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AIで物流はどう変わるのか?事例に見る物流の未来

EC(電子商取引)市場の成長に伴って需要が急拡大している物流産業は、人手不足や激務化といった問題に直面しています。このような問題のソリューションとして期待されているのが、Al(人工知能)を活用した業務の効率化です。

出光のタンカー配船計画などの事例とともに、「未来の物流」のカタチを予想してみましょう。

物流市場、2027年には1兆円を突破?

貨物船や航空機による輸入から商品の宅配まで、流通プロセスを担う物流産業は重要な役割を担っています。現在、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要によって消費者のオンラインにおける購買意欲が高まっていますが、米市場調査企業Allied Market Researchは世界のロジスティクス(物流)市場が2020~2027年にわたってCAGR(年平均成長率)6.5%で成長し、129億7,000万ドル(約1兆4,228億円)に達すると予想しています。2017年と比較すると約1.7倍です。

一方で、物流量の増加によって物流産業側の負担が大きくなることが懸念されています。物流は商品を運ぶだけではなく、輸送に関わる一連の作業(商品管理・仕分け・梱包など)を含みます。以前から過酷な労働環境による人手不足や倉庫作業の非効率性などの問題点が指摘されていましたが、有効な対策が講じられない限り、さらに悪化するおそれがあります。

物流にAIを活用するメリット

物流プロセスの効率化を図り、作業員の負担を減らす手段として、AIを採用する動きが加速しています。物流にAIを活用することで、以下のような効果が期待できます。

業務の効率化

AIの画像認識技術を活用して商品名や型番などを認識することで、倉庫への入庫作業や検品作業の時間と労力を大幅に削減できます。また、画像認識技術と深層学習技術を組み合わせることで、複雑な仕分け作業も自動化できます。

労力・コストの削減

AIを搭載した自動棚移動型ロボットや自動運転のフォークリフトなど、人間に代わってロボットが倉庫内で荷物を運んだり、商品を棚からピッキングしたりする風景が珍しくなくなりました。特に日本のように少子高齢化の進んでいる国では、肉体的な負担がかかる労働をロボットに任せることで、不足している労働力を効果的に補えると期待されています。

作業に必要な人員を削減できるだけでなく、後述する人為的ミスによる損害も未然に防ぐことができるため、コストの削減にもつながります。

人為的ミスの防止

物流では入力ミスや仕分けミス、配送ミスなど、人間によるエラーが少なくありません。どれほど気をつけていても、見落としややり忘れ、誤伝達などが原因でミスが発生してしまいます。

AIによって作業を自動化することで、人為的ミスが発生する頻度を大幅に減らすことができます。

物流産業、AI活用事例

ここからは、2つのAI活用事例を見ていきましょう。

1 従来の60分の1の時間で立案「出光のAIタンカー配船計画」

日常生活のさまざまな場面で使われる石油は、生産拠点から消費者に届くまで複雑なプロセスを要します。例えば、出光興産がサウジアラビアなどから輸入した原油は国内の製油所で精製され、一旦貯蔵場へ海上輸送されます。そこから、全国各地のガソリンスタンドなどに届けられます。

国内の海上輸出計画である「配船計画」は、国内で供給不足が起こらないように貯蔵場の在庫量を確認しつつ、輸送船の乗組員の労働時間や寄港先の桟橋の使用可能状況なども考慮し、それに基づいて輸送スケジュールを組むという大変手間と時間のかかる作業です。コンピューターによる自動化や最適化が難しい領域だったため、長年にわたりマニュアル(人の手)で行われていました。

出光はAIベンチャー企業GRID(グリッド) や三井物産と提携し、複雑な配船計画をAIで最適化するためのシステムを開発しました。深層学習強化などのAI技術を活用して、仮想空間で実在の業務をシミュレーションする「デジタルツイン」を構築。さまざまな配船計画のシミュレーションを繰り返し、AIが最適な計画を立案できるように学習させました。これにより、計画立案時間を従来の60分の1、輸送効率(コスト)を20%抑えることができるなど、配船システムの著しい効率化が期待されています。

2  AmazonやWalmartも導入「自動運転配送車」

新たな物流輸送の手段として注目されているのが、自動運転の配送車両で消費者に商品を届ける「自動運転配送車」です。

現在、Amazonや米スーパーマーケットチェーンのWalmart(ウォルマート)が実現に向けて取り組んでいます。Amazonは米自動運転技術スタートアップZoox(ズークス)を買収したほか、米自動運転技術スタートアップAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)にも資金を提供しています。ドローン配達に続き、自社の自動運転配送車を開発することが目的のようです。

Walmartは2020年に自動運転の配送車両を無人で運行する実証実験を成功させ、年内の実用化を計画しています。実証実験に協力したゼネラルモーターズ(GM)の子会社Cruise(クルーズ)やFord(フォード)、Alphabetの子会社Waymo(ウェイモ)など6つの自動車メーカーと提携しています。

物流の未来は完全無人化?

現在物流業界は、かつてない転換期を迎えようとしています。将来、一連の物流プロセスが完全無人化される可能性も十分に考えられます。「人間の仕事がなくなる」といったネガティブな影響も懸念されていますが、AIの導入は始まったばかりであり、当面は人間による監視やサポートが不可欠でしょう。

物流改革が人類にとって吉と出るか凶と出るかは、AIとの共働を通して次世代の働き方や雇用のカタチを確立できるかどうかにかかっているのかもしれません。AIを活用したビジネスで成長する分野、企業はどこなのか、Wealth Roadでは今後も探っていきます。記事を読みながら未来の投資先をリサーチしてみてください。

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