子どもには、よりよい教育環境で学ばせたいものです。私立中学校だけでなく公立中高一貫校という選択肢も増え、中学受験/受検を考える家庭も多いのではないでしょうか。しかし、中学校が情報提供や学習指導をしてくれる高校受験と違い、中学受験は家庭で情報を集めなくてはなりません。
何にいくらかかるのか、まずはお金のことをしっかり把握しておくことが大切です。
目次
中学受験にかかる費用を目的別に考える
中学受験費用は、以下の3つに大別できます。
1.塾費用
2.受験費用・受験準備費用
3.入学費用・授業料
それぞれの金額と必要なタイミングをおさえておきましょう。
1.塾費用:小学校4年生ごろから
一般的に、中学受験塾のカリキュラムは新4年生からスタートします。春休みから授業を始めるために、3年生の2月頃から入塾テストが実施されます。
入塾費用と基本的な授業料、教材費用
大手進学塾や中学受験塾は、それぞれ指導方針や実績、得意分野などが異なります。今回は、費用面に焦点を絞って比較してみましょう。
SAPIX | 日能研 | 四谷大塚 | 早稲田アカデミー | ||
---|---|---|---|---|---|
入塾金 | 3万3,000円 | 2万2,000円 | 2万2,000円 | 2万2,000円 | |
授業料 | 4年生 | 4万1,800円/月 | 2万900円/月 | 3万6,300円/月 | 2万7,720円/月 |
45万9,800円/年 | 22万9,900円/年 | 43万5,600円/年 | 30万4,920円/年 | ||
5年生 | 5万2,800円/月 | 2万6,334円/月 | 4万5,100円/月 | 4万4,550円/月 | |
58万800円/年 | 28万9,674円/年 | 54万1,200円/年 | 49万50円/年 | ||
6年生 | 5万9,950円/月 | 3万2,076円/月 | 前期5万7,750円/月 | 4万5,210円/月 | |
後期7万9,750円/月 | |||||
65万9,450円/年 | 32万760円/年 | 76万7,250円/年 | 49万7,310円/年 | ||
別途費用 | ・入塾テスト代3,300円 ・副教材費(主教材費は授業料に含む)など |
・教材費など | ・教材費など | ・年会費2,900円/月(学年・コースによって異なる) ・教材費など |
※2021年2月1日時点の情報を基に作成。年度によって金額が異なる場合があります。
※基本的な4教科コースの価格で、志望校やコース、教室によっては金額が異なります。年額は11ヵ月分(日能研6年は10ヵ月)で計算しています。
上記のような主要大手塾に通った場合、入塾後は基本的な授業料だけでも、およそ年間50万円、3年間で150~200万円ほどかかります。しかし、塾費用はこれだけではありません。
-春期・夏期・冬期講習は、別途費用が発生
春・夏・冬休みには、集中的な講習が用意されています。参加は任意としているところが多いですが、周りの皆が受講するので、我が子にも受けさせる、というご家庭が多く、実質必修のようなものです。
5年生までは年間10~25万円前後、特別講習が増えて費用も倍増する6年生は年間40~50万円以上かかることもあります。
SAPIX | 日能研 | 四谷大塚 | 早稲田アカデミー | ||
---|---|---|---|---|---|
4年生 | 春期 | 2万8,600円 | 1万5,598円 | 2万5,850円 | 3万5,200円 |
夏期 | 8万円 | 3万8,016円 | 9万1,300円 | 5万5,500円 | |
冬期 | 3万5,200円 | 2万9,128円 | 2万5,850円 | 3万5,700円 | |
小計 | 14万3,800円 | 8万2,742円 | 14万3,000円 | 12万6,400円 | |
5年生 | 春期 | 3万800円 | 2万7,896円 | 7万3,700円 | 5万4,300円 |
夏期 | 10万3,000円 | 11万5,884円 | 12万4,300円 | 11万6,200円 | |
冬期 | 3万7,400円 | 5万9,598円 | 9万5,700円 | 5万5,500円 | |
小計 | 17万1,200円 | 20万3,378円 | 29万3,700円 | 22万6,000円 | |
6年生 | 春期 | 4万1,800円 | 6万5,142円 | 7万4,250円 | 5万8,300円 |
夏期 | 18万9,000円 | 16万9,128円 | 11万5,500円 | 18万5,200円 | |
冬期 | 4万9,680円 | 15万4,764円 | 6万9,850円 | 7万6,700円 | |
特別講習 | ・GW特訓:4万1,800円 ・志望校別特訓:6万4,800円 ・正月特訓:4万9,680円 ・SS特訓:25万5,960円 など |
・入試問題研究特別講座(前期・後期):各6万3,936円 など |
・8月特訓:6万6,000円 ・正月特訓:1万3,200円 ・志望校別特別講習:7万4,250円など |
・夏期集中特訓:6万7,000円 (夏期合宿:9万2,000円) ・正月特訓:5万9,300円など |
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小計 | 69万2,720円 | 51万6,906円 | 41万3,050円 | 44万6,500円 | |
合計 | 100万7,720円 | 80万3,026円 | 84万9,750円 | 79万8,900円 |
※2021年2月1日時点の情報を基に作成。年度によって金額が異なる場合があります。
※基本的な4教科コースの価格で、志望校やコース、教室によっては金額が異なります。
-その他オプションや家庭学習用教材費用
授業で使う教材とは別に、家庭学習用の教材を用意している塾もあります。1冊1,000~2,000円程度で、希望者が購入します。
また、授業の追加や個別指導などさまざまなサポートがありますが、それぞれ別途費用がかかります。
毎月数回行われる独自のテスト
月例テストや志望校の合格判定テスト、本番さながらの模擬試験など、多くのテストが用意されています。
無料のものもありますが、有料の場合は1回あたり4,000~6,000円程度の受験料がかかります。例えば日能研では、有料テストを年間20回以上(4年生5回、5年生5回、6年生10回)も受け、さらに記述模試など、追加で有料テストを受ける場合には3年間で8〜9万円以上の受験料が必要です。
意外とかかる通塾諸費用 交通費・文房具費用など
塾までバスや電車を使う場合は、交通費がかかります。連絡用に携帯電話を持たせる家庭も多く、その購入費用や月額使用料も必要です。
また、鉛筆やシャーペンの芯、消しゴム、ノートなどを驚くほど消費します。それだけ勉強しているということで、前もって多めに購入しておくと安心です。また、何度も同じ問題を解くためのコピー代もかかります。
3年間の塾費用をすべて合わせるといくら?
SAPIX | 日能研 | 四谷大塚 | 早稲田アカデミー | |
---|---|---|---|---|
入塾 | 3万6,300円 | 2万2,000円 | 2万2,000円 | 2万2,000円 |
4年生 | 62万3,600円 | 44万187円 | 59万8,600円 | 48万6,120円 |
5年生 | 77万2,000円 | 66万8,658円 | 85万4,900円 | 77万4,700円 |
6年生 | 137万2,170円 | 107万7,812円 | 120万300円 | 100万3,560円 |
合計 | 276万7,770円 | 218万6,657円 | 265万3,800円 | 226万4,380円 |
※2021年2月1日時点の情報を基に作成。年度によって金額が異なる場合があります。
※基本的な4教科コースの価格で、志望校やコース、教室によっては金額が異なります。
月額授業料・講習費用・テスト費用・教材費などを合わせると、3年間の通塾費用は約220万~280万円です。志望校やコース選択によっては、300万円を超えることも珍しくはありません。
ちなみに、公立中高一貫校対策塾の大手enaでは、公立中高一貫校向けのクラスに3年間通った場合の通常授業料・模試教材費は122万2,000円です。それに春季講習(110,160円)夏季講習(182,680円)冬期講習(223,000円)を加えると総額1,737,840円となります。ただし、日曜特訓、合宿、クリスマス特訓などのオプションを付けるとさらに費用はかさみます。
習熟度や体力を見ながら、子どもに合わせて調整することも大切です。
2.受験・受験準備費用:6年生から
6年生になると、実際に受験のための費用が必要になります。
受験料
公立中高一貫校 | 2,200円 |
国立大学附属中学校 | 5,000円 |
私立中学校 | 約2万5,000~3万円 |
※2021年2月1日時点の情報をもとに作成しています。
公立中高一貫校、国立大附属中学校の受検料は一律です。私立中学校の受験料は、学校によって異なりますが、おおむね3万円以内です。
「挑戦校(本命)」や「堅実校(すべり止め)」など、5~10校ほど受ける場合、受験料は15~25万円程度見ておく必要があります。
-同じ学校を複数回受験する場合は割引が適用されることもある
私立中学校では、同一受験生が複数回受験することも可能です。
中には、追加受験分の受験料が安くなる学校もあります。割引率は学校によりますが、通常受験料が2万5,000円で追加分が1万円や5,000円と大きく割り引かれるところもあります。
-すべり止めの延納金に注意
中学受験の入学手続きは、合格発表から平均2日間で締め切られます。そのため、本命校の発表より前にすべり止め校の締め切りがくる場合、先にその学校の入学手続きをして、本命の試験・発表を待つことになります。
延納金制度を設けている学校では、入学手続時に所定の延納金を納入します。本命に合格し、すべり止め校への入学を辞退した場合は、平均5万円程度の延納金のみの出費で済むわけです。
延納金制度がない学校では、入学辞退時に入学金以外の諸費用のみ返金されます。私立中学校の入学金は20万~35万円のところが多く、手痛い出費といえます。
志望校を選ぶ際は、手続きのスケジュールと延納金制度の有無も確認しておきましょう。
受験の準備段階でかかる費用
中学受験では入試費用以外に、準備費用もかかります。
-学校独自の過去問題集を発行しているところもある
出版社が発行する過去問題集のほかに、学校が独自に過去問題集を発行していることもあります。本命校ならば入手しておきたい人もいるでしょう。1冊1000~3,000円程度です。
-取得しておくと有利な検定も
目安級と検定料 | |
英語検定 | 5級3,000円/4級3,600円 |
数学検定 | 5級4,000円/4級4,000円 |
※塾などで団体受験することで、安くなる場合もあります。
英語検定や数学検定などに合格すると、小学生として十分すぎる英語力・数学力を持っていることを証明できます。小学校が作成する出願書類に記入することができ、学校によっては有利に働く場合もあります。
-見学や授業体験などの交通費は保護者分も必要
学校見学や説明会、公開授業や体験授業、あるいは行事見学など、志望候補の学校に行く機会は少なくありません。通常、車での来校は制限されているため、交通費がかかります。
子どもは小学生料金ですが、保護者は大人料金です。これが意外とかさむものなのです。
3.入学費用:6年生の3学期
合格後に必要な初年度費用は、次の通りです。
授業料 | 行事費・設備費 ・納付金等 |
学校教育費合計 | |
公立中高一貫校 | - | 13万8,961円/年 | 13万8,961円/年 |
国立大学附属中学校 | - | 13万8,961円/年 | 13万8,961円/年 |
私立中学校 | 42万8,574円/年 | 64万2,864円/年 | 107万1,438円/年 |
※文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」2.調査結果の概要より
私立中学の場合、年間費用は平均107万円
私立中学校の学費は学校によって異なりますが、平均は107万円です。初年度は、制服など通学用品を作るため高額になるケースも多いでしょう。学校によっては寄付金や父母会費も必要です。
公立中高一貫校は授業料・教科書費用が無償
公立校は授業料・教科書費用が無償ですが、設備費や教科外活動費、PTA会費などは納めます。自宅からの距離によっては、交通費も必要です。
国立大附属中学校は、併設高校に注意
国立中学校は国立大学教育学部の附属機関であり、教育研究や実習の場として機能しています。最新の教育研究に基づく授業を無償で受けられる点が魅力ですが、教育機関への寄付を求められる場合もあります。
学校によっては「内部進学枠が少ない、併設高校がない・共学ではない」といった理由で、3年後に高校受験が待っています。国立中学校は、中高一貫校とは限らないため注意が必要です。
中学受験 、3年間の費用まとめ
目指す中学校の種別ごとに、3年間でかかるおおよその受験/受検費用を概算しました。
私立中学 | 公立中高一貫校 | 国立大附属中学校 | ||
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塾費用 | 3年間 | 約250万円 | 約180万円 | 約250万円 |
受験費用 | 受験料1校あたり | 約3万円 | 2,200円 | 5,000円 |
併願・延滞金など含む | 約30万円 | 約30万円 | 約30万円 | |
入学費用 | 入学金 | 約20~30万円 | なし | なし |
授業料・設備費等 (初年度) |
約110万円 | 約14万円 | 約14万円 | |
合計 | 約420万円 | 約224万円 | 約295万円 |
3年間の通塾代と受験費用、初年度の学費を合わせると、国公立中学で約220〜300万円、私立中学では約420万円もの費用がかかることがわかります。
6年生の1年間は塾費用も高くなり、受験費用や入学費用も支払います。本番を前に力尽きないために、資金計画を立てておきましょう。
「なぜ受験したいのか」をよく考えることが大切
中学受験は、子どもの体力面・精神面に大きな負荷をかけます。親にとっても、経済的な負担が少なくありません。そのため、「なぜ受験をしたいのか」「なぜこの学校を選ぶのか」を各家庭でよく考えることが大切です。
その上で受験することを選んだ場合は、余裕をもって子どもを応援してあげられるように、早めの資金準備をおすすめします。