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10月に注目すべき5つのこと

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米国の追加景気対策の協議、米大統領選挙世論調査、ブレグジット交渉など

〔要旨〕

●①米国の追加景気対策の協議、②米国大統領選挙の世論調査、③英国の欧州連合(EU)離脱―という政治面での問題と、④世界の感染者数、⑤人の行動・移動量データの傾向―という新型ウイルスに関連する問題に注目

1. 米国の追加景気対策の協議
米大統領選前の法案可決の可能性が残る

2. 新型ウイルスの感染状況
欧米では感染率が再び上昇

3.人の行動・移動量
経済の需要の近似と見なすことができる人の行動・移動量

4. 米国大統領選挙の世論調査
バイデン氏の支持率が上昇する中、株式市場は引き続き上昇

5. ブレグジット(英国のEUからの離脱)に関する交渉
欧州連合(EU)との貿易協定締結の期限が迫る英国

今月は、世界の金融市場に影響を与える可能性のある重要な問題として、下記の5つに注目しています。

1. 米国の追加景気対策の協議

経済界やFRBからの警告にもかかわらず、遅々として進まない追加景気対策協議

時計の針はいつも動いています。倒産が増加し、雇用の伸びの鈍化が進み、企業は一時解雇を発表していますが、これらのさまざまな警告が発せられているにもかかわらず、米国政府は追加の刺激策を承認していません。米大手企業の最高経営責任者が会員となっているビジネス・ラウンドテーブルは前週、「全米は悪循環に陥っており」「取り返しのつかない損害」に直面していると警告しました 1 。そして、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長も、財政政策を通じた景気支援策の欠如によって引き起こされる可能性のある長期的な損害について、「家計と企業の破産が増加し、経済の生産能力が損なわれ、賃金の伸びが抑制される 2 。」と警告しました。また、「時間の経過とともに改善のペースが緩慢になると、経済の弱さがさらなる弱さを産み、典型的な景気後退を引き起こす可能性がある。」との懸念を示しています。米国景気は改善ペースの鈍化が確認されており、このパウエル議長の懸念は正当なものです。パウエル議長は、ここ数カ月に実施された大規模な金融および財政の景気刺激策により、一時的ではあったものの、典型的で長期的な不況が回避されたと指摘しました。また、「支援があまりに少ないと、景気回復は弱くなり、家計や企業を不必要に苦しめることになる。」として、規模の大きい景気対策の議会通過の必要性を強調しました。私はパウエル議長に同意しますが、さらに考えを進めて、政府は新型ウイルスの大流行(パンデミック)における財政政策を、債券の定期的な利払いのように考えてみてはどうか、と思っています。深刻な逆風に直面しても経済が支えられ続けるためには、財政政策が適切かつ定期的に行われる必要があります。多くの欧州各国のように社会的セーフティーネットがない米国では、特に必要性が高いと考えます。

トランプ大統領の動向に協議の進展は左右されているものの、大統領選前の法案可決の可能性は十分にあるだろう

ここまで、ペロシ下院議長とムニューシン財務長官が会談し、米国政府は追加の景気対策に向けての一歩を踏み出しています。2週間前、私の意見では、米下院はHEROES法を小規模にした法案を可決し、以下の2つの目的を果たしました。その目的は、①2020年5月に可決した3兆米ドル超を大きく下回る規模の対策を支持する上院共和党員に、妥協案を示した、②再選を目指して選挙運動をしている民主党議員を援護するため、民主党議員が景気対策の面で怠慢だと非難されることを回避させた―というものです。しかし10月6日、トランプ大統領は突然、追加の新型コロナウイルス対策を巡る協議を停止したため、株価は急落しました。ただし、大統領の協議中止の声明を聞いて、私は驚きませんでした。私は、株式市場の動向をトランプ大統領の「北極星」(目指すべきゴール)とみています。つまり、株式市場が持続的に否定的な反応を示せば、トランプ大統領はすぐに決定を覆すと考えました。トランプ大統領は自身の政治生命のために戦っており、大規模な追加の景気対策が大統領の再選を後押ししうることを認識しています。そして、続く9日に、トランプ政権が1.8兆米ドルに増額された経済対策を提案したことにも、私は驚きませんでした。このことから、大統領選挙前に適切な規模の景気対策法案が可決される可能性はまだ十分にあると考えています。

2. 新型ウイルスの感染状況

スペインは新型ウイルスの感染再拡大により大きな打撃を受ける

前週の講演で、パウエル議長は新型ウイルスの感染者数の大幅な増加が経済にとって大きなリスクであるとも述べました。しかし、これは米国経済だけのリスクではありません。IHS Markitのチーフ・ビジネスエコノミストのChris Williamsonは、「スペインでは、新型ウイルスの感染者数の増加により日常生活がさらに混乱し、特に大きな打撃を受けている。新型ウイルス感染の第1波で最も深刻な状況だった3月から5月を除き、同国の9月のサービス業の縮小は2012年11月以降最大となった 3 。」と述べており、欧州の一部の国では新型ウイルス感染の第2波によって悪影響を受けているとしています。同氏は、「ウイルス感染の第2波を制御できるかどうかに大きく左右されるだろう。」と率直に説明しました。

欧米では感染率が上昇しており、今度の制御に成功するかどうかが非常に重要

これまで欧州の一部の国では、感染の第2波を抑えこむことに苦労しています。そして、米国の多くの州でも感染率が上昇しています。欧米の多くの地域では、気温の低下に伴う感染状況の悪化の可能性が懸念されていますが、医療の専門家がウイルスの治療について得た知識により、入院状況や死亡状況の悪化は抑制されると考えます。今後数週間は、欧米各国がウイルスの拡散を制御できるかを確認する上で非常に重要になるでしょう。

3. 人の行動・移動量

経済の需要の近似と見なすことができるモビリティー・データ

以前にも述べましたが、ロックダウン(都市封鎖)が実施されていない時期においては、経済活動の先行指標としてモビリティ・データ(人の行動・移動量に関するデータ)に注目する必要があります。新型ウイルスへの直接的な対策(休業要請、学校の閉鎖、渡航禁止など)の厳格さが緩い場合には、外出に際する安全性について各個人が判断することになります。また、いくつかの国で見られたように、厳格さの水準が上がると、モビリティ・データも変化します。言い換えれば、モビリティー・データは経済の需要の近似と考えられます。

モビリティー・データは感染率と密接に関連

米国と英国のモビリティ・データは平常時を大幅に下回っている一方で、ユーロ圏とアジアの一部ではそれほど落ち込みませんでした。しかし、人の行動・移動量が感染率と密接に関連していることは周知の事実です。感染者が増加し、人々が在宅を選ぶか、政府がロックダウンの再実施を余儀なくされると、人の行動・移動量は低下します。私たちは、モビリティ・データに細心の注意を払っていきます。

4. 米国大統領選挙の世論調査

バイデン氏の支持率が上昇する中、株式市場は引き続き上昇

米国大統領選挙の世論調査では、支持率の差が拡大しているバイデン氏の決定的な勝利(そして、上院でも民主党が過半数を上回る議席を獲得する可能性)を示唆していることから、最近の株式市場はひとまず安堵(あんど)しています 4 。ここでの大事なポイントは「バイデン氏の勝利」ではなく、「決定的な勝利」です。私が、2020年10月の株式市場がバイデン・ハリス陣営の勝利についてポジティブな反応を示すと1年前にお伝えしていたならば、正気かどうか疑われたかもしれません。しかし、今年は何が起こるか分からない1年です。現在、市場関係者にとって民主党の勝利よりもはるかに大きな懸念は、選挙結果の異議申し立てです。

民主党政権が勝利すれば2021年に大規模な景気対策が実施される可能性が高い

さらに、市場が民主党の「青い波(ブルーウェーブ)」の考えに満足している重要な理由の1つは、2021年には大規模な景気刺激策が実施される可能性が非常に高く、これが、法人税の引き上げに関する懸念を上回っていることです。ただし、市場関係者は、大規模な景気対策を2021年まで待てるのかもしれませんが、米国経済自体がそれほど長く待てるかはわかりません。

世論調査の動向を注視

今後の数週間で多くのことが変わる可能性があり、私たちは世論調査を注視したいと思います。また、勝利が決定的であったとしても、異議申し立ての可能性を無視することはできませんが、現時点で市場にその可能性は織り込まれていないと考えています。

5. ブレグジット(英国のEUからの離脱)に関する交渉

欧州連合(EU)との貿易協定締結の期限が迫る英国

米国だけが政治的な不確実性を抱えているわけではありません。英国も、混乱の中にあります。英国の欧州連合(EU)との貿易協定締結までの重要な期限(10月15日)が、差し迫っています。英国政府は直近、10月15日までに合意ができなかった場合、交渉から離脱することを確認しています 5 。これにより、世界貿易機関(WTO)の条件に基づいての、EUとの貿易関係が始まることが想定されます。

英ポンド安と英国株式の軟調さの継続は、英国経済が弱体化している現れ

同僚のポール・ジャクソン(グローバル・ヘッド アセット・アロケーション・ リサーチ、ロンドン)は「英国経済への「ノーディール」の影響を知ることは難しいが、自由な貿易から制限された貿易への移行が良い結果を生むとは考えにくい。」と述べています。同氏は、「経済的な影響の不確実性について、金融市場は長ったらしく待たされている。」と述べ、英ポンド安が続き、それにも関わらず英国株式が軟調に推移していることを指摘しています。同氏が説明しているように、このような市場の動きは「株式市場の参加者が、英国経済が離脱プロセスで根本的に弱体化していると考えている。」ことを示唆しています。

ブレグジット交渉の行方を注視

私たちは、ブレグジット交渉の行方を注視し、英国がEUとの今後の貿易関係に関して肯定的な結果を得られるかどうかを、そして英国株式市場の反応を確認したいと思います。ただし、あまり楽観的な見通しを持つべきではないでしょう。

 

1.出所:The Business Roundtable、“Business Roundtable Statement on COVID-19 Relief Negotiations”、2020年10月6日。
2.出所:米連邦準備理事会パウエル議長のスピーチ、“Recent Economic Developments and the Challenges Ahead” 、2020年10月6日。
3.出所:IHS Markit、ニュースリリース、“IHS Markit Eurozone Composite PMI® – final data” 、2020年10月5日。
4.出所:Yahoo Finance、“Stocks continue to rise as expectations grow of Joe Biden victory”、2020年10月9日。
5.出所:MarketWatch、“U.K. will quit Brexit talks if no deal agreed upon by Oct. 15, Boris Johnson says”、2020年9月6日。

 

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

 

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