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コロナ時代はMBAよりスキル?価値観と雇用に大きな変化

コロナ禍で人々のライフスタイルや価値観が変化した今、その影響がキャリアや雇用にも表れています。興味深いことに、「ビジネスエリートへのパスポート」といわれるMBA(経営学修士・経営管理修士)の人気が再燃する一方で、「スキルベースの雇用法(Skills-Based Hiring)」が注目を浴びるといった二極化が進んでいます。今回はコロナ時代の雇用動向について見ていきましょう。

コロナ禍でMBA人気が再燃している理由

MBA (Master of Business Administration)は、ビジネススクール(経営学の大学院)の修了者に与えられる学位で、プログラムを通してビジネスの知識やスキルを高めることで、経営のプロフェッショナルを目指すものです。

MBAの発祥地である米国では2012年以降、上位130のビジネススクールの全日制MBAプログラムの出願数が減少していましたが、現在はコロナ不況によって世界中のビジネススクールで出願数が大幅に伸びています。特にコロンビア・ビジネススクールやペンシルベニア大学ウォートンスクールなどのトップ校の2020年の出願数は、過去最高を記録しました。

人気が再燃した背景には、世界経済の不安定性があります。景気が低迷期に突入するとMBAの出願率が上昇するのは、「MBA取得者という肩書が就職やキャリアアップに有利に働く」という「MBA神話」が定着しているためです。

コロナ禍で表れた変化 雇用される側の意識も二極化?

一方で、「MBAはコロナ時代の需要にマッチしない」「MBAを取得すればキャリアアップが約束されている時代は終わった」という意見もあります。

遡ること140年前、米ウォートンスクールが世界初のMBAスクールを設立し、1908年に設立されたハーバード・ビジネススクールが現在のMBAの基盤を作ったといわれています。時代の変化に合わせてカリキュラムは変化してきたものの、変わらない基盤は「伝統的なビジネスの理論」です。

しかし、リモートワークが広範囲に普及し、ビジネス環境や消費者の意識が大きく変化した現在では、従来のビジネスの慣行や戦略が通用しなくなりつつあります。パンデミック以前のやり方にこだわると、時代に取り残されてしまうかもしれません。

米ビジネス教育スタートアップ、ブランチワーク(brunchwork)のポーリナ・カーピスCEOは、「2年間のビジネススクール教育は、今日のキャリアに求められるものを満たさない」と指摘しています。年間数千人のミレニアル世代と交流する同氏は、「MBAのような1回限りの教育より、今キャリアに必要なスキルと洞察力を得られる機会を求めているミレニアル世代が増えている」と述べています。このようにMBA熱が再燃する一方で、よりプラクティカルな教育の需要が拡大するという二極化が進んでいるのです。

コロナ時代、雇用者が重視するのは「実績のあるスキル」?

雇用市場でも、すでに変化の兆しが見えています。以前はMBA取得者の採用に積極的だった企業が続々とインターンシップをキャンセルする中、学位や資格よりもスキルや経験のある人材を重視する企業が増えているのです。

最近の例では、世界最大のビジネス特化型SNS、LinkedIn(リンクトイン)が、学位やネットワークを持たない候補者と雇用主の架け橋となる「スキルパス(Skills Path)」という新しいサービスを開始しました。学位や職歴といった従来の条件を重視する代わりに、すでに習得しているスキルを磨く、あるいはスキルのギャップを埋めるためのオンライン・トレーニングコースを候補者に提供し、雇用の機会と可能性を拡大することが目的です。

この新サービスは、自社の成功例によってインスパイアされたものです。LinkedInはコロナが拡大する中で国内営業サポートスタッフを募集した際、学位や職歴を重視する従来のアプローチを廃止し、スキルベースのアプローチを採用しました。

例えば、多くの飲食店のスタッフがコロナによって失業し再就職先を探していましたが、彼らは接客経験を通してカスタマーサービスセクターで働くために必要なスキルの70%を習得していました。そこで、残り30%を補うためのオンライン・トレーニングコースを提供し、修了者を面接した結果、約1,000人中219人が合格。実際に採用された28人の約4割は、サポートスタッフ業務未経験者でした。

製品管理担当ハリ・スリニバサン副社長は、「以前なら見過ごしていたセクターから、より早く効率的に人材を確保できた」と述べています。

もちろん、MBAがビジネスに重要なスキルや知識、経験などを得る有益な手段であることは、疑う余地がありません。しかしコロナ時代の新たな雇用市場においては、「実績のあるスキル」が学位や資格と同じぐらい、あるいはそれ以上に重要な要素となる可能性があるのです。

優秀な人材を求めている企業やキャリアアップを目指す人は、この変化に乗り遅れないように、広い視野を持って「時代の需要」を見極めるための洞察力を養う必要があるのではないでしょうか。

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