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グローバルマーケット:6月に注目すべきこと

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欧州の小売売上高、米国の雇用統計、インフレ、関税に注目

〔要旨〕

ユーロ圏経済を注視:都市封鎖(ロックダウン)措置を緩和している欧州経済の6月の動向に着目

米連邦準備理事会(FRB)に注目:少数ながら強い意見を有する一部のメンバーが、FRBがテーパリング(資産購入の縮小)をすぐに開始すべきとする中で、FOMC内に断層ができると見込む

インフレを注視:投資家は新型コロナウイルスの感染状況以上にインフレを懸念しており、FRBにはインフレ期待が重要

6月に注目すべきポイント

①ユーロ圏のサービス業購買担当者指数(PMI)と小売売上高、②5月の米国雇用統計、③米地区連銀経済報告(ベージュブック)、④6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)、⑤6月の欧州中央銀行(ECB)理事会、⑥消費者のインフレ期待、⑦関税、⑧新型コロナウイルスの統計データ、⑨地政学的紛争—に注目

結論

長期投資家は、資産クラスの分散を維持し、株式への適切なエクスポージャーを持ち、株価の下落を買いの機会と見なすことが重要と考える

5月は、多くの経済指標を消化したり、中央銀行の発言を解釈したりすることに、多くの時間を費やした月でした。「5月に売り、立ち去れ」という忠告に従わなかった人々は、S&P500種指数が4カ月連続の上昇で5月を終えたことを喜んだことでしょう 1 。さて、本稿では、6月に注意深く観察すべきポイントをご紹介します。

1. ユーロ圏のサービス業購買担当者指数(PMI)と小売売上高

ロックダウンの解除が進んでいる欧州では、ドイツの企業景況感の改善や人の往来の増加が見られ、経済の正常化の進展が確認されている

欧州では都市封鎖(ロックダウン)の解除が進んでおり、その経済の進展状況を評価したいと思います。ドイツのIFO景況感指数が4月の96.6ポイントから5月に99.2ポイントと、2019年5月以来の水準に上昇したことは確かに勇気づけられます。ドイツの企業は現在の状況に満足しているだけでなく、将来についても楽観視しています 2 。また、Googleのモビリティ・データ(ヒト・モノの移動量を示すデータ)は、小売店やレストランでの人の往来が増加しており、ユーロ圏がより正常な環境に向かっていることを示しています。小売売上高とサービス業購買担当者指数(PMI)の動向を確認したいと思います。

2. 5月の米国雇用統計

ダラス連銀は米労働市場が見かけの水準よりもひっ迫しているとの見解を示しているが、障害が取り除かれることで徐々に職場に復帰する人が増えると見込む。労働市場の状況を確認するうえで、5月の賃金の伸びに注目

4月の雇用統計は非常に失望させられる内容でした。5月の雇用統計も同様の結果になる可能性があるとの声も聞こえてきます。事前予想によると、非農業部門雇用者数は約60万人の増加となっています。私はこの予想よりも下回るとはみているものの、米国経済は回復を続けており、米国民の仕事復帰の意欲は高まっていると考えられることから、大きく下回ることはないとみています。興味深いことに、先週、ダラス連邦準備銀行は、労働市場は多くのエコノミストが考えているよりもひっ迫しているとの論文を発表しました。この主張は、足元の雇用者数は新型コロナウイルス禍の前よりも850万人下回っている一方で、復職するのはその半分未満にとどまっているうえ、多くが退職することを選択しているとの見解に基づいています 3 。しかし、私は、失業者の大半は永続的に退職したわけではなく、復帰への障害がなくなる(託児所の増加、感染率の低下による公衆衛生上の懸念の緩和、利用できる公共交通機関の増加、そして追加された失業給付の打ち切りなどがあります)ことで、徐々に仕事に復帰するだろうと考えます。論文で指摘されている重要な点の1つは、賃金の伸びが労働市場の需給の引き締まりを示していることです。4月の雇用統計では、賃金が低いサービス部門の雇用が多数増えたにもかかわらず、平均時給が大幅に上昇しました。5月の雇用統計では、特に賃金の伸びに注目したいと思います。

3. 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

6月のベージュブックでは企業の設備投資計画に注目

私はいつもベージュブックを楽しみにしています。ベージュブックは、目にするデータの背景を理解するのに役立つ文献だと思います。例えば、4月の雇用統計が失望的だった理由を一部説明してくれました。6月のベージュブックは、5月の雇用統計とインフレ圧力を読み解く一助になると思いますが、私は企業の設備投資計画に最も関心があります。営業再開が進み、景況感が改善するにつれて、今年は設備投資が増加すると予想しています。次回のベージュブックから、設備投資に関するヒントが得られるかもしれません。

4. 6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)

少数ながら強い意見を有する一部のメンバーが、FRBがテーパリングをすぐに開始すべきとする中で、今後のFOMC内に断層ができる可能性が存在

ここ数週間、米連邦準備理事会(FRB)がテーパリングの開始時期について近く議論する必要があるというFRB関係者の発言が相次ぎました。もっとも、パウエルFRB議長は現状、「テーパリングについて話すと口にする」ことにさえ消極的です。前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨には、「多くの参加者は、経済が委員会の目標に向かって急速に進み続けるのであれば、今後の会合のある時点で、資産購入ペースの調整に関する計画について議論を開始することが適切であるかもしれない、と示唆した」と記されていました。少数ながら強い意見を有する一部のメンバーが、FRBがテーパリング(資産購入の縮小)をすぐに開始すべきとする中で、FOMC内に断層ができるのではと思います。議事要旨において、FOMC内部での議論が活発化している兆候がみられるかもしれません。

5. 6月の欧州中央銀行(ECB)理事会

欧州ではヘッドライン・インフレ率が上昇しており、今後のECBの動向を注視

ここ数カ月、欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は金融緩和姿勢を強めており、ユーロ圏経済には追加の金融緩和が必要であると主張しつつ、近い将来のテーパリングに関する観測を一蹴しています。ただし、ヘッドライン・インフレ率(総合インフレ率)は上昇しており、ECBがテーパリングに関する議論を無視することはますます難しくなるでしょう。

6. 消費者のインフレ期待

FRBが金利を低く維持する主な理由の1つは、「インフレ期待が金融政策によってしっかりと繋ぎとめられている」ということである。今後の消費者のインフレ期待の動向を注視

消費者や企業の期待、エコノミストの予測、金融商品から推定されたものなど、さまざまなインフレ期待が存在します。消費者のインフレ期待は、長年にわたって相対的に低かったため、それほど重要ではありませんでした。しかし、ここ数カ月で状況は変化し、米国の消費者は現在、物価の上昇を強く認識しているようです。先週公表されたミシガン大学調査(確報値)では、インフレ期待が大きく上昇したことが示されました。消費者のインフレ期待が高止まりするかどうかは、FRBにとって重要です。FRBが金利を低く維持する主な理由の1つは、「インフレ期待が金融政策によってしっかりと繋ぎとめられている」ということです。このことから、今後の消費者のインフレ期待の動向を注視したいと思います。

7. 関税

バイデン政権の関税引き上げ法案の行方が懸念される

先週、米国商務省は、カナダ産材木に対する関税を2倍に引き上げる法案を提出しました。私は、関税が米国の消費者に課せられる税金の一種であるとの認識から、バイデン政権が、トランプ政権による関税をすぐに撤回するだろうと見込んでいましたが、おそらくそれはあまりにも理想主義的な考えだったのでしょう。関税が撤廃されなかっただけでなく、関税が貿易紛争を解決するための適切な方法であると商務省が考えていることが明らかになりました。私は、この法案への反発が高まり、今後数週間で米国通商代表部が関税に対する認識を改めることを願うばかりです。

8. 新型コロナウイルスの統計データ

ワクチン接種の遅れや変異ウイルスの感染拡大など、新型コロナウイルスの感染拡大は引き続きリスク要因として認識すべきだろう

新型コロナウイルスは1年以上にわたり、世界経済を大きく左右してきました。最近、多くの投資家が新型コロナウイルス以上にインフレを懸念するようになりましたが、感染症の世界的な大流行の再発は依然としてリスクです。コロナウイルスの感染率は、これまでウイルスの感染拡大をうまく制御してきた台湾やマレーシアなどの国で上昇しています。この原因として、ワクチン接種が遅れていることが考えられます。ワクチン接種が遅れている国はリスクにさらされる可能性があるため、状況を注視したいと思います。そして、インドはついに感染者数の「カーブが平たん化」してきましたが、警戒すべき状況が確認されています。同国では、新型コロナウイルスからの回復後、「ムコール症」と呼ばれる「黒い菌」に苦しんでいる感染者が確認されており、その致死率は50%となっています。また、先週、英国のジョンソン首相は、インドで増殖し、現在、60%近くのワクチン接種率にもかかわらず、英国で急速に広まっている変異ウイルスについて警鐘を鳴らしました。変異ウイルスによる感染が拡大した場合、英国はロックダウンの解除計画を延期する可能性があります。感染症とワクチン接種率を注視したいと思います 4

9. 地政学的紛争

世界経済が再開を続ける中、地政学的紛争が増加する可能性も

世界が再び開かれている中、地政学的な危機がより頻繁に起きています。ここ数週間で、イスラエルとパレスチナの間で紛争が勃発したほか、反体制派の拘束のためにベラルーシ政府は旅客機を強制着陸させました。中東の停戦は1週間続いていますが、先行きは不透明です。また、欧州の指導者たちはベラルーシを強く否難していますが、この恥ずべき国際法違反に対して追加措置が取られるかどうかは分かりません。世界中の経済が再開を続けていますが、問題の数は減少することはなく、増えるのではないかと思われます。

結論

長期投資家は、資産クラスの分散を維持し、株式への適切なエクスポージャーを持ち、株価の下落を買いの機会と見なすことが重要

つまるところ、これらのデータや発言が市場に影響するのであり、それら次第で市場ボラティリティが高まる可能性があります。投資家は、今夏に株価が大きく下落するとの予想を高めており、懸念が強まっているようです。特に2020年の株式市場が上向いたことを考えると、調整局面入りする可能性は常に存在します。しかし、私の意見では、今夏の調整局面が懸念されるとしても、長期投資家は自身の投資判断を変えるべきではありません。私は、現在の投資方針を維持すること、つまり資産クラスの分散を維持し、株式への適切なエクスポージャーを持ち、株価の下落を買いの機会と見なすことが重要であると引き続き考えています。

1.出所:CNBC、“S&P 500 gains slightly to wrap up 4th straight positive month, sits less than 1% from record high”、2021年5月27日。

2.出所:Ifo景況感指数、2021年5月25日。

3.出所:ダラス連邦準備銀行、“The Labor Market May Be Tighter than the Level of Employment Suggests”、2021年5月27日。

4.出所:ブルームバーグニュース、“Fear of Variant Poses Deadly New Dilemma for Boris Johnson”、2021年5月28日。

 

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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