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一部のFRBメンバーはタカ派的見解を示す:ジャクソンホール会議の前日、一部のFRBメンバーはテーパリングの速やかな開始の必要性を強調
パウエル議長の講演で市場は落ち着きを取り戻す:一方、パウエル議長はテーパリングの開始時期については言及せず、より穏やかな見方を示す
利上げを急がない姿勢を示すパウエル議長:利上げの開始にはより厳格な基準があり、テーパリングとは切り離して考えていると述べる
セントルイス連銀のブラード総裁は、インフレが緩和されなかった場合にFRBは「より積極的に」なる必要があるとの考えを示す
パウエル議長は、現在の景気回復が過去のものとは異なる性質を持つことを強調
また、年内のテーパリングの開始が適切との見方を多くのFOMC参加者が持っていることを明らかにしたものの、その時期は明確にせず
パウエル議長は、「経済が最大雇用に達し、持続可能なベースで2%のインフレに達する軌道に乗る」まで利上げを開始しないことを改めて主張
8月の米雇用統計、FRB人事に多くの注目が集まると見込む
8月27日、カンザスシティー連邦準備銀行主催のジャクソンホール年次経済シンポジウムが開催されました。新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、当初の予定とは異なり、今年のジャクソンホール会議はオンラインで開催されましたが、これは、物事が正常化していないという現実を明確に示すものでした。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長による講演の前日、数名のFRBメンバーが、テーパリング(量的資産購入額の段階的な縮小)をただちに開始する必要があると強調しました。まず、カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は、FRBがまもなくテーパリングに着手すると予想していると述べました。次に、ダラス連銀のカプラン総裁は、テーパリングの開始を9月までに発表し、10月までに開始するか、ただちに開始するように求めました。そして、おそらく最も驚くべき、最もタカ派の発言は、セントルイス連銀のブラード総裁によるものでした。
ブラード総裁は、FRBのバランスシートの拡大が住宅バブルを引き起こしているのではないかとの懸念を示しました。また、同総裁は、テーパリングを2022年1-3月期には終了する必要があると述べました。そして、インフレの上昇について深刻な懸念を表明しました。ブラード総裁は、2022年3月までにインフレが減速するかどうかFRBは評価できるようになるだろうが、自身は一時的との見方には懐疑的だ、と主張しました。そして、インフレが緩和されなかった場合、FRBは「より積極的に」なる必要があると示唆しました。これは、利上げを意味すると私は推測しますが、市場予想よりも早いものです。当然のことながら、これらのタカ派的な見解は市場を動揺させました。
しかし、その後、パウエルFRB議長のジャクソンホール会議での講演で、市場関係者は安どのため息をつきました。パウエル議長は、物事が正常化していないのは事実であるとの考えを明らかにしました。同議長は、景気回復のペースが予想を上回っており、現在の景気回復は世界恐慌からの回復よりもはるかに早く、雇用も予想よりも早く増加していることを認めました。一方で、パウエル議長は、個人所得が上昇していることを挙げ、現在の回復が過去とは異なる性質を持つことを強調しました。また、同議長は、労働条件は大幅に改善されたものの、依然として「混乱」していると述べました。そしてもちろん、新型コロナウイルスの世界的な感染再拡大によって景気回復が脅かされていると指摘しました。
また、パウエル議長は、景気回復が均等ではないことを強調し、米国で最も負担を負うことができないような人々がまさに負担を負わなければならなかったと指摘しました。同議長は、サービス部門が不均衡に最も影響を受けていることを強調し、総雇用は「現在、2020年2月の水準を600万人下回っており、そのうち500万人は依然落ち込みが見られるサービス部門だ」と述べました。
ジョージ、カプラン、ブラード各総裁はテーパリングに対してよりタカ派姿勢をとった一方で、パウエル議長はより穏やかな見方を示しました。ジャクソンホール会議の講演で、パウエル議長はインフレが「さらなる大きな前進」を遂げたことを認めましたが、テーパリングの開始を発表せず、9月までに発表することさえ示唆しませんでした。パウエル議長は、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ほとんどの参加者が年内のテーパリング開始が適切となりうると考えていたことを認めました。そして、前回のFOMC後、経済面で多くの進歩があった一方で、新型コロナウイルスの変異ウイルスであるデルタ株の感染が拡大したと述べました。私は、パウエル議長のこれらの発言は、テーパリングがまもなく発表される可能性が高いものの、新型コロナによる不確実性により、ある程度の柔軟性を維持したいという考えによるものだ、と思います。
パウエル議長は、現在のインフレ上昇がおおむね一時的なものであるとの見方をより強くしているようでした。彼はその理由の説明に大半の時間を費やして説得力のある議論を展開し、特に長期的なインフレ期待が固定されたままであることを指摘しました。私は、これがパウエル議長のハト派的なスタンスに信ぴょう性を与えていると考えます。
パウエル議長は、利上げはテーパリングから切り離されている、すなわち、テーパリングの終了後、ただちに利上げが始まると予想すべきではないことを示唆しました。パウエル議長は、「経済が最大雇用に達し、持続可能なベースで2%のインフレに達する軌道に乗る 1 」というかなり高い基準に達するまで、利上げを行わない考えを主張しました。市場関係者がテーパリング開始時期よりも利上げ開始時期にはるかに高い関心を持っているようであることを踏まえると、この点がおそらくパウエル議長のスピーチから得られる最も重要なポイントでしょう。
今週末に公表される8月の雇用統計に多くの注目が集まりそうです。その雇用統計で、非農業部門雇用者数の増加が100万人を超えると予想している声があります。そうなれば、FRBは9月に、10月のテーパリングの開始を発表すると考えます。
更に先の話として、パウエル議長がFRB議長に再任されるかどうかについての予想が飛び交っています。議会では急進派から不満の声が出るかもしれませんが、私はパウエル議長が再任されると思います。今後数カ月、一部の市場ウォッチャーは、パウエル議長再任や副議長などのFRBにおける人事について予想を続けることでしょう。
1.出所:米連邦準備理事会、パウエルFRB議長のスピーチの抜粋、“Monetary Policy in the Time of COVID”、2021年8月27日
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2021-150