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ワクチン接種により「日常生活」が戻る イスラエル

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イスラエルでは、11カ月ぶりにコンサートや劇場公演が再開

〔要旨〕

新型コロナウイルスのワクチン接種で世界をリードするイスラエル:イスラエルは、人口当たりのワクチン接種率が世界で最も高い

他国でもワクチン接種が進展:米国と英国は、ワクチン接種プログラムを強化

日常生活への回帰の期待が高まる:景気回復への期待が、米10年債金利の急上昇の主な要因になったと見込む

ワクチン接種で世界をリードするイスラエル

新規感染者数は劇的に減少し、ワクチン接種完了者は「グリーン・パス」の発行によりイベントへの参加が可能に

他の国でもワクチン接種の取り組みが進展

英国や米国では大きな進展が確認される

高まる日常生活の回復への期待

ジョンソン英首相による海外旅行解禁を示唆する発表後、英国ではフライトやパッケージ旅行の予約数が急増

個人消費は「きつく巻かれたばね」

期待される消費活動の急速な回復

投資家は、長期金利上昇とそれに伴うボラティリティの上昇は起こるものとして、受け入れるべきだろう

イスラエルのワクチン接種に関わるケーススタディは、他国の「重要な基準」となる

私がビジネススクールに在籍した1990年代後半、頻繁に使用され、効果を発揮した教育用ツールの1つがケーススタディでした。他の企業や業界が実行したこと、しなかったことからの学びは、理解と洞察を得るのに非常に役立ちました。現在、私は非常に興味深いケーススタディから理解と洞察を得ています。それは、新型コロナウイルスのワクチン接種におけるイスラエルの成功です。これはビジネススクールの教科書での事例ではなく、今現実に起こっていることです。私は、有効なワクチン接種の戦略と健康と経済への影響のケーススタディとして、イスラエルは「重要な基準」となると考え、注目しています。

ワクチン接種で世界をリードするイスラエル

イスラエルの新規感染者数は劇的に減少

イスラエルは、人口当たりのワクチン接種が最も進んでいます。2月までに、高齢者(70歳以上)の84%と全人口の50%弱がワクチンを接種しました 1 。専門家の言う、集団免疫を獲得するのに必要とされる人口の56.5-81.5%には達していません 2 が、足元のイスラエルの新規感染者数は劇的に減少しています。

ワクチン接種完了者に発行される「グリーン・パス」により、イベントへの参加が可能に

そして、イスラエルでは一部のホテル、ショッピングモール、市場、ジム、美術館などの営業が再開されています。ワクチン接種を完了(またはウイルスから回復)した人々は、まったく新しい世界を楽しんでいます。政府はワクチン接種の完了した者に「グリーン・パス」という、コンサートやその他のイベントへの参加が可能な証明書を発行しています。このようなイベントが(マスク着用やソーシャル・ディスタンスなどの予防措置を講じながら)開催されるのは11カ月ぶりで 3 、例えば、前週の月曜日、エルサレムの劇場では、今週末に開催される演劇の本稽古を観客に披露しました。

他の国でもワクチン接種の取り組みが進展

英国や米国ではワクチン接種の取り組みで大きな進展が確認される

イスラエルで起きている事は、米国などの他の経済圏で人々に十分にワクチン接種が行き渡った場合に何が起きるかを知るうえで、よい例となるでしょう。私は、経済活動の再開による個人消費の大きな増加を期待しており、この先数週間のイスラエル経済の状況は、他国の将来を考える上でも注視したいと思います。例えば、ワクチン接種の取り組みで大きく前進している英国では、ジョンソン首相が前週、「英国の経済活動は6月に完全に再開できると楽観視している」と述べました。米国でも、バイデン政権が、ワクチン接種を希望するすべての人は、今年の晩夏までにワクチン接種を受けられる見込みであると発表するなど、大きな進展が見られています。そして、前週末、米国食品医薬品局がジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチン(接種は1回で完了)を承認し、今週は300万から400万回分のワクチン出荷予定です。これにより、予想よりも早くワクチン接種が進む可能性もあるでしょう 4

高まる日常生活への回帰への期待

パンデミック終了後に人々が行いたい「バケットリスト」

一生のうちにやってみたい事を書き出した「バケットリスト」には、一生に一度限りの冒険がしばしば含まれます。現在、人々が新しいバケットリスト、つまり、パンデミックが終わったときにやりたいことについて話しているのをよく耳にします。そして、一度限りの冒険に加えて、コロナ以前の日常生活に戻れること、つまり、劇場、コンサート、映画、旅行、外食、ショッピングモールなど、日常生活に豊かさと多様性を与えてくれる行動が再び可能になることを、人々はとても楽しみにしています。

ジョンソン首相による海外旅行解禁を示唆する発表後、英国ではフライトやパッケージ旅行の予約数が急増

将来を考えるうえで役立つもう1つの事例は、英国にあります。前述したように、英国のジョンソン首相は前週の月曜日に、今後数カ月で英国の経済活動を再開するための、ロックダウン緩和計画を発表しました。ジョンソン首相は、海外旅行を早ければ5月17日に解禁する可能性を示唆し、それを聞いた英国の消費者は直ちに反応しました。いくつかの欧州の航空会社ではフライトの予約数の大幅な増加が確認されています。世界最大の旅行会社であるTUIでは、ジョンソン首相の発表後、一晩で予約数が500%増加、ヴァージン・アトランティック航空もその日のオンラインチケット販売が大幅に増加、欧州の格安航空会社イージージェットも、首相の発表後、数時間で航空券の販売が337%増加し、ホリデーパッケージの予約が630%増加したと発表しました 5 。イージージェットのヨハン・ラングレン最高経営責任者(CEO)は「旅行への繰り越し需要が明らかに存在している 6 。」 をコメントしましたが、それは少し控えめな表現かもしれません。

個人消費:「きつく巻かれたばね」

経済活動の再開後、期待される消費活動の急速な回復

以前にも述べましたが、私は個人消費を「きつく巻かれたばね」のようだと考えています。家計の貯蓄率が上昇していることを考えると、米国や他の国々では需要がうっ積し、お金を積み上がっています。米国では、2021年1月時点の消費者の貯蓄率は20.5% 7 であり、個人貯蓄はパンデミックの結果、2019年末の1.2兆米ドルから、2020年末には2.3兆米ドルと、ほぼ倍増しました 8 。他の国でも、非常に高い貯蓄率という点で、同様の現象が確認されています。経済活動の再開後、人々が貯蓄のほんの一部を消費した場合の景気回復の強さを想像してみてください。私は、人々がこの一年我慢してきたうっぷんを晴らしていくものと思います。

投資家は、金利上昇とそれに伴うボラティリティの上昇は起こるものとして、受け入れるべきだろう

私は、この力強い景気回復への期待が、前週の米10年国債利回りの急上昇の大きな要因だと考えます。以前にもお伝えした通り、インフレだけでなく、複数の要因が10年国債利回りには影響を及ぼしています。現時点で最も影響を与えている要因は、イスラエルの経済活動の再開に見られたような非常に明るい未来です。それは前週の株式市場の下落と、相入れるものではありません。株式市場の投資家は、イールドカーブのスティープ化(長短金利差の拡大)がポジティブなサインであることを忘れているかのようです。投資家は、米10年国債利回りの上昇を恐れるのではなく、利回り上昇とそれに伴うボラティリティの上昇は起こるものとして、受け入れていくべきでしょう。

そして、これらの動きは、景気回復時に好調に推移するシクリカル株や小型株についてはプラスとなるでしょう。

1.出所:The Times of Israel、“Israel holds its first outdoor concert, for COVID ‘green pass’ holders only”、2021年2月25日。
2.出所:The Lancet。
3.出所:The Times of Israe、“Israel holds its first outdoor concert, for COVID ‘green pass’ holders only”、Feb. 25, 2021年2月25日。
4.出所:The Hill、“White House to ship 3 million to 4 million doses of Johnson & Johnson vaccine to states”、 2021年2月24日。
5.出所:The Guardian、“Holiday bookings surge in UK after lockdown exit plans revealed”、2021年2月23日。
6.出所:AP通信、“Britons rush to book holidays amid plans to end lockdown”、2021年2月23日。
7.出所:米国商務省経済分析局。
8.出所:Statista Research。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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