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丑(うし)は2021年の世界経済の象徴となるだろうか?

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中国の旧正月と、インフレと景気刺激策への姿勢を維持するFRB

〔要旨〕

丑(うし)年の始まり:丑(うし)年は、穏やかで安定し、経済的に繁栄する年と言われている。世界の経済活動が再開し、力強い景気回復が確認される1年になることを望む

FRBの一貫した主張:パウエルFRB議長は、完全雇用の実現に強い決意を示し、インフレは重大なリスクではなく、超緩和的な金融政策を維持するとの発言を繰り返す

分散投資の重要性:ポートフォリオの分散化は、株価下落リスク、インフレリスク、および金利リスクの影響を和らげるだろう

丑(うし)年の世界経済はどのような1年になるだろうか?
丑(うし)年は、穏やかで安定し、経済的に繁栄する年と言われている

インフレと景気刺激策について同様の主張を繰り返すFRB
パウエル議長は完全雇用の実現に強い決意を示し、インフレ率が急上昇したとしても、それは一時的なものと見なすと発言

ポートフォリオの分散化は、リスクの緩和に役立つだろう
①長期的な視点の維持、②ポートフォリオの十分な分散化、③投資方針を遵守、④規律と冷静さ―が長期的な投資目標の達成に重要

丑(うし)年の始まり

旧正月を迎え、丑(うし)年が始まりました。元来、子(ね)年は大きな変化や災害が発生するなど、波乱に満ちた年と言われているので、子(ね)年が終わったことに、皆さん、喜んでいることでしょう。面白いことに、ネズミと牛は奇妙な関係があります。元日に多くの動物が競争をし、1番から12番目までに到着した動物をそれぞれ1年間、動物の王とするというおふれが出され、それが十二支となった、という昔話をご存じでしょうか。その物語では、ネズミは川を渡ることができないので競争に勝てないと考え、牛をだましてその背中に乗りました。牛が川を渡り終わると、ネズミは牛の背中から飛び降りて1着となり、牛が2着となりました。それが、牛が干支(えと)で1番目ではなく、2番目である理由とのことです。

丑(うし)年は、穏やかで安定、そして経済的に繁栄する年

丑(うし)年は、穏やかで安定しており、経済的に繁栄する年と言われています。牛は力強く、頑丈で、勤勉です。私は、2021年が、世界経済の活動再開により力強い景気回復を示し、人々が新型コロナウイルスのワクチンの接種により「日常」の生活を取り戻すことを願っています。また、干支(えと)には十二支だけでなく「木・火・土・金・水」の五行もあり、今年は「金」の年に当たります。中国の道教思想では、金は、堅固、弾力性、持続性、そして決意を意味します。私は、これらが今年の世界経済の特徴を示すように思います。丑(うし)年の今年、ワクチンが広範に供給されるまでの新型ウイルスの逆風にもかかわらず、世界経済は堅調に回復しています。そして、「金」は、私たちが集団免疫を獲得し、経済再開のために必要なワクチンを接種する注射器を象徴しているのかもしれません。

インフレと景気刺激策について同様の主張を繰り返すFRB

①現時点でインフレは重大なリスクではない、②FRBは超緩和的な金融政策を維持する—との主張を繰り返すパウエル議長

前週の大きなニュースの1つは、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長によるニューヨーク経済クラブでのスピーチです。その講演で、パウエル議長は、①現時点ではインフレは重大なリスクではない、②FRBは超緩和的な金融政策を維持する—と述べ、最近の演説での主張を繰り返しました。インフレについて、パウエル議長は、2020年2月の失業率が低水準であったにもかかわらず、インフレが比較的低水準だったことに言及し、「新型コロナウイルスの世界的大流行により雇用状況は悪化しており、インフレ率が上昇を示す懸念は考えてはいない。」と述べました。また、パウエル議長は、追加の景気刺激策で経済が過熱する可能性があるとの見通しに否定的な立場を示し、パンデミックが残した経済の傷あとをいやすのに「何年も」かかる可能性があると述べました 1

パウエル議長は完全雇用の実現に強い決意を示す

また、金融緩和政策の維持について、パウエル議長は、FRBは過去の過ちから学んでおり「忍耐強く緩和的な姿勢を維持する」と強調しました。また、最大雇用は「包括的な目標」であると述べ、「最も経済的に困難な立場にある米国人」の厳しい雇用環境に大きな懸念を示しました。さらに、追加の財政出動の必要性を強調し、FRBは景気回復を支えるために非常に緩和的な金融政策を維持するとしました。このように、パウエル議長は、前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見での重要なポイントを繰り返しています。

世界金融危機時にブレークイーブンインフレ率は大きく上昇したが、インフレは発生せず

ただし、パウエル議長がこのように主張を繰り返したにもかかわらず、米10年国債利回りは2020年3月以来の水準に上昇しており、これはインフレ期待が大幅に上昇したためと考えられます。財務省証券の利回りに影響を与える要因は複数ありますが、インフレ期待を測るものとしてブレークイーブンインフレ率、つまり米10年国債利回りから米10年物価連動債利回りを差し引いた値が注目されます。過去1年間、当数値は、2020年3月19日に記録した0.50%の最低値から2.21%と大幅に上昇しました 2 。これは、過去1年以上にわたり確認されなかった高い水準です。ここで世界金融危機時を振り返ってみると、ブレークイーブンインフレ率は2008年11月の0.04%から2009年12月には2.37%に上昇し、この時、インフレ懸念は大きく高まりました 2 。その後、ブレークイーブンインフレ率はさらに上昇したのですが、最終的には、当数値がインフレ率を正しく予測しないことが明らかになっています。おそらく、今回も同様のことが起こるでしょう。そして、インフレ率が急上昇したとしても、FRBはそれを一時的なものと見なし、非常に緩和的な姿勢を維持するとしています。

ポートフォリオの分散化は、リスクの緩和に役立つだろう

①長期的な視点の維持、②ポートフォリオの十分な分散化、③投資方針を遵守、④規律と冷静さ―が長期的な投資目標の達成に重要

前週のレポートでは、株式市場に関する私の見解を述べましたが、皆さまからは引き続き、株式市場がバブルに陥っているとの懸念が聞こえてきます。ただし、私は、現在の金融政策の継続と2021年の力強い経済回復を予想しており、株式、転換社債、ハイイールド債などのリスク資産や、投資適格債にポジティブな見通しを維持しています。もちろん、投資ユニバース全体を見ると、投機的なバブルに陥る可能性のある領域や、株価バリュエーションがストレッチしている領域も見受けられます。そして、短期的には株式市場が調整局面に直面する可能性もありますが、それは、リスク資産に追い風である現在の金融政策環境下においては、むしろ投資機会と見なされると考えます。また、1989年に株価がピークを打ち、その後、前回の高値を完全に回復していない日本株式で見られるように、バブル崩壊からの回復には非常に時間がかかる可能性も認識しています。しかし、それこそが資産クラス内と資産クラス間の幅広い分散が非常に重要であると私が信じる理由であり、それは株価下落リスク、インフレリスク、金利リスクなど、ポートフォリオが直面する様々なリスクの影響の緩和に役立つと考えます。この話は、急騰する暗号通貨やSNSサイト上で聞こえる億万長者の話と比べると非常に退屈に聞こえるかもしれませんが、長期的な視点を維持し、ポートフォリオを十分に分散化し、投資方針を遵守し、規律と冷静さを保つことが、投資家の長期的な目標を達成するために重要だと考えます。

1.出所:Speech by Chair Powell on getting back to a strong labor market – Federal Reserve Board 。
2.出所:Federal Reserve Bank of St. Louis economic data。

1.出所:ブルームバーグL.P. 。
2.出所:ブルームバーグL.P. 。

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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