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サプライチェーンの問題が決算シーズンに与える影響は?

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〔要旨〕

サプライチェーンへの懸念が高まる:9月初旬、米国企業3社がサプライチェーン問題により業績予想を修正

企業ガイダンスはおおむね好調:現在、S&P500企業の103社が業績見通しを発表。うち、54%が好調な予想を示す

サプライチェーン問題による影響は均等ではないだろう:一部の産業や企業がより大きな影響を受けると予想。現在の環境ではアクティブな投資判断が重要であると考える

決算に対するS&P500企業の見解は?

発表された業績見通しでは、半数以上が好調な業績見通しを発表。また、発表済みの決算では、21社のうち、16社が予想を上回る一株当たり利益(EPS)を、15社が予想以上の売り上げを報告

特に影響を受ける可能性のあるセクターは?

運輸、一般小売、建設、自動車などのセクターでコスト増の影響を大きく受ける企業が多い模様

これらの要因はいつ解決されるのか?

企業が抱える問題のうち、サプライチェーンの混乱や半導体不足に関してはその他の要因よりも早く解消されると見込む。ただし、人手不足については長引く可能性もあり、投資家には、投資に際して優れた選択眼とアクティブな投資判断が重要となるだろう

一部企業は、決算発表に際してサプライチェーンの混乱によるコスト上昇への懸念を示す

先週、本レポートでは10月に注目すべきことをご紹介しました。その際記載しなかったものに、決算発表がありますが、これは、サプライチェーンの問題と人件費の上昇が企業収益に与える影響への懸念が高まっていることを踏まえると、それ自体として取り上げる必要のあるトピックだと考えたからです。そこで、本稿では、決算シーズンに関する私たちの見解を取り上げようと思います。

決算への懸念は、しばらくの間醸成されてきました。9月初旬、サプライチェーン問題により、米国企業3社(塗料およびコーティング会社2社と住宅建設業者1社)が業績予想を修正しました。

• ある塗料会社は、塗料需要に対応するための原材料の不足を理由に、売上高予想を下方修正しました(原材料不足の理由の1つは、サプライチェーンの問題を悪化させたハリケーンアイダです)。

• また、別の塗料会社は、サプライチェーンの問題が売上高に影響を与えているとして、原材料価格の上昇を補うために価格を引き上げたことを示唆しました。一方で、2022年の需要は「力強く」、「堅調」な売り上げが見込まれることを公表しており、同社の業績ガイダンスは引き続き非常にポジティブなことを強調することが重要でしょう。

• 最後に、住宅建設業者は、2021年半ば以降、サプライチェーンの問題が悪化し、供給不足により住宅建設の完了が遅れ、未完成物件が増えていると発表しました。

その他、いくつかの大手企業も、サプライチェーンの混乱に関連するコストの上昇について懸念を示しています。

決算に対するS&P500企業の見解は?

発表された業績見通しでは、半数以上が好調な予想を示す。また、発表済みの決算では、21社のうち、16社が予想を上回る一株当たり利益(EPS)を、15社が予想以上の売り上げを報告

しかし、これらの警告は、7-9月期の決算発表が失望をもたらす内容であることを意味するものではありません。企業は、決算発表を前にした市場の期待にうまく対処しており、業績下振れへの警告や大幅下方修正は聞かれませんでした。現時点では、S&P500の103社が業績見通しを発表しており、54%(103社中56社)が好調な業績予想を示しています 1 。これは、5年間の平均である39%をかなり上回る水準です 1

確かに、多くの企業はサプライチェーンの混乱、投入コストや人件費の上昇の影響を被っていますが、問題は、各企業がどれだけ影響を受けたか、そしてコスト増を転嫁できたかどうかです。これまでに業績発表を完了したS&P500企業(正確には21社)から、いくつかの洞察を得ることができます。先に述べたような様々な逆風に直面しているにもかかわらず、これまでのところ、21社のうち、16社が予想を上回る一株当たり利益(EPS)を、15社が予想以上の売り上げを報告しています 1 。また、これまでの7-9月期決算発表では、サプライチェーンの混乱が最も多く言及されており(21社中15社が報告)、次いで人手不足とコストとなっています(21社中14社)。また、各企業は、新型コロナ関連のコストとその影響(21件中11件)や輸送コスト(21件中11件)についても言及しました 1

欧州企業も同様の課題に直面しています。地域に関わらず、企業は、サプライチェーンの混乱、投入コストの上昇、そして雇用調達に関する問題を抱えている可能性があります。

特に影響を受ける可能性のあるセクターは?

運輸、一般小売、建設、自動車などのセクターでコスト増の影響を大きく受ける企業が多い模様

ただし、一部の企業は、他の企業よりもはるかに大きな影響を受けると予想されます。他のすべての要因が等しい場合、コストの増加は、利益率の低い企業に最も大きな影響を及ぼすと見込まれます。これらの企業は、運輸、一般小売、建設、自動車などのセクターに多くみられます。一方で、影響が最も少ない企業は、厚めの利益マージンを有し、原材料費が抑制され、従業員が少ない企業です。これには、テクノロジーやヘルスケアなどのグロース・セクターが含まれます。残念ながら、テクノロジーやヘルスケアなどの株価は、債券利回りの上昇とともに一時的に下落する可能性があります。こうした動きは金融業にとりわけ好影響をもたらしますが、これは、これらの企業が長期金金利上昇の恩恵を受けるためです。もう1つの差別化要因は、生産性を向上させるために企業がテクノロジーにどれだけ投資したかということと考えられます。

これらの要因はいつ解決されるのか?

企業が抱える問題のうち、サプライチェーンの混乱や半導体不足に関してはその他の要因よりも早く解消されると見込む。ただし、人手不足については長引く可能性もあり、投資家には、投資に際して優れた選択眼とアクティブな投資判断が重要となるだろう

これらの要因のいくつかは、他の要因よりも早く解消されると見込まれます。9月の雇用統計は精彩を欠くものでしたが(公共部門、特に教育分野の雇用の大幅な減少が原因の一つでした)、職場復帰への障害が解消されるにつれ、労働市場はある程度正常化すると引き続き考えています。

特に、半導体の不足に関しては、状況がまもなく改善する可能性があり、2022年4-6月期までに通常の生産レベルに戻ると予想されています 2 。しかし、特に新型コロナウイルスの新たな波が生じた場合は、短期的にはサプライチェーンの混乱が続くと見込まれます。それでも、ワクチン接種率や新型コロナに対する免疫力が高まれば、状況は改善するはずです。

概して、サプライチェーンの混乱と投入コストの上昇は比較的一時的なものである可能性が高そうです。一方で、人件費の上昇は本質的に異なる問題であり、産業によって異なると考えられます。例えば、サービス業では、従業員の離職率が高く、賃金の上昇が一時的なものになる可能性が最も高くなります。

こうした中、私は、7-9月期決算発表に細心の注意を払っています。10-12月期以降の収益についての企業ガイダンス、特にこのような状況がどの程度続くと各企業が予想しているかが最も懸念されるところです。一部の産業や企業は、他よりも影響を受けることは明らかです。全体として見れば、この状況が示しているのは、投資家には優れた選択眼とアクティブな投資判断が重要である点です。これらの要因がかなり長い期間続くとみられる場合は、特にそれが当てはまると考えられます。

1.出所:ファクトセット・リサーチ・システムズ、2021年10月1日
2.出所:ガートナー、“Gartner Says Global Chip Shortage Expected to Persist Until Second Quarter of 2022”、2021年5月12日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

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