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(写真=Natee K Jindakum/Shutterstock.com)

未来の移動手段を創造する「モビリティ・マネジメント」

世界中の大都市で、先端テクノロジーを活用したスマートシティ化が進む近年、個人や企業、地域のモビリティ(移動状況)を管理する「Mobility Management(MM)」は、人と環境に優しい、効率的なインフラの中核とされています。

都市をサスティナブル(持続可能な)なものへと導く上で不可欠なMMと、日本やシンガポールの取り組みをご紹介しましょう。

スマートシティとは?

世界規模のプロジェクトが展開しているスマートシティとは、情報通信技術(ICT)やIoT(モノのインターネット)といったスマートテクノロジーを活用し、環境を配慮すると同時に市民の生活の質を向上させるための取り組みです。

スマートシティの定義は広範囲にわたりますが、多くの都市が、社会、生活、環境、行政、経済、モビリティという6つの領域を課題としています。

具体的には、エネルギーや輸送手段、公益事業を含む都市サービスの品質とパフォーマンスの向上、資源採取や廃棄物、様々なコストの削減などを軸に、人と環境がお互いの存在を浸食することなく、共存していける次世代都市を開発するという概念です。

大都市の課題解決策として重視されるMM

スマートシティ化に向けた課題の中で、環境と人に優しい交通インフラ基盤のカギをにぎるのがモビリティ・マネジメント(MM)です。

世界中の大都市で、交通渋滞や交通事故、自動車の排気ガスによる環境汚染が深刻化しています。人口の増加や都市部に人口が集中するアーバナイゼーション(都市化)は、こうした現状に拍車をかけている要因です。

MMは、大都市が直面している問題の解決策として、多様な交通施策を住民や旅行者に提供することにより、自動車の利用に対する需要を管理するための概念です。情報通信、関連サービスの編成や活動、そして関連産業に携わるパートナーの提携などが、重視されます。

例えば、最近よく耳にする「MaaS(Mobility as a Service)」は、様々な交通手段をオンデマンドで提案・提供するモビリティサービスです。〇〇から△△へ移動する際、従来ならば「乗り換えが面倒くさい」と自家用車を利用していたところを、MaaSが電車やバス、タクシーなどを乗り継ぎ、シームレスに移動可能な代替プランを提案してくれるというわけです。

また、スマートフォンなどのデバイスから、出発地から到着地までの検索・予約・乗車券の購入を一括で行えるため、利便性の高いモビリティが可能です。

世界のMMをリードするシンガポール

ニューヨーク市政府が2017年に発表した調査報告書によると、少なくとも26カ国がMMに取り組んでいます。

中でもシンガポールは、英国の調査会社ジュニパーリサーチが世界主要20都市のスマート化を評価した「モビリティ・インデックス」で、全4項目(モビリティ・健康・生産性・安全性)で最高スコアを取得するなど、MMをリードする国の一つです。

精密な3Dモデル「Virtual Singapore」を作成し、新たな建物が交通におよぼす影響や駐車スペースの開発に役立てているほか、「Vehicle to Everything」と呼ばれる、都市のモビリティネットワークのあらゆる要素を接続するシステムを構築しています。

また、2020年までに、自家用車と既存の電子道路料金システムを接続し、運転手がGPS追跡と車に搭載された決済手段を使用し、請求書を支払うことができるシステムの導入を目指しています。

日本でもMMが加速

日本においても、MMの促進を目的とする日本モビリティ・マネジメント会議(JCOMM)が設立されたほか、新潟市と新潟交通株式会社が提携する「BRT・新バスシステム」を筆頭に、多数の取り組みが行われています。

「BRT・新バスシステム」は、新たな交通システム「BRT(Bus Rapid Transit)」を導入し、乗り換え拠点やバス路線の再編成により、市内のバス利用の利便性を高めるという試みです。

バス利用者数は、開業2年目と3年目(2017~2018年)の比較で前年比2.3%増と、MM効果を立証する順調な伸びを示しています。

また、経済産業省が、「IoTやAIを活用し稼働率を上げる」といったモビリティサービスの活性化を提案するなど、地域の特性を踏まえた経済効果も期待されています。

特に、高齢者による自動車利用が増えている日本にとって、革新的なMM施策は長期間にわたり重要視されるべき課題でしょう。

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