、雇用者にとって非常に力強い状況にあるためです(実際、雇用者は非常に楽観的で、続々と離職しています)。最近のCNBCの世論調査では、47%が今後12カ月で景気後退に陥ると予想しているのに対し、79%は景気の状況がまずまずか、悪化に向かうと回答しています 3

• 中国経済の減速
政策立案者による規制強化により、中国経済が悪化し、世界経済もその影響を被るとの懸念もあります。さらに、この規制強化の強まりにより、中国は「投資に不適格」だと市場関係者が述べるのをたびたび耳にしています。このような発言は、非常に大きな株式購入機会が生まれている可能性を強く示唆していると思います。

上振れリスクは何か?

①新型コロナの封じ込めの成功、②FRBの安定した政策運営、③予想よりも早く緩和するインフレ、④中国の規制強化の動向、⑤税制政策上の手詰まり感、⑥好決算のサプライズ―が、投資家が見落としがちな上振れリスク

多くの投資家が見落としているような多くの上振れリスクがあります。

• 新型コロナウイルスとの闘い
世界中のワクチン接種率が上昇するにつれて、世界は新型コロナウイルスの封じ込めに成功しています。たとえば、アジアでは、日本で人口の69.94%が、韓国では70.15%が2回のワクチン接種を終えるなど、過去数カ月で非常に大きな進展が見られています。また、新興国でも、ブラジルで人口の53.97%が、トルコで56.56%が2回のワクチン接種を終えるなど、多くの国で状況が進歩しています 4 。危険度の高い変異株ウイルスが発生しなければ、世界はパンデミック前の生活に向けて正常化へと進むはずです。

• FRBの安定した政策運営
パウエルFRB議長は先週、「供給面での制約が想定よりも長期に及び、インフレ率が上昇するリスクが現在明らかに存在している」と発言し、市場を驚かせました 5 。しかし、パウエル議長は同時に、経済に回復する時間を与えるため、FRBが高インフレを「(アクションをおこさずに)観察するだけにとどめる」とも述べていました。市場関係者はこの点を見落としたと思われます。もしFRBが2022年後半か2023年初まで利上げをしないことを選択し、より長期にわたり金利を低く保つとしたら、それは予想よりもハト派的ということになります。

• 予想よりも早く和らぐインフレ
インフレ率の上昇が一時的との予想は薄れつつあります。しかし、多くの人が長期的なインフレを予想している中、その悲観的な予想を打破するのは容易となるでしょう。サプライチェーンは一夜にして正常に戻ることはありませんが、新型コロナによって停止中の組み立てラインの数が減少したり、半導体生産が増加したり、米国の港でのコンテナ船の積み残しが解消されたりすることで、供給面の制約が緩和される可能性があります。

• 中国の規制強化の動向
中国における規制改革は、間もなく終わりを迎えるかもしれません。これは、現在の政策が転換されることを意味するものではありませんが、中国の政策立案者は、新しい改革が経済と市場に与える影響を分析したいと考える可能性があるため、さらなる規制を見送ることも予想されます。それは経済にとってプラスであり、経済の再加速を下支えする可能性があります。さらに、投資家は、中国が投資対象として適している点に素早く気付くかもしれません。

• 税制政策上の手詰まり感
手詰まりという言葉は後ろ向きのように聞こえますが、この場合、議会の手詰まり感によって米国人の多くが望む増税が回避される可能性があります。ほぼすべての投資家がある程度の増税を想定しているため、この点は株式に非常にプラスになると思います。

• 好決算のサプライズ
10月22日までに決算発表したS&P500種企業の23%が予想を上回る売り上げと収益を報告しましたが、この流れが続きそうです 6 。私は、7-9月期は好決算が続くと考えますが、10-12月期については警戒感をもってみています。

まとめ

投資家は市場の下振れリスクに固執している中、上振れリスクに目を向けることが重要であろう

では、これが投資家にとって何を意味するのでしょうか?本稿の冒頭で述べたように、CNBCの調査では、回答者のわずか31%が、現在が株式に投資するのに良い時期と述べており、その割合は2016年以来最低の水準となっています 7 。それは私には耳よりの情報に聞こえます。懸念は大きい一方で、期待は低く、投資家はすべての下振れリスクに固執しています。私は、それは単に上振れの可能性が高いことを意味していると考えています。

1.出所:CNBC、“Biden’s support is fading as concerns over the economy and Covid grow, CNBC survey finds”、2021年10月21日
2.出所:ロイター、“Time for Fed to taper bond purchases but not to raise rates, Powell says”、2021年10月22日
3.出所:CNBC、“Biden’s support is fading as concerns over the economy and Covid grow, CNBC survey finds”、2021年10月21日
4.出所:ourworldindata.org、2021年10月24日時点
5.出所:ロイター、“Time for Fed to taper bond purchases but not to raise rates, Powell says”、2021年10月22日
6.FactSet Earnings Insight、2021年10月22日時点
7.CNBC、“Biden’s support is fading as concerns over the economy and Covid grow, CNBC survey finds”、2021年10月21日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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