コロナ禍を機に投資を始める若年層が増えたことを受け、米投資大手フィデリティ・インベストメンツが未成年(13~17歳)を対象とする証券口座サービスを開始しました。保護者が未成年の子どものために開設する貯蓄口座や信託口座とは異なり、子どもが自分の意思で株などを売買できるサービスです。
中高生が投資を経験することは、将来に良い影響を与えるのでしょうか、それとも悪い影響を与えるのでしょうか。子どもの投資と未来について考えてみましょう。
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子どもの将来のための資産運用といえば、日本ではジュニアNISA(少額投資非課税制度)や未成年口座、米国では「子ども名義口座(Custodian Account)」や「教育IRA(Education Individual Retirement Account)」と呼ばれるものがあります。いずれも子どもが成人になるまで、保護者が資産を管理する仕組みです。
しかし、子どもの金融リテラシーの育成に興味を持つ親が増えている中、「早い時期から子どもに自分のお金を管理させる」という概念が広がっています。
イー・ラーニング研究所が2020年10~11月に20~50代の子どもを持つ親216人を対象に実施した調査によると、子どもの金融教育を行っているのはわずか2割であることが明らかになりました。しかし、8割以上が「小学高学年までに金融教育を始めたい」と考えており、過半数が「貯金や投資、資産運用について学ばせたい」と回答しています。
子どもの金融リテラシーに対する親の考え方の変化を受けて生まれた金融商品が、「フィデリティ・ユース・アカウント(Fidelity Youth Account)」です。口座の所有者である中高生の子どもがお金の管理や資産運用を学びながら、実践を通して知識や経験、スキルを習得していくというコンセプトです。「使う」「貯める」「投資する」の3つに焦点を当てています。
口座所有者(子ども)は、デビットカードや米国で人気のP2P送金アプリVenmo(ベンモ)、送金サービスPayPal(ペイパル)などを使用して入出金や決済を行えるほか、米国株やETF、フィデリティのミューチュアルファンドなどに投資できます。口座の開設や維持において最低預金額はなく、取引手数料や口座維持費なども無料です。1ドル(約110円)から投資できるため、貯蓄感覚で気軽に投資を楽しめます。また、アプリ内の「ユース・ラーニング・センター」という金融リテラシーの向上に役立つ情報に無料でアクセスし、お金についての知識を養うこともできます。
日本においても15歳以上を対象にデビットカードを発行したり、本人が取引できる証券口座を提供したりしている金融機関があります。このような商品を賢く利用すれば、子どもは人生の早い段階で健全な金銭感覚を身に付けて資産運用を学べるため、経済的自立心の育成に役立つでしょう。
一方で、お金の管理をすべて子どもに任せることがリスクになるという懸念もあります。特に、子どもにお金や投資に関する知識や経験が十分にない場合は浪費してしまったり、投資で大きな損失を出したりすることも考えられます。子どもによっては、お金の失敗が生涯トラウマになるかもしれません。
重要なカギを握っているのが、保護者です。子どもに実践的な早期金融教育を施す場合、保護者は子どものお金の使い方をしっかり監視し、必要に応じて適切なアドバイスを与える必要があります。また、家庭内で日常的にお金の使い方や資産運用について話し合う機会を持ち、子どもの金銭感覚や投資スキルの向上をサポートするなど、完全に子ども任せにしないように注意しましょう。端的にいえば、子どもをサポートできるだけの知識やスキル、責任感が、保護者に求められるのです。
フィデリティのユースアカウントでは、子どものお金の使い方を監視し、責任を負うことが保護者に義務付けられています。また、保護者には口座の開設・閉鎖やデビットカードのキャンセル、デビットカードの明細書と取引確認情報にアクセスする権利が与えられています。
コロナ禍によるお金の価値観の変化は、さまざまな形で社会にも変化をもたらしています。今後は日本においても、中高生の投資を推奨する商品や低年齢層を対象とするデビットカードなど、新しい金融商品が生まれるかもしれません。それらによって、子どもの金融教育の幅も広がっていくでしょう。
子どもの投資に関してはさまざまな意見があると思いますが、上記のような商品を利用するかどうかは別にして、親も子どもと一緒に自分の金融リテラシーを磨く気持ちで、子どもの金融教育に取り組んでみるのもおすすめです。夏休みの研究にもいいかもしれませんね。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。