リーダーが実践すべき部下を動かす「2:6:2の法則」

チームとして人を動かすには

「部下が思うように動いてくれない」組織内で人の上に立つ人であれば、おそらく一度はこうした悩みに直面したことがあるでしょう。

産業能率大学が2015年に実施した「従業員数100人以上の上場企業に勤務し、部下を1人以上持つ課長」を対象にしたインターネット調査(有効回答651人)によると、課長がもっとも感じている悩みは「部下がなかなか育たない」(42.7%)というものでした。部下とのコミュニケーションについての有効な施策を聞くと、「飲み会」が52.7%とトップですが、「有効だと思う施策はない」も22.6%の結果となりました。

もともと、管理職になる人は「自分自身が優秀だから昇進した」と思っている方もいるかもしれませんが、「自分が動く」のと「他人を動かす」こととは、まったく別の能力が必要です。しかし、「マネジャーとは誰でもなれる職位ではない」ということかというと、そんなことはありません。ただ、そのやり方を知らないだけなのです。

今回は、リーダーとして欠かせない、チームとして人を動かす方法をお伝えします。

(画像=PIXTA)

部下を動かす「2:6:2の法則」とは?

部下を育てる上で着目してほしいのは「2:6:2の法則」です。 2:6:2の法則とは「働きアリの法則」とも呼ばれ、組織内において「上から2割の者が全体の数字の大部分を担っており、6割は普通、下の2割はあまり働かない」と言われます。

組織を率いる方であれば、同法則の数値は「おおむね正しい」という実感を持っているでしょう。同法則のいう「構成するメンバーが入れ替わっても、自然と2:6:2の割合は維持される」という意見にも、うなずける部分があるはずです。

それはおそらく、能力の違うもの同士が集まって集団を形成する以上、どうしても負荷がかかるところとかからないところが出てくるということなのでしょう。

念のためですが、2:6:2というのは、人間の優秀さをレベル分けしたものではありません。必ずしも「この人はどこへいっても必ず上位2割に入る」とか「この人はダメだから、いつも下位2割にいる」とはなりません。もちろんそういう人も中にはいる場合もあるかもしれませんが、たいていは本人の「いる場所(配属部署など)」と「適性(能力)」のマッチングの問題です。

たとえば、営業が得意な人に事務職をやってもらっても、本領を発揮することはできないでしょう。仮に適正な場所にいた場合でも、そこですでに活躍しているエースがいると、その人の陰に隠れてなかなか芽が出ないということもあります。本当はすごい才能を持っていたとしても、時代に合っていなければ活躍する機会もありません。部署異動などをきっかけに、急に活躍し出す人がいるのは、それまでの阻害要因が取り除かれた結果であることが多いのです。

下位2割は「お荷物」なのか?

次に「2:6:2の法則」の利用方法についてですが、まずは自分の頭の中で部下一人ひとりを2:6:2の区分に分け、分けたらそれを基準に対応していきましょう。参考までに、筆者の行動基準と対応法を記しておきます。

(1)上位2割は「放置」
ここに入る部下とは、自分で考え、行動し、改善ができる人です。組織の稼ぎ頭である彼らには、余計な指示をするよりも、なるべく阻害要因を排除するように努めることです。無論、自らも部下の邪魔をしないようにしなければなりませんが、理念やミッションなどの共有は忘れないように行います。

(2)中位6割は「教育」
一番数が多く、組織の中核を担う層です。ここを教育することによって、組織力の底上げを行うことができます。組織をまとめるのはなかなか難しいものですが、全体の6割のこの層を対象にレベルを絞り込めば、かなり現実に即したプログラムをつくることが可能となります。

(3)下位2割は「認知」
「下位2割」というと、「お荷物」とか「不要のもの」という響きがありますが、会社の成長になくてはならない人材であることに変わりはありません。組織の「余裕」や「予備軍」というふうに捉えてもいいでしょう。ここにいる人たちは、自ら動くことができないため、その都度、指示を出したり行動をチェックしたりする必要があります。

リーダーが実践すべき部下を動かす「2:6:2の法則」

2:6:2に分ける際のコツとは、「あくまでも現状に即す」ということです。それから、もうひとつお伝えしておきたいのは、リーダーとして「間違いを恐れない」ということです。

ものごとの判断をするのが人間である以上、間違えることはあります。たとえば「この部下は自分でできる」と思って任せてみたら大失敗したり、自分では一生懸命教育しているつもりでも、実際は部下の成長を阻害していたりということもあるでしょう。その場合は、間違っていたことを認めて、以後の対応を修正しましょう。

自分の判断が正しいかどうかを何で確認すればいいのかというと、それは部下が出してくる「アウトプット」によってです。つまり「結果」を見ることです。結果がよければその対応法を維持し、ダメだったらプロセスを見直して修正しましょう。

組織におけるリーダーの役割とは、それぞれの持てる力を結集し、総合得点を伸ばすことです。そのためには、部下の性質や能力を見極めながら、それにふさわしい仕事を与えていくことが大切なのです。

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