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米国株式市場は大きく下落:長期金利の上昇を受け、株価は一時、大幅に下落
一時的な調整なのか?:米国債利回りの上昇を折り込む一時的な調整と見込まれる
良好な経済ニュースが継続:ワクチン関連のニュースや景気刺激策などに支えられ、世界経済の見通しは明るい
FRBの利上げは避けられないと懸念する声
インフレ懸念が市場を支配する中、パウエルFRB議長が金利の長期的なコントロールについて言及しなかったことから、株式市場は下落
株式は週半ばまで売りに見舞われた
今回の株価下落は金利上昇を織り込むための一時的なものと見込む
良好な経済ニュースが継続
ワクチン関連や経済面での良好なニュースが多く確認される
結論
現在は買いの好機を探る良きタイミングと考えられる
前週のS&P500やダウ平均は一時下落したものの、前週末比では上昇
私は、前週の米国株式市場を見て、まるで「リップ・ヴァン・ウィンクル」の物語だ、と思いました。それは、米国の植民地時代を舞台にした話です。口うるさい妻にうんざりしていた主人公のリップ・ヴァン・ウィンクルは、犬と一緒に山にハイキングに出掛けました。その途中、リップは不思議な男性のグループに出会いました。彼らから珍しい飲み物をもらったリップはそれを飲み、眠りこけてしまいました。その後、リップは目を覚まし、20年以上が経過したことに気づきました。そして、リップが寝込んでいた間、独立戦争が勃発し、多くの友人が殺されていたのです。
前週の株式市場と、リップ・ヴァン・ウィンクルの話はどう関係しているのでしょうか?それは、前週の初め、投資家が昼寝に入り、金曜日の夜まで目覚めなかったとしたら、S&P500種指数とダウ平均株価は前週末比上昇したと思ったでしょうが、その途中には下落や反発など大きな変動があったということです。
前週は、投資家にとって非常に困難な一週間でした。インフレ率の上昇により米連邦準備理事会(FRB)が利上げを余儀なくされるだろうとの不安や懸念が市場を支配し、その見通しから米10年国債利回りが上昇しました。FRBがイールドカーブのロングエンド(長期側)で金利のコントロールができなくなるのではという懸念もくすぶりました。
しかし、これは驚くべきことではありません。実際、期間が10年以上の国債はインフレ期待などの投資家の見方に大きく左右されるため、中央銀行がその金利をコントロールすることは非常に困難です。FRBは、政策金利を引き上げないことで投資家を安心させることはできますが、市場関係者の全ての疑念を解決できるわけではなく、それが前週に見られた動きでした。また、前週の木曜日の米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の発言により、株価はさらに下落しました。一部の市場参加者は、FRBが「オペレーション・ツイスト」などを使用して長期的に金利をコントロールするとパウエル議長が発表することを期待していましたが、そのような発表はなく、市場参加者は失望しました。
問題は、米10年国債利回りが大幅に上昇した場合、特にその上昇が急速なときは、株価がよく下落することです。前週、数日にわたり、一部の銘柄が下落した状況がまさにそれです。これは、経済成長の見通しが改善し、インフレが懸念されるときに見られる動きです。金利は経済成長見通しの改善に合わせて調整され、株式は金利の上昇に合わせて調整しました。金融市場では、調整は移行を意味しており、それは本質的に一時的なものです。そして、今回の株価の調整は、株式が金利の上昇を折り込むための、一時的なものと考えます。
昨年の同時期には、反対の現象が起こっていました。2020年2月と3月には、株式市場の大幅かつ急速な調整だけでなく、経済見通しの悪化が見られました。2020年2月初旬の米10年国債利回りは1.65% 1 でしたが、新型コロナウイルスの感染が拡大し、経済見通しの不透明感が高まると、新しい経済の現実に適応し米10年国債利回りは急速に低下、2020年3月9日には0.54%となりました 2 。S&P500種指数は、新たな経済の現実と企業利益への潜在的な影響に適応し、2月中旬から急落、その後、FRBが市場介入した3月後半に底を打ちました。そして、現在の長期金利は、パンデミック前の水準に戻ってきています。過去、米10年国債利回りが上昇するときは、通常は株価も上昇するものです。今回の長期金利上昇は、(過度なインフレではなく)経済成長の加速と企業利益の改善によるもので、過去にもよく見られた動きです。そして、このような局面では、市場内のリーダーシップが変わることもよくあります。
前週水曜日の株価の下落時には、景気敏感セクターであるエネルギーと金融はむしろ上昇し、最終的にはS&P500種指数とダウ平均株価が上昇して週を終えました。実際、2021年2月のS&P500種指数の上昇率はふるいませんでしたが、エネルギーと金融セクターは2ケタの上昇率を記録しました。最も景気に敏感な資産がアウトパフォームしたということは、市場は経済の大きな回復を見越していることが伺えます。そして、このような局面では、小型株が大型株をアウトパフォームします。つまり、現在は株式への投資を辞めるタイミングではなく、どのセクターやどの領域が恩恵を得るのかを理解する局面と考えます。さまざまな分野で混乱が起きている時こそ、よりアクティブな判断が求められるのです。
前週のブログを書いて以降、私は世界経済の近い将来について、さらに勇気づけられています。
・米国では、バイデン政権が予防接種のスケジュールを早めると発表しました。5月中旬までにすべての米国成人に予防接種を行うための、十分な数のワクチンが供給される見込みです。
・米国の実質国内総生産(GDP)の成長率の予測は、引き続き上方修正されています。新たな景気刺激策が議会を通過すれば、今年の成長率は8%から10%にまで高まる可能性があります。
・中国は2021年のGDP成長目標を6%以上に設定し、今年は1,100万人の新規雇用が創出されると発表しました 3 。2021年の目標を発表したことは、中国当局の経済への自信の表われとも取れます。なお、同値の市場コンセンサスは約8%です 4 。
・私は、家計の繰り越し需要の存在と貯蓄の増加を考えると、多くの国で個人消費が大幅に増加すると考えています。そして、コロナワクチンが着実に普及すれば、設備投資支出も大幅に増加する可能性が非常に高いと思います。
また、今後を考える上で、次の2つを念頭に置いています。
・パウエルFRB議長の言葉を借りれば、私はインフレが先々の「問題」になるとは思っていません。確かに経済が回復するにつれてインフレ率が上昇する可能性はありますが、それは一時的なものになると思います。そして、そのインフレが良性であると考えられる理由もいくつかあります。例えば、労働市場には依然として大きな緩みがあり、その改善に時間がかかることです。また、人口動態や技術革新などのインフレ率を低下させる長期的な構造要因が存在することです。
・米10年国債利回りがここから急速に上昇し、金融市場が混乱する場合には、FRBは何らかの行動を見せるでしょう。2020年6月、FRBはイールドカーブのコントロールを実現できる金融政策ツールを検討しましたが、当時は、そのような方策を実施する必要がないと判断されました。ただし、翌7月の会議の議事要旨には、将来の環境変化に応じて、その実施は可能であるとされています。議事要旨では、「多くの参加者は、現在の環境では利回りの上限目標の設定は正当化されないと判断したが、今後において状況が大きく変化した場合には、委員会が再検討するオプションであり続けるべきと考えられる。数名の参加者は、資産購入に関するフォワードガイダンスを強化する手段としての利回り上限目標の価値について言及し、それは金融政策の経路に関する市場の期待の好ましくない動きへの保険を提供するとした。また、委員会が二つの目標を追求するための資産購入金額を制限するのに役立つ手段として、利回り上限目標は価値があると言及された 5 。」とされています。
現在のような、金融市場に短期的な不安があるものの、経済の長期の趨勢が上向きな時期は、買いの好機を探るタイミングと思います。現在の市場の動揺を生み出している要因や、過去に見られた同様の局面を理解することは、投資家の意思決定に役立つことでしょう。
1.出所:ブルームバーグL.P.、2020年2月6日。
2.出所:ブルームバーグL.P.。
3.出所:ウォール・ストリート・ジャーナル、“China Sets 2021 GDP Growth Target at Over 6%”、 2021年3月5日。
4.出所:FocusEconomics Panel。
5.出所:米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨、2020年7月28-29日。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2021-039