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●経済的な厳しさ:欧米(特に米国)では、状況が改善する前に経済が再び悪化する可能性が高い
●ワクチンの開発状況:ワクチン開発の進展は理想的とは言えないまでも、数カ月前の状況と比べれば非常に良好
●繰り越し需要:消費者は消費を強く抑制しており、ワクチンが広範に供給されることにより需要の急速な回復が予想される
欧米では、ウイルスの感染再拡大の経済への悪影響が確認され始める
複数の新型ウイルスのワクチンが開発され、英国ではワクチンが承認。2021年中には、生活や経済は正常化するだろう
私はフロリダに住んだことはありませんが、子供の頃、よくフロリダに滞在し、「過酷な季節」と呼ばれる天候を経験しました。これは、夏の終わりの非常に激しい天候のことで、蒸し暑い朝のあと、午後には海から激しい雷雨が吹き込みます。ただし、雨は暑さを和らげるわけではなく、夕方には暑さがぶり返し、翌朝は再び高温多湿となります。また、ひと夏を通してハリケーンや熱帯低気圧が発生します。通常、暑さが和らぐことはなく激しい天候が続き、それは1カ月以上続くこともあります。
さて、今年は経済が非常に厳しい1年でしたが、世界では、しばらくの間、状況の改善の見込みが低い「過酷な季節」にあると考えられる地域があります。そして、その背景は新型コロナウイルスであり、悪天候よりもはるかに厄介です。医療専門家は感染第2波について警告してきましたが、状況は多くの人が予想していた以上に悪化しています。
現在、最も厳しい状況下にあるのは米国で、新型ウイルスの新規感染者は100万人あたり500人超(日次)と、過去最多を更新しています(はるかに低い水準ではあるものの、カナダでも新規感染者は増加傾向にあります) 1 。前週、米国疾病予防管理センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長は、米国が2020年12月、2021年1月、2月に「最も困難な時期」を経験すると警告しました。同所長は、推奨される予防策を実施しない限り、2021年2月までに新型コロナウイルスの死者数が45万人近くに達する可能性があり、「米国の公衆衛生史上、最も困難な時期」になると述べました 2 。
一方で、大陸欧州や英国などの一部の国では、感染者数が大幅に増加した後、増加傾向は落ち着きつつあります。英国のボリス・ジョンソン首相は、ワクチンが広く供給されるまで、ウイルスを封じ込めるための行動制限付きの「厳しい冬を乗り越えなければならない」と警告しました 3 。
すでに、新型ウイルスの感染再拡大が経済に及ぼす影響が確認され始めています。ユーロ圏では、IHSマークイットが発表した11月の総合購買担当者景気指数(PMI)が45.3と、10月の50.0から大幅に低下しました 4 。IHSマークイットのクリス・ウィリアムソン氏は「感染第2波の影響から新型コロナウイルス対策が強化され、企業活動は新たな規制で再度打撃を受けた結果、ユーロ圏経済は11月に悪化した」と述べており、私も、同氏と同じく、10‐12月期のユーロ圏経済は「さらに大きく悪化する可能性が高い」と考えます。
最新の地区連銀経済報告(ベージュブック)では、12の連邦準備銀行のうち4地区が、前回の調査時点から経済は「ほぼゼロ成長、あるいは成長していない」と報告しました。フィラデルフィアと中西部州の三つの地区は、「新型ウイルスの新規感染者数急増のため、11月初旬に経済活動が鈍化し始めた」と報告しました 5 。米国の11月の雇用統計も経済成長の鈍化を示しており、非農業部門雇用者数が前月比24.5万人増と、前月の61万人増から大きく鈍化し、市場予想の45-60万人増加を大きく下回りました 6 。感染率の上昇が11月後半にさらに深刻化している(これらは11月に雇用統計には反映されていません)ことから、12月の雇用統計はさらに悪化すると予想しています。
カナダも景気減速の兆しを見せています。雇用者数の増加は市場予想を上回ってはいますが、10月より増加が鈍化しており、雇用者数が増加に転じてからの過去6カ月で最低の水準となっています 7 。
欧米、特に米国では、状況が改善する前に、経済が再び悪化する可能性が高いと考えています。医療専門家における新型コロナウイルスの治療に関する知見が増えたことで、死亡率は低下している一方で、入院患者数は増加しています。これは、ロックダウンの反対を正式に表明していた政府当局者がその再実施を余儀なくされることを意味しており、実際、過去数日間に多くの大都市圏がロックダウンを発表しています。例えば、前週末、米国のGDPの多くを占めるサンフランシスコとロサンゼルスで新たな外出制限措置が発表されました。私は、行動制限がない地域の住人にも影響が及び、移動量が低下することで、経済活動全体にも悪影響をもたらすのではないかと懸念しています。米国がこの「過酷な季節」をさらに進んでいくことで、今後は雇用回復の鈍化が見られるでしょう。
しかし、いつの日かワクチンが広く供給され、物事が正常に戻り始めることは周知の事実となっています。そして、現在、新型コロナウイルスに有効なワクチンが複数開発されていることから、その日は2021年中に訪れると予想されます。英国では、ワクチンの一つを、緊急審査プロセスを通じてすでに承認しており、欧州連合(EU)は、12月29日までにワクチンの一時的な使用許可について決定すると発表しました。
ワクチン開発の進展は理想的とまでは言えません(ワクチンの供給網、ワクチンの副作用への懸念、生産の問題を背景としたワクチン出荷目標の削減 8 など、問題を抱えています)。ただし、医療専門家が有効なワクチンの開発について懐疑的だったほんの数カ月前と比べれば、非常に良好と言えるでしょう。
世界の一部地域では、今後数カ月は「過酷な季節」となる可能性が高く、私たちはそれを見越しておく必要があります。そして、私たちは、物事が少しずつ良くなっていくことをよく知っています。企業はワクチンの広範な供給に先立って支出を増やすでしょうし、特に、近い将来に適切な財政支援が提供される場合は、消費者はより楽観的になるでしょう。
そして、「過酷な季節」の期間の長さは繰り越し需要(ペントアップ・デマンド)の蓄積を意味し、ワクチンが広範に供給されるにつれて、総需要の大きな回復が見込まれると考えます。この春、ロックダウンが解除されたときには、多くの国の経済では急速な需要の回復が見られました。ワクチンの供給時には、さらに力強い景気回復をもたらすものと考えられます。
一方、中国や韓国など、ここ数カ月新型コロナウイルス対策に成功している国々では、11月のPMIが10月の水準より上昇しており、景気回復は引き続き堅調と言えます。私は、それらの国が2021年の世界の景気回復の先駆けとなると予想します。
まとめると、今後の景気回復は、世界金融危機後に見られたものとは大きく異なると考えています。世界金融危機からの回復が弱々しかったのに対して、今回のコロナ危機からの回復は、はるかに強固なものとなるでしょう。そして、私たちが現在、「過酷な季節」を迎えていることが、その後の回復を強固にすることを認識しておきましょう。
1.出所:ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)新型コロナウイルスデータ。
2.出所:CNN.com、2020年12月3日。
3.出所:ロイター、“Britain faces hard winter with COVID-19 – PM Johnson”、2020年11月26日。
4.出所:IHSマークイット、2020年12月3日ニュースリリース。
5.出所:地区連銀経済報告、2020年11月。
6.出所:米国労働省労働統計局。
7.出所:カナダ統計局。
8.出所:ウォール・ストリート・ジャーナル、“Supply-Chain Obstacles Led to Last Month’s Cut to Pfizer’s Covid-19 Vaccine-Rollout Target”、2020年12月3日。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2020-178